のらもじ発見プロジェクトが小規模炎上していたようです

山本一郎です。炎上とは縁の遠い生活をしています。

ところで、広告代理店のアートディレクターが発起人となった企画「のらもじ発見プロジェクト」が面白いと話題になっているようです。

お店の看板のレトロ文字をフォント化→売り上げ還元 「のらもじ発見プロジェクト」がステキ(ねとらぼ 2013/11/29)

街中にある個性的なフォントが無料で使える「のらもじ発見プロジェクト」(GIGAZINE 2013/12/2)

昔ながらの看板フォントをシェア 「のらもじプロジェクト」(AdverTimes 2013/12/5)

昔ながらのお店の看板には、昭和ノスタルジックあふれる独特のフォントが使われていることがあります。そんな味のある文字を探してはPCで使えるようにフォント化するサービスが「のらもじ発見プロジェクト」です。フォントはSNSでシェアすれば無料でダウンロード可能となるほか、フォントの提供元である店舗に還元したいという場合にはお金を寄付することもできます。

出典:GIGAZINE

11月29日公開後、12月2日時点でFacebook上で1万件の「いいね!」ボタンが押されている。

出典:AdverTimes

実際に同プロジェクトのページへ行くと、任意のひらがなを入力することで各フォントのサンプルを自由に閲覧できるのですが、そのサンプルの見せ方がなかなか面白いです。どう面白いかを言葉で説明するのはちょっとむつかしいので、実際に皆さんご自身で「TYPE TEST」の入力欄に文字を打ち込んで確かめていただければと思います。

のらもじ発見プロジェクト

この面白さが評価されタイポグラフィにまつわる賞も受賞しているようです。

優れたタイポグラフィを顕彰するTDC賞の2014年度RGB賞を受賞したことが12月4日、発表された。RGB賞はディスプレー、スマートフォン、タブレットPCなどの表示向けに制作した作品を対象とするカテゴリー。

出典:AdverTimes

そうしたところが、ネットの一部でこのプロジェクトに対してやや批判的な意見も出ていることが分かりました。

『のらもじ発見プロジェクト』に対する違和感(Togetterまとめ)

東京TDC賞2014 RGB賞部門を受賞した「のらもじ発見プロジェクト』。間違いなく面白い試みには違いないのですが…、何が引っかかるのか。違和感を表明する人たちのつぶやきを集めました。

出典:Togetterまとめ

批判的な意見が出た理由としては、街中にある看板の文字に対して「のら」というややネガティブな意味合いやニュアンスを持つ言葉をあてはめてしまっているセンスや、本来の看板文字を書いた職人さん達にまで遡ってのリスペクト的が欠けているように見えてしまうといったことがあるようです。いわばネットにおける炎上ネタの一つのトレース疑惑に対してと同じような感情的なものが根っ子にあるとも言えるでしょう。

ちなみに、国内における著作権法的な観点からすると「書体」というものに著作権は認められていません。しかしながら、フォントのプログラムデータそのものに関しては著作権が適用され得ます。ややこしいですね。厳密な法律を語る上ではあまり適切ではありませんが、分かりやすい説明としては以下などが参考になるかもしれません。

フォントに著作権は・・・(教えて!goo)

フォント自体には著作権は認められていませんが、実際に販売されているフォントというのは、その形状をプログラムデータとして記述しているものがあるので、そのデータはプログラムの著作物として保護されるのです。したがって、市販されているフォントデータをそのまま複製・販売したような場合は、フォントプログラムの著作権侵害として訴えの対象となるのです。

また、今年になって著作権以外の部分で最高裁まで争ったフォントにまつわる訴訟でもフォント事業者にとっては不利な判決が出ています。まぁ、訴えたフォント事業者の気持ちも分かるがそれは無理筋だったという話でもあります。

「著作権」の重さを改めて感じる一事例~ディスプレイフォントの使用をめぐって(企業法務戦士の雑感 2013/8/9)

もし、原告のフォントが、著作権法で保護されていたならば、被告が原告との契約の当事者であろうがなかろうがダイレクトに権利を及ぼせるはずの利用行為なのに、そういった保護が及ばないゆえに、直接の契約がない被告らとの間で、迂遠な方法でしか責任追及をすることができず、しかも、そこで責任を認めさせるためのハードルは極めて高い・・・ということになってしまう。

出典:企業法務戦士の雑感

この件、海外ではどうかというと、米国では日本と同じように書体に著作権は認められていませんが、プログラムデータとしては適用可能です。一方で、ドイツや英国では書体そのものに著作権が認められているようです。つまり、国によってずいぶん状況が異なるということですね。

The Law on Fonts and Typefaces: Frequently Asked Questions(crowdSPRING Blog)

Generally, copyright law in the U.S. does not protect typefaces. Fonts may be protected as long as the font qualifies as computer software or a program (and in fact, most fonts are programs or software).(中略)Germany recognized in 1981 that typeface designs can be protected by copyright as original works. England also allows typeface designs to be protected by copyright (since 1989).

出典:crowdSPRING Blog

さて、のらもじ発見プロジェクトのフォントライセンスの説明は下記のようになっています。

このサイトで配布するフォント(タイプフェイス)の所有権/著作権(著作財産権・著作者人格権)はそれぞれの看板の制作者/所有者に帰属します。

出典:のらもじ発見プロジェクト

国内の著作権法からすると、「タイプフェイス」にまで著作権を主張するのはちょっと無理がありそうですね。あくまでもプログラムとしての著作権を主張するのが無難かと思われます。もちろん意匠登録に関する主張は問題ないでしょう。

まあ、何にせよこの手の新しいことをやると何かと批判を浴びやすいのは間違いなく、うまくその辺を調整して三方一両得になるようなアプローチを考えていただきたいものです。

mixiもストップ高で9,000円をつけるなど、そろそろバブルの薫り深い銘柄になってきましたが、株は売っても丁寧にヲチし倒産まで見守ってまいりたいと存じます。

よろしくお願い申し上げます。