ヤフーがネットスーパー事業の実証実験を開始した件

山本一郎です。私の幸せも2時間以内に配送されるのでしょうか。

我らがヤフー、いわゆる「ネットスーパー」的な事業をテストケースとして開始したようです。

Yahoo!ショッピング、2時間以内に配送する実証実験「すぐつく」を開始(ヤフー プレスリリース 2014/5/8)

Yahoo! JAPANを運営するヤフー株式会社(以下、Yahoo! JAPAN)は本日より、「Yahoo!ショッピング」において、注文した商品を指定配達エリア内なら2時間を目安に速配する「すぐつく」の実証実験を開始しました。本取り組みは、まずは東京都江東区豊洲地区限定で約半年間のテストを実施し、今後ニーズに合わせて本格的な展開を検討していきます。

出典:ヤフー

あっそう。頑張れよ。

興味深いのは、物流にまつわる諸問題を「巨大な物流拠点を構えてそこからの配達スピードを劇的に上げていくのではなく、近隣にある実店舗から利用者に直接商品をお届けすることで」解決しようという点でしょうか。はっきりいってこの手法で戸別配送を手がけたチェーン店は死屍累々で、某カクヤスとか某ピザチェーンとか物流スキーからすると今後どうするつもりなのだろうと興味津々なわけです。こうすることで「地域の消費活性化にも繋がる」としていますが、はたして目論み通りに展開できるのかどうか注目したいところです。

各メディアもヤフーからのプレスリリースを受けて報道していますが、ほとんどはプレスリリースの受け売りに終わっている中、下記の記事は実験地域に豊洲が選ばれた理由の論考や他社サービスとの比較が挙げられていて面白いです。

注文2時間以内に“すぐつく”、ヤフー!ショッピングが実証実験開始(週アスPLUS 2014/5/8)

豊洲地区は東京五輪に向けてに大規模開発が予定されており、続々と高層マンションが建設されている地区のひとつ。ちなみにネットスーパーなどの宅配サービスとして、イオンは配送最短3時間で配送料105円(5000円以上で送料無料)のサービスを提供中。お酒の場合はカクヤスが配送1時間、送料無料のスピードサービスを実施している。

出典:週アスPLUS

ベンチマークがイオンやカクヤスということは、ヤフーは試験実証を通じて修羅の道を歩む覚悟を固めたということでしょうか。

他にも即時配達を売りにしたネットスーパー的な事業はこのところ増加傾向にありますが、ヤフーの発表を見て思いだしたのは、弁当をスマホアプリで受注して即時配達するというサービスでした。

目指すは弁当版Uber、スマホで注文してから20分で届く「bento.jp」が都内でスタート(TechCrunch Japan 2014/4/10)

弁当版Uber「bento.jp」がいきなり配送エリア縮小、「予想以上の反響」で多難の船出(TechCrunch Japan 2014/4/14)

初回無料キャンペーンを掲げていざサービスを開始してみたら色々と準備不足で問題多発のためいきなり規模縮小。ネットサービスのβ版とは勝手が違ったという言い訳もありそうですが、やはりリアルのサービスは規模がどれだけ小さくてもロジスティクスをしっかりと詰めていないと破綻するという好例でもあるかと。

ぶっちゃけ、ドミナント単位で集配効率を幾ら向上させても、それ単体ではあまり利益率は確保できないので、最終的に別の収益構造と組み合わせる形でないと逆スケールしてしまうというブービートラップに頭から落ちるのが過去から現在まで繰り返されてきたのはこの方面で多少でも触っている人からすれば良くご理解いただけるところかとは思います。

ネットスーパーの事例では既に楽天も立ち上げで同じような失敗をしていまして、その辺りの話題は以前にニフティの拙ブログでも取り上げたことがあります。

楽天マートが凄いことになっている件で

さすがに今では事態も改善され普通に運営していることと思いますが、ヤフーが今回取扱い商品をかなり限定して対象地域も狭い範囲のみで実証実験という形にして開始したのは、こうした先人達の轍を踏みたくないという思いがあるのかもしれません。

で、ヤフーのサービス概要を見て一番残念に感じたのは、今のところ決済方法が「代金引換」のみに限定されていることです。ここが最初から各種オプションを用意してキャッシュレス決済を実現できていれば、また印象はずいぶん違ったのではないかと思いました。

楽天スーパーポイントのみでお買い物可能とかいうサービスをヤフーが始めたらロケンローな感じがするんですけど。無理ですかそうですか。

なお、この手の即配ができるサービスを構成するアルゴリズムというのは物凄くデリケートで、本当にこの辺のエリア拡大を順調に行ないつつ利益を出していくぞとかいう企業が出てきたとしたら、そいつはマジでブラック企業かノーベル賞ものです。必ずボトルネックになるのは配送のためのノード管理と人手ですので、ぶっちゃけいまのICT方面のテクノロジーの延長線上にはないんですよ。いままでなぜそれが出てこなかったかというと、単純に採算に合わないからです。

ところが、ビッグデータだ売上予測だって話になると、なんかそういう無理もできちゃう気がしてくるから不思議なんですよね。

ひとつのお買い物で、時給幾らの人が何分拘束されるのかを、そのお買い物のためのロジスティクスとそれを支えるバックボーンに加えて試算すれば、なぜお弁当は駄目であるかぐらいは分かる気がするんですが。

なんかちょっと喋りすぎている気もするのでこの辺で。