国内電子書籍事業者の淘汰が始まるようですが、サービス終了で読めなくなるのは不条理な感じ

山本一郎です。人生と言う名のサービスタイムはまだまだ続きます。

ところで、コンビニ大手のローソンが2011年7月から開始した「エルパカBOOKS」の電子書籍サービスが2月24日で終了になるそうです。見切りが早いですね。ここ数年で乱立気味だった電子書籍事業ですが、不採算な事業者はそろそろ撤退戦のタイミングになってきたということでしょう。

電子書籍サービス「エルパカBOOKS」が2月24日に終了--購入済み書籍は閲覧不可に(MdN Design Interactive 2014/1/8)

エルパカBOOKSの電子書籍サービスの実ユーザー数がどれくらいであったのかはよく分かりませんが、それなりに大手の国内事業者が完全撤退するということもあり、電子コンテンツ配信サービスが終了する際のインパクトがどういうものなのかということをシミュレーションするのには参考になる話です。

1月16日には新規電子書籍の販売がストップされ、2月24日のサービス終了後は、購入済みの書籍の閲覧や新規の書籍購入、再ダウンロードなどの全ての電子書籍サービスが利用できなくなるという。

出典:MdN Design Interactive

今回大きく注目されるのは、サービス終了と同時に購入したコンテンツが利用できなくなるという点でしょう。従来の紙の書籍であれば一旦購入すれば、出版社が倒産しようがその本を読めなくなるということはあり得なかったわけです。しかし、電子書籍の場合にはそうした常識が通用しないということです。

電子書籍サービスが怖いのは、この「サービス終了すると購入した電子書籍が読めなくなる」というところですね。これは、電子書籍を読むライセンスを購入しているのであって、電子書籍そのものを購入している訳ではないから、という理屈になります。

出典:ネタフル

こうした「読むライセンスを購入」する形式で提供される電子書籍はかなり多く、現時点で世界最大級規模のサービスであるAmazonのKindleもこの方式を採用していることは利用規約を読めば分かります。

AMAZON KINDLEストア利用規約(Amazon.co.jp)

Kindleコンテンツは、コンテンツプロバイダーからお客様にライセンスが提供されるものであり、販売されるものではありません。

出典:Amazon.co.jp

さらに興味深いのは、紙の本であれば買ったあとは、その本を他人に譲ろうが、古書店へ売ろうが、本の中に書き込みをしようが、興味のある部分だけ切り抜いてスクラップにしようが、すべて個人の自由ですが、Kindleでライセンスされた電子書籍についてはそうした行為は原則できないことになっています。

お客様のKindleコンテンツまたはその一部に対するいかなる権利も第三者に販売、借用、リース、配信、配布、サブライセンス、ないしは別の方法で譲渡してはならないものとします。また、Kindleコンテンツ上の著作権の表示やラベルを削除または変更してはならないものとします。さらに、Kindleコンテンツ保護のためのセキュリティ機能を迂回、修正、無効化、回避してはならないものとします。

出典:Amazon.co.jp

今回、エルパカBOOKSは既存の購入者に対して、現金ではない「Pontaポイント」というかなり用途が限定された形ではありますが、購入代金相当を全額返金するというだけでも良心的なのかもしれません。まあ、それしなかったら全力でぶっ叩かれるとは思います。これはあくまでも仮の話になりますが、もしAmazonがKindleを完全撤退することがあるとすれば、その時エルパカBOOKSと同じように購入者全員に返金するというのは現在の事業規模を考えるとまずあり得ないでしょう。まぁ、それだけエルパカBOOKSはユーザー数が少なかったという裏返しの話であるのかもしれませんね。だからこそ撤退したと。

電子書籍のこうしたライセンス形態は、従来の紙の書籍を基準に考えるとユーザーにとってかなり不満の残るものでありますが、紙の本では実現できなかった利便性もあるので、そこは電子書籍ならではのメリットをどう活かすかという形で考えるしかないのでしょう。音楽配信を例に比較すると、電子書籍のライセンスはダウンロード販売というよりはストリーミング配信に近いのかもしれません。ストリーミング配信であれば事業者が無くなってしまえば聞けなくなるという結果もあまり不条理には感じませんが、ダウンロードで購入した音楽データが事業者の都合で聞けなくなるのはかなり不条理に感じられるのと同じでしょうか。

mixiのSNS事業からの撤退という朗報を正座して待ちたいと思います。