日本はかつてロボット大国であったそうですが、それはもう昔話で終わってしまうのでしょうか

山本一郎です。ファナックやコマツには銘柄として随分お世話になりましたので、足を向けて寝られないわけです。山梨にあるファナックと溜池山王にあるコマツ両方に足を向けないで寝ようとすると限られた寝方しかできない自分の現状にファックであります。

ところで、昨年末、Googleがロボット開発事業へ本格的に参入することが明らかとなり、IT系ニュースメディア等を中心にかなり話題となりました。拙ブログでもそのことを取り上げた記事を書いております。

GoogleはAndroidの夢だけで足りず本当にロボットを作るようです

この時点で既に判明していた注目すべきポイントとしては、Googleがなぜロボット事業に手を出すのかその具体的な意図が全く明らかにされていないということ、そして日本の優秀なロボット開発企業もGoogleに買収済みであったことなどが挙げられます。

で、そうした注目点について、昨年末からやや時間は経ってしまいましたが、一般紙の朝日新聞が分かりやすい形にまとめた特集記事を掲載しました。ネット向けには登録会員でないと全文を読めない形式となっており残念ですが、無料登録すれば読めるようになはっています。なお、ネット公開は3部構成となっていますが、1と2を読めば今何が問題視されているのかその趣旨を把握できると思います。

(ザ・テクノロジー:1)ロボットバブルとグーグル(朝日新聞 2014/4/29)

(ザ・テクノロジー:2)「日本の快挙」がグーグルに(朝日新聞 2014/4/30)

(ザ・テクノロジー:3)ヒト型ロボットの源流は日本に(朝日新聞 2014/4/30)

「グーグルはロボット関連企業をどんどんのみ込んでいる。いったん吸収されると、そこから情報は一切漏れてこない。まるでブラックホールのようだ」

出典:朝日新聞

8社のなかで、特に注目されたのが、東京大発ベンチャーの「シャフト」だ。(中略)グーグルに買収されたシャフトは、その後ホームページを事実上閉鎖。マスコミの取材にも応じない。経済産業省が問い合わせてもなしのつぶてだ。

出典:朝日新聞

シャフトは、浦田と中西が中心となり、わずか2年前に設立されたベンチャーである。2人は、日本のロボット研究の本流である東大教授、稲葉雅幸の門下生だった。(中略)開発資金集めは難航した。資金回収の見通しがつかないロボット開発に、国内のベンチャーキャピタルは二の足を踏む。社外取締役の鎌田富久は旧知のグーグルのアンディ・ルービンに話をつないだ。ルービンは、スマートフォンの基本ソフト(OS)「アンドロイド」の開発責任者を務めた人物で、いま担当しているのがロボット開発だった。渡りに船とばかりに、ルービンは13年11月、シャフトを買収した。

出典:朝日新聞

研究者たちは、日本のロボットテクノロジー自体は、今でも世界を牽引(けんいん)しているとの見方で一致する。(中略)ただ、課題は、ハードを動かすソフトにある。(中略)頭脳は米国がつくり、ハードの機器は中国が量産する。エレクトロニクス産業ではそれが現実に起きた。「手をこまねいていると、ロボットの世界でも起きかねない」。シャフト創業者と同窓のロボット研究者はそう語った。

出典:朝日新聞

かなり乱暴に朝日新聞の論調をまとめると、日本は優れたロボットを開発するための素地を持ってはいるが、それを大きく育てるための環境に欠けているというところでしょうか。

とても興味深いことに、たまたま同じようなタイミングでこうした日本の状況を論考したブログ記事が公開されています。

もう『ロボット大国日本』が幻だと思う3つの理由(風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る 2014/4/29)

上記記事では、「ハードからソフトへ」「閉鎖的な環境」「倫理/思想のなさ」の3つの理由から、日本はかつてそうであった「ロボット大国」という栄誉あるタイトルを返上せざるを得ないと結論されています。

あらためてこうして見てみると、さんざん語られて来た日本の製造業の弱点があらわになった典型的な事例の一つであることがわかる。日本の製造業は、モノづくりや技術(目に見える製品や技術、生産ライン等)には集中して取り組むが、目に見えないものを軽視する傾向がある。ソフトウェア、アーキテクチャー、コンセプト、エコシステム、ビジョン・・今回の事例からもわかるように、勝敗を決定的に左右する『重要な要素』は皆、目に見えない(見えにくい)。だが、この見えない要素にどう取り組むのか、どう独自のポジションを持つのかが、勝敗をわける時代になってしまったことは素直に認めるしかないはずだ。これまでと同じでは、日本の製造業に未来はない。

出典:風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る

この記事はBLOGOSにも転載されたため、ネット民の多くが目にして反応しており賛否両論も噴出していますが、ヤフーのリアルタイム検索で目についた意見をいくつか拾っておきます。

SCHAFT社買収の顛末や原発リスク対応の稚拙さの点で同意。金のなる木ならぬ未来を生む木をもっと上手に育てる仕組みがポイントに思えます。> もう『ロボット大国日本』が幻だと思う3つの理由 #BLOGOS http

