ユニクロがUGCに手を出して著作権問題で炎上した件

山本一郎です。旅行先で買ったユニクロのトランクスを半年ほど愛用していたのですが、またぐらのところがあっさり布の擦り切れで穴が開いて、下着の役割を為さなくなってしまいました。ユニクロといえば安かろう悪かろうということで諦めればそれで良いのでしょうけれども、どうせ同じ生地を使うからには耐久性も考えて商品提供をしてくれればもう少し企業として社会に貢献できるという評価が為されると思うのです。私の股下のところに穴が開いてスースーしているというのは、明らかに消費財としての価値を毀損しています。それはユニクロの本来の企業姿勢として是とされるべきものなのでしょうか。ユニクロが、社として私ごときの袋は晒されるべきという決定を下しているとしたら、それは大変に私を馬鹿にした話です。確かに私は腰周りが意外と太く、XLでないと入らない体形であるのは事実ですし、最近よく汗をかくので股下が蒸れて下着の上から掻くことも多いわけですが、ユニクロのトランクスを履くたびにいつ再びズボンの中で袋が丸出しになるかと思うと安心して日々を暮らすことが出来ません。これは安全保障上の問題です。しかし、一度3枚千円という値段をユニクロから提示された後で別の衣料品店に赴いて1枚五百円のトランクスを手にするのは実利を旨とする個人投資家としては許容できないのも事実であります。一度安い値段に飼い慣らされるとなかなか脱出できない仕組みを構築するなんて汚いユニクロ汚い。残念なことこの上ないというのが私の個人的な見解です。ユニクロは一刻も早く耐久性に優れたトランクスを同一価格で販売するべきであり、せめて一年、できれば20年ぐらい着用できる商品を開発して販売することが日本社会から求められているのは間違いありません。そういうなかなかヘタらない下着が出回ると下着全体の需要が減ってしまう恐れはありますが、それは私の知ったことではありません。ここはやはりパナソニックを見習って、馬鹿みたいに頑丈な下着というのを開発していただき、フジテレビ系列が「絶対に破れないトランクス」対「死んでも下着を突き破りたい玉袋」という『ほこ×たて』を企画する方向で消費税増税の反動で苦しむ4-6月経済成長の起爆剤としていただきたいと願うわけです。そういう前向きで力強いメッセージをユニクロが発することが出来て初めて、地球市民の一員として迎え入れられる世界企業に脱皮できるのだと思いますし、ユニクロはやればできる子だと思ってもおります。どうか利用者の下着破れにも細心の注意を払っていただきたく、この場を借りて強く請願する次第であります。

さて、ユニクロがスマホを利用した新しい製品企画を発表しておりました。いわゆるイラスト投稿サイト等に見られるようなUGC文化を利用して今風のソーシャルなノリをそのまま商品展開に結びつけようという意欲的な試みのようでした。

Tシャツ、スマホで作成 ユニクロがアプリ(日本経済新聞 2014/5/19)

自分だけの「UT」が作れる ユニクロ、オリジナルTシャツ作成アプリ「UTme!」 1枚1990円(ITmedia 2014/5/19)

ユニクロは19日、スマートフォン(スマホ)でオリジナルのTシャツを作れるサービスを始めた。専用アプリ(応用ソフト)で絵を描いたり文字を入力したりしてデザインを決める。ネットで注文すると、そのデザインのTシャツが3日程度で届く。料金は1枚で税別1990円。別に送料が同450円かかる。記念品やチームのユニホームなどの需要を見込む。

出典:日本経済新聞

デザインは同サイト上のギャラリーやTwitterやFacebookで共有可能。過去に作成したデザインはアプリ内から再注文もできる。

出典:ITmedia

この企画はSNSなどを通じて当初は多数のネット民からも好感を持って注目されていたようですが、ある時点を境にしてその後の展開はユニクロの思惑とは真っ向から反対のネガティブな大炎上という形で情報が拡散されていくことになります。いやはや、やっちまいましたね。

ユニクロでTシャツ作成すると全著作権を譲渡 UTme!利用規約を警告する声(Huffington Post Japan 2014/5/19)

ユニクロの T シャツアプリに落とし穴?--ユーザーに著作権すべての無償譲渡を要求(インターネットコム 2014/5/20)

ユニクロ『UTme!』の権利帰属に関する利用規約が凄い(Togetterまとめ)

ユニクロ「UTme!」利用規約の「著作物に関する全ての権利を無償で譲渡」や「著作者人格権を行使しないことに同意」はなぜダメなのか?(見て歩く者 by 鷹野凌 2014/5/20)

利用規約には全著作権をユニクロに譲渡することのほか、オリジナルの著作者が持つ公表権などの「著作者人格権」も行使できないと定められている

出典:Huffington Post Japan

インターネット上において著作権は常にセンシティブな話題だ。2008年、当時国内最大手の SNS として隆盛していた mixi が利用規約で同社に対し「著作者人格権を行使しないこと」などを盛り込んだ際も、激しい抗議が持ち上がり、結局文言の修正に追い込まれた。今後、ユニクロが同様の対応をとるのか、とるとすればどのくらい素早く行うのかが注目される。http

出典://internetcom.jp/busnews/20140520/3.html:インターネットコム

わかりやすく言っちゃうと、ユニクロに絵を送った瞬間に、その絵の著作権はユニクロの物になってしまい、それがどう使われても送った本人は、一切文句は言えないという事だな。

出典:ねぐら☆なお / Negura Nao

ユニクロが当該サービスに関して公開している利用規約の文言を確認してみると、確かに「第9条(権利帰属)」の部分はUGC等の精神からは全くかけ離れたようなガチガチの条件が提示されておりました。

