NTTグループ規制緩和の件は単に「セット割」だけの問題ではないという話

 山本一郎です。今日は様々な事情が渦巻く中でのポジショントークをお楽しみください。

 NTT系列を除いた合計65を数える国内通信事業者・団体が連名で総務省へ要望書を提出しております。KDDIのサイトに公開されているプレスリリースにてその内容を確認できますが、企業名が縦にずらっと並びスクロールしてもスクロールしてもなかなか本文に至らないその状況はなかなかに壮観です。

2020年代に向けた情報通信政策の在り方に関する検討についての連名要望書の提出について(KDDI)

今後2020年代に向けた情報通信政策の在り方について検討を進めていくにあたりましては、多様な事業者による競争を通じて、国民利便の確保を図るため、公正競争確保の観点から、これまでの政策の包括的な検証を十分に実施した上で、必要な措置を講じていただくことを要望いたします。

出典:KDDI

 で、この件、メディアによっては分かりやすい切り口で見出しをつけた記事もあるため、一般消費者の観点からすると単に「セット割」だけの話ととらえて、NTTでセット割を提供してもいいじゃないかくらいの意見も散見されるわけですが、事はそれほど単純ではないので注意したいところです。

NTT「セット割」解禁の動きに「独占回帰」とクギ KDDI・ソフトバンクなど、総務相に要望書(ITmedia 2014/4/2)

 今回の要望書が出てきた経緯や背景、そしてその問題点については、下記の記事

が考察も含めて分かりやすくまとめられていて参考になります。

なぜライバルのKDDIとソフトバンクがタッグを組んで発表会を行なったのか?(週刊アスキーPlus 2014/4/3)

NTT以外の事業者が、単に国内のシェアありきで規制を継続するべきという従来の姿勢を示すだけでは、主張が認められにくくなりつつあるようにも感じている。規制に関する議論の際には、海外のOTT事業者などとの競争などを見据えた提案などが、必要になってくるだろう。

出典:週刊アスキーPlus

 最終的には国の情報通信政策そのものに係わる大きな話であるため多面的な考察が必要となりますが、通信の舞台が固定電話からケータイへ、そしてケータイからスマホへと移り変わり、従来のように国内のパワーバランスだけで調整することが事実上不可能となってしまった点が今後の成り行きを大きく左右することになりそうです。

 このほか関連記事として興味深かったのはKDDIの田中社長のインタビュー記事でして、なるほどそういうことかという示唆的な内容でした。

KDDI田中社長インタビュー(ケータイWatch 2014/4/4)

2020年代は、5G(第5世代の通信技術)の時代なんです。とんでもなく速くなります。(中略)4G、5Gの時代になると、周波数が高いこと、そしてトラフィックが局所的に莫大な量になることから、基地局はどんどん小型化していく。ライセンスバンド(免許がある帯域)で無線LANのネットワークを作るようなものです。そうした小型基地局には固定回線が繋がります。(中略)4G/5G時代のコストの大半はバックボーンになると見ています。

出典:ケータイWatch

 次世代テクノロジーの具体的な状況を鑑みると今後の携帯キャリアの強みは固定回線の有無や優劣に依存する可能性が非常に大きいということで、この見立てがもし正しいとすれば、NTTグループが何の規制もなく連携できてしまう状況が実現することで他事業者にとってはまったく勝負にならない状況が生まれるということを意味します。そうした事情があれば、NTT以外の通信事業者が一同に揃い必死になって総務省へお伺いを立てるのも当然といえましょう。

 なお上記のインタビュー記事ですが、それなりのポジショントークであることは重々承知の上でも田中社長お得意の話術で面白おかしく読ませる内容になっていて、「2020年の東京オリンピックに向けて、これから、いろいろな物事がガーッと進むでしょう。5Gも結構いっちゃうんじゃない?」という発言あたりも狙っているのか天然なのか分かりませんが、かなり面白いです。

 以下妄想の類ですが。

 一方のNTTグループとしては、来年にはいろいろアレであって欲しいということで、悲願であったナニについていろいろと積極的なアプローチをほうぼうに諮ってきております。最近は通話料定額のような施策も様々な思惑の元にああいう感じになりましたので、やはりグループとして労務屋支配からの脱却後のビジョンとしてそういうアレを旗頭にああいった方針でやっていくというのは理解しやすいところです。

 その意味では、例の「docomoに移転ゼロ」事件や「ドコモだ家」事件をはじめ、なんか良く分からないけど年俸二千万級の若造コンサルが横から出てきて叩き上げの組織人を無知呼ばわりしてあごで使う事件、ツートップだったはずがツーはどこへいった事件などのさまざまな変遷を経て、最終的な結論として土管から1mmで良いから上に顔を出したいイエローサブマリン根性のようなものが芽生えるのは仕方がないと思うのですよね。

 極論すると、民主党政権の下で日本航空の再建を託された京セラの稲盛和夫さんが手腕を発揮されたのと似た意味で、この方面のビジョンを持っている数少ない有力者であるガースー黒光り長官の意向が最大限に効いた政治主導のアレであり、5兆円企業みかかの頚木を外して右往左往するジミー大西を誰が演じるのかという話じゃないかと思います。やっぱこう、党トップに横滑りするからには、何らかの花道が必要なんじゃないかと思うわけですよ。

 笑ってはいけない通信行政24時的な。妄想ですけどね。