出典:Hironobu Seda

言わんとするコトにある程度理解できる面がないワケではないが、外部電力使って180キロもある機体と完全自立で60キロを切る機体を比べてみたり、ロボットとAIを混同してるとか、ありもしない宗教ネタとか、ツッコミどころが多い気がする。 http

出典:Zak@Hyogo

あまりにも長く続いたソフト軽視と、リスクを取らないVCという意味なしの存在が元凶だと思う。このままだと次はデータサイエンスで同じ轍を踏みそう。 / “もう『ロボット大国日本』が幻だと思う3つの理由- 風観羽 情報空間を羽のように…” http

出典:上原 哲太郎

まあ国民性はあるよね。でも言ったところでそうそう変わんないんじゃないかな。 張り合ってもしょうがないから、EMSのようなかんじでロボット製造分野に集中してがんばってみたらどうだろう。 そんな中で育つ若い人からロボットの次が出てくるかもしれないんだし。古賀 正男

出典:https://www.facebook.com/permalink.php?id=100002334730488&story_fbid=641051122649373

全部が正論ではないとおもうが・・・ この説明で腑に落ちる部分が日本には多々ある、増えている と感じられます。 1)国賓VSアシモ(今更感10年ずれてる感あり)  2)ボストンダイナミクス(単純に脅威を感じる!) 3)F1調査ロボット USA製が最初に使用?(閉鎖環境での開発) 日高 一明

出典:https://www.facebook.com/permalink.php?id=100001936279719&story_fbid=629486000459270

善し悪しは別に、米国は軍事産業の部分が大きく本気度が違いそう。QT @masanork 結局のところ万博の賑やかしでデモばかりやってて運用現場をつくらなかったツケではないかな? / “もう『ロボット大国日本』が幻だと思う3つの理由…” http://htn.to/8QG1w8

出典:岡村久道

こういう好き放題言えることが日本の良さでもあると思うわけです。個人的には、googleが秘密主義なのではなく、ある特定の戦略に基づいて研究開発が始まってしまえば、それに従事している人は外に対して喋れなくなるのは当たり前のことです。「経済産業省が問い合わせても」というか、いままでロボットの有効性についてあまりしっかりとしたフォローをしてこなかった役所がgoogleに買収されたからといって「情報寄越せ」といっても誰も応じないだろうというのは当たり前のことです。

また、一口にロボット分野といっても、ストラテジーとしての意味はまだもやっとしていて良く分かりません。それこそ、現在流通分野で革新が進んでいるところでロボットの担う分野は広がりつつありますが、表に出てきているのは「アマゾンが配送のために無人ヘリを開発しました」とかクソのようなアウトラインのところだけです。

それゆえに、新しい知識としてマンマシンインターフェイスや、ロボットのような人力をエンハンスする機構を拡張していく分野は当然ながら投資対象になるのでしょうが、それがどのようなメインストリームの戦略になるかというのは当然手の内は出てこず、外にいる人は推測するほか方法はないわけですよね。

で、ロボットとはちょっと畑が違うのですが、これからの日本のIT業界が抱えそうな問題ではこういう話もあるということで。

技術者を襲う3年後の悲劇(日経コンピュータ 2014/4/21)

急速に高まりつつある新たなニーズに背を向けて、“人月商売”にあぐらをかいていれば、大変なことになる。3年後にはIT業界における人材のミスマッチが顕在化するだろう。その時に技術者を襲うであろう悲劇は従来の比では無い。

出典:日経コンピュータ

一方で、件のGoogleは着々と前進しているようでして、ロボットにも通じる技術の一つである自動走行車プロジェクトについてお披露目されておりました。

ここまで進化したGoogle自動走行車―新しいビデオを公開(TechCrunch Japan 2014/4/29)

現在、自動走行車プロジェクトは、状況が比較的単調なフリーウェイから、混雑した市街地の複雑な状況に対応して安全に運転することに重点を移している。(中略)実用化までにはまだなすべきことが数多く残っているとGoogleは言うが、このプロジェクトはすでに70万マイル(112万キロ)も自動走行車を走らせている。これは地球を28周するほどの長さだ。

出典:TechCrunch Japan

資本効率や人材活用という点から見ると前近代的である人月システムによる開発体制を抱える日本のSIベンダーと、超長期を見定められるほどに充分な収益性と外部からの資金調達が可能な世界的情報コングロマリットであるgoogle様他を比べるのも微妙すぎる世界ではあるのでしょうが… 私たちの抱えている知識やそれに基づく構想をどのようにサービスに落とし込んでいくのか、その落とし込むカタチがロボットだとするとどういうアーキテクトになり得るのかを逆算していくと、意外といろんなものが見えるのかもしれません。

Googleと同じことをやる必要はないと思うのですが、今の日本の産業界の状況は閉塞感が強いかもしれないですね。明るい未来へ向けてなんとかしたいものです。

mixiもインチキくさい決算出してないでこういう方向で勝負してみろよ。