ユーザーは、投稿データについて、その著作物に関する全ての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を、投稿その他送信時に、当社に対し、無償で譲渡します。(中略)ユーザーは、当社及び当社から権利を承継しまたは許諾された者に対して著作者人格権を行使しないことに同意するものとします。(中略)ユーザーは、当社が実施する各種キャンペーン等に投稿データが使用されることに同意するものとします。(中略)【2014年5月19日制定】

出典:ユニクロ UTme!利用規約

なぜこれほどまでに投稿者の権利を奪うような形にしたのかは謎ですが、Togetterまとめに書き込まれたコメントをいくつか拾うと、なんとなくユニクロが地雷を踏んだ経緯が想像できなくもありません。

ユニクロはこれとは別に自作Tシャツ作成サービスをやっていて http://www.uniqlo.com/customize/top.html こちらの著作権の取り扱いは穏当 http://www.uniqlo.com/customize/rule.html なので、第三者に販売するか否かで取り扱いを分けたのではないか、という気がします。それにしても ちょっと厳しすぎる気はするけど

出典:Togetterまとめ

この場合、消費者が利用した有償サービスが、何故か結果的に公募デザインと同じ扱いになってるのが問題ですよね。金払った上で権利まで持っていかれるという謎のユニクロ丸得システム。 RT @katot1970:デザインコンペで、一般にデザインを公募して、採用されたものはユニクロで販売という事なら、こういう規約はありですよ。その場合、デザインした人は、「無償譲渡」じゃなくて、「有償譲与」でしょ。コンペの優勝賞金という形で。それなら特に問題は無い。

出典:Togetterまとめ

実際、ユニクロは過去にデザイン公募企画を実施しており、その際には著作権の無償譲渡が条件となっていますから、今回もその条件をまんま流用した可能性はありそうです。

UT GRAND PRIX 2013(登竜門)

ユニクロは、2005年から年齢、性別、国籍等あらゆる制限を設けないTシャツデザインのコンペティション「UT GRAND PRIX」を実施しています。(中略)受賞作品に関しては、著作権ほか諸権利は主催者でありますユニクロに無償で譲渡、帰属するものとします。

出典:登竜門

当然ながらユニクロ側に一切の邪念はないと信じたいところですが、どこかで「消費者が利用した有償サービス」を利用して「何故か結果的に公募デザイン」として手軽に使ってしまおうという目論見があったのだとしたら、かなりブラックな話になってしまいます。

で、これだけネットで大きく炎上してしまうと、そういうネタに目ざといねとらぼが黙っているわけもなく案の定正攻法で突っ込んでいました。さすがは腐っても商業メディアと誉めておきたいところです。

著作権を無償で譲渡?:「いえ、著作権はユーザーに帰属します」とユニクロ Tシャツ作成サービス「UTme!」の利用規約が話題、問題を認めて修正へ(ねとらぼ 2014/5/20)

ユニクロは利用規約がユーザーに誤解を与えたとして社内で検討した結果、現状の利用規約を変更。サービス開始からのユーザーが投稿したデザインの著作権に関わるすべては、あくまでもユーザーに帰属するものと改めることを決めた。

出典:ねとらぼ

ユニクロとしてはあれだけの文言を堂々と明記しておきながら「利用規約がユーザーに誤解を与えた」という弁明は詭弁も甚だしいわけですが、まあ、直ぐに非を認めたのは良しとすべきでしょう。

その後、問題のあった規約条項は以下のように変更されております。

投稿データの著作権はユーザーに帰属します。(中略)当社は、投稿データについて、本サービスの円滑な提供、当社システムの構築・改良・メンテナンス等に必要な範囲内で、変更その他の改変を行うことができるものとします。(中略)【2014年5月20日改定】

出典:ユニクロ UTme!利用規約

あっさりしたものですがとても分かりやすく、また「著作者人格権」云々という表現もなくなりました。

過去に似たような形で炎上している案件なんかいくつもあるわけですから、はじめからもうちょい慎重にすすめておくべきだったのではないかな、と思います。デザイン発注して著作権買い取りというビジネス慣行を、そのままユーザーに対して当てはめちゃダメですよ。

出典:見て歩く者 by 鷹野凌

まさに上記でも指摘されている通りです。UGCに手を出すのであれば、はじめからもっと真摯にエンドユーザーと向き合った形で仕事を進めていれば何も問題なかった話ですが、過去にあった他社のソーシャル炎上案件など一切気にせずにザックリと仕事をやってみましたというお気楽さというか、唯我独尊な何かがあったのかもしれませんね。

ちなみに、問題となった規約ですが、この手の書類の作法で致し方無いとはいえ以下のような文言も入っていたりします。そこにツッコミを入れるのはかなりの反則かもしれませんが、ある日突然また諸々の条件が変わることはあり得るということで。

当社は、当社の判断により、本規約をいつでも任意の理由で変更することができるものとします。変更後の利用規約は、当社が別途定める場合を除き、利用規約上に表示した時点から効力が生じるものとし、本規約の変更の効力が生じた後にユーザーが本サービスを利用したことをもって、変更後の利用規約に同意したものとみなされます。

出典:ユニクロ UTme!利用規約

任意の理由でいつでも変更できるのであれば、やはり私としては破れない下着を早く提供していただきたく、夏目前となって下着需要が拡大するところでCGMどころではない根本的な要望に対し一刻も早く全社的なアプローチで解決して欲しいと強く願っております。

今後ともよろしくお願い申し上げます。