若者の車離れ対策でいまだにデートの話が出てくるのはさすがにちょっとピンぼけではないでしょうか

山本一郎です。青春は記憶の彼方へ消えていきました。

ところで、昨今、「若者の◯◯離れ」という言葉がネタとしてもてはやされていますが、そうした風潮が生まれた原因の一つがおそらく「若者の車離れ」という言葉でしょう。

自動車の売上が伸び悩む数字を分析してみたら若者層における需要がとくに低くなっている傾向が見られたということから、こうした言葉がメディア等で取り上げられるようになりました。

自動車産業は戦後の日本経済を支えてきた大きな産業の一つでありますから、そこが不調であるということはすなわち日本経済が傾く要因にもなり、色々と危惧されることは仕方のないことでしょう。しかし、すでに2011年には、ネット産業の市場規模が自動車産業のそれを上回ったというデータもあるようです。この数字の出所はGoogleということで、どこまで信頼するかはさておき、必ずしも自動車産業の衰退と共に国内経済全てが回復不能に陥ると絶望する必要はないのかもしれません。

ネット産業の市場規模20兆円、自動車上回る(日本経済新聞 2011/10/19)

グーグル日本法人(東京・港)と野村総合研究所は19日、日本のインターネット産業の市場規模が2010年度に約20兆円となり、自動車産業を上回ったとの共同調査報告を発表した。

出典:日本経済新聞

どちらかといえば、自動車産業のあり方が従来のままで良いのかどうかを問うべき時代が来たととらえ、これまでとは違う新しい方向性を模索するのが良いのではないかと感じます。

しかし、そうした時勢であるにもかかわらず、いまだに国内自動車産業は「若者の車離れ」をなんとかしようと躍起になっているようで、さすがに「女の子をデートに誘うには免許と車がなければというのが100%の常識だった」という価値観のアピールを世界トップクラスの自動車メーカー社長が大学生に向かって話しているというのは、なにか時代錯誤感が甚だしいです。正直、良く分かりません。

トヨタ社長が取り込み狙う、車なくてもデートの若者-長期戦略(Bloomberg 2013/10/8)

過去最高の販売台数を目指すトヨタ自動車 の豊田章男社長はリーマンショック後の数々の危機を乗り越え、今や勢いに乗る経営者の一人だ。そんな彼を悩ませているのは、いまどきの若者が車がなくても女の子をデートに誘えると公言することだ。

出典:Bloomberg

いやー、今年40歳になる私でさえ、デート目的で車を所有しようという気持ちになったことは一回もありませんでしたからね。まあ、女性には縁がなかったという理由もありますが。うるせえな。

例えが変ですが、モバイルの時代となった今になっても、情報強者の真のツールは巨大な自作タワーPCであり若者はスマホやノートPCで満足すべきではないと説いて回っているようなものを感じます。

もちろん自動車という道具が生活の中で役立つものであることは今も変わりませんが、個人一人一人が自家用車を持つという価値観が既に東京などの都市生活ではそぐわないものになりつつありますし、こうした傾向はなにも日本だけで見られるものでもないようです。

空回りする欧州自動車メーカー(WSJ.com 2013/10/2)

燃料価格の上昇や耐久年数の長い自動車の増加、ステータスシンボルとしての自動車の地位低下、若年層の自動車免許取得数減少など、さまざまな要因が重なり、欧州では新車購入の習慣が薄れつつある。

出典:WSJ.com

自動車というものがデートで役立つステータスシンボルとして機能した時代を懐かしむのも大いに結構ですが、それをそのままビジネスにもってこれられても現代の消費者は心を動かされないでしょう。自動車は実用品の一つであるというのが世界的なコンセンサスとなりつつあるのであれば、そうした視点でどういう自動車が求められているのかに応えていく必要がありますし、また、そうでなければ若者に売れる車は永遠に作れないのではないかと思います。

もっといえば、自動車という商材自体がいまの若者のライフスタイルに合わない原因は単純に低所得化が進んでいるからであり、自動車に資金を突っ込む地方在住者であっても利便性以外のところで自動車を選択しなくなった層が増えたのだとも言えます。

運転を楽しむという従来の自動車に求められた趣味性からは激しく乖離する存在ですが、自動運転という技術は安全な交通手段の一つということで今後の発展を期待したいところです。

日産、自動運転車20年までに発売 試作車公開(日本経済新聞 2013/8/28)

【CEATEC 2013 Vol.22】日産の自動運転車が進化…デモ走行(RBB TODAY 2013/10/1)

私個人としては結婚できて良い夫になり、子供が生まれて良い父になれればそれで充分ですが、そろそろ家内や子供たちを連れて遠出をする車に買い替えたくなってきました。でも、それは見栄えとかではなく、安全で確実な移動手段としての乗用車だって意味ですけどね。

なので、そういう方面に自動車が進歩していってくれるのは大歓迎です。若者ではない私の場合はね。