ターゲティング広告で画期的な技術が開発されたようですがこれは大丈夫なんでしょうか

山本一郎です。細部にこだわる男です。

気になるプレスリリースがありました。

世界初!サードパーティCookie非対応ブラウザへの行動ターゲティングADネットワーク技術の開発に成功(株式会社KPIソリューションズ/@Press 2013/5/29)

当該技術により、広告主は諦めざるを得なかった、サードパーティCookieを遮断する設定であるiOS上のSafari等ブラウザへの行動ターゲティング広告の実施が可能となってまいります。

出典:株式会社KPIソリューションズ/@Press

これは行動ターゲティング広告を展開している事業者側からすると夢のような話かもしれないですね。

しかし、サードパーティCookieに対応しないブラウザがここ最近増えてきた背景には、世界的な共通認識として、行動ターゲティング広告がプライバシー侵害になる可能性を懸念するというのがあります。

国内でも行動ターゲティング広告については、インターネット広告推進協議会が「行動ターゲティング広告ガイドライン」を制定し、そこで行動ターゲティング広告をオプトアウトできることが義務付けられています。

インターネット広告推進協議会(JIAA)は2009年に「行動ターゲティング広告ガイドライン」を制定・公表し、同協議会の会員社はこのガイドラインを順守して行動履歴情報を取り扱わなければならない。会員社のサイト内では行動ターゲティング広告を無効化(オプトアウト)できる設定を設けることが義務付けられている。

出典:JARO

もし、エンドユーザーが行動ターゲティング広告のオプトアウトを積極的に意図してサードパーティCookieを遮断しているにもかかわらず、新しい技術によって行動ターゲティングされてしまう状況が実現するとすれば、それは何らかのプライバシー侵害になると見なされる可能性もあるのではないでしょうか。

こうした行動ターゲティング広告に関する諸々は非常にセンシティブな問題で、広告提供側とエンドユーザー側の思惑は常に噛み合わないという印象が強いです。

「行動ターゲティング広告ガイドライン」が尊重されずオプトアウトしにくくなっているのは問題だ(chuukaiの日記|スラッシュドット・ジャパン 2012/3/12)

オプトアウト不履行の責任はどう問えるか(と書こうと思ったら終了していた)(高木浩光@自宅の日記 2012/4/29)

iOSに関して見れば、従来の行動ターゲティング広告で最も利用されていたUDIDの使用が禁じられ、別途エンドユーザー側がコントロールしやすいと考えられる別機能が提供されるようになりました。

米Apple、iOS 6.1ソフトウェアアップデート提供開始~広告識別子がリセット可能に(INTERNET Watch 2013/1/29)

Appleは通常、同社の提供する施策とバッティングするようなサードパーティの独自機能を非常に嫌がります。つい最近もLINEがAppleから要請されて独自機能を停止したばかりです。

iPhone版LINE、有料スタンププレゼント機能終了 「Appleからの要請」で(ITmedia 2013/5/10)

そういう意味では、今回の新しい行動ターゲティング広告向け新技術についても、Appleから何らかの形で待ったをかけられる可能性はあるのかもしれません。行動ターゲティング広告はビジネスとして色々な可能性があると思いますので、誰もがメリットを得られるような良い形で発展していって欲しいものです。