「クールジャパン」は民間主導でいいんじゃないの

山本一郎です。山本太郎ではありません。

ところで、クール・ジャパン関連の話題がまた出始めております。個人的には、取り組むのは構わないけど成果は出ないだろうなあとしか感じないわけなんですが。

本気か?クールジャパン政策(ヤフーニュース個人)

クールジャパンとはいわずもがな、我が国の文化資産を海外に積極的にアピール、拡販して、新たな国富を生む産業へと育成しようという代物であります。ポップカルチャーというお題目については、中村伊知哉せんせが書いておられるように「マンガ、アニメ、ゲーム」がその主たる商品群であるとされ、クリエイティブ産業政策という観点では経済産業省を中心にかなり議論は深まっているようにも見えます。

日本製のJ-POPや邦画、テレビ番組なども本来であればクールジャパンで海外販売を推進する商品群に入るはずなんですけれども、あまりこのあたりの議論が見当たらない理由は良く分かりません。ただ、いわゆる日本食や、日本のファッションなどにも言及されているので、まあ網羅的にコンテンツであれば良いという感じなのでしょう。

クール・ジャパン/クリエイティブ産業政策(経済産業省)

知財本部においても、コンテンツ産業育成のための枠組みに関する議論を進めており、しげしげとビジョン案を読んでおりますと幅広く現状を認識しつつ具体制作に落とし込んでいこうという姿勢は垣間見えます。この辺の48pぐらいからの内容は現状を考えるのに申し分のないデータが揃っており、実に興味深いところであります。

知的財産政策ビジョン(案)(内閣官房・知財戦略本部)

で、内閣官房の「クールジャパン推進会議」なんですが…。

クールジャパン推進会議(内閣官房)

○中村氏 キーワードは3つです。「参加」「融合」「育成」。言いかえますと、「みんなで」「つながって」「そだてる」という方向にまとめてみたものです。 最初の「みんな」「参加」ということです。アニメもゲームも、あるいはファッションも支えているのは消費者やファンの愛情です。ですから、クリエイターだけではなくて、国内あるいは海外のファンみんなの力を生かしたい。そこでネットで多言語発信をしたり、イベントを開いたり、特区あるいは「聖地」を形づくっていくような、みんなが参加して情報を発信していく仕組みをつくっていこうということです。政府主導というよりも「みんな」と締めました。

出典:クールジャパン推進会議(第3回)出席者

おそらく、コミックマーケットやpixiv、ニコニコ動画のようなクリエイターが集まるコミュニティからコンテンツを創造、発信していくことを想定しているのだと思いますが、ほぼ完全に日本のマーケット、消費者、愛好家に対してアジャストした作品群であり、こういう熱気を活用して海外に市場を拡大していくのだというのは「そもそも論」として砂漠に水を撒くようなものだと思うのです。

むしろ、国内のマーケットが徐々に縮小していくなかで、海外に活路を求めるという気持ちは分からないでもないのですが、もともと海外にはそこまでポップカルチャーの市場はないのです。もうこのあたりは、実際に携わっている大原ケイさんや、マンガ市場について国内・海外の事情を研究している藤本由香里さんが具体的なところを書いておられます。まったく同感です。

アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由 Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US

日本のマンガが海外展開するための問題点 by 藤本由香里

私が世界市場を調べ始めた時、最初に悟ったのは、「海外のマンガ市場は驚くほど小さい」ということです。私も最初、竹熊さんと同じように、「海外には広大な市場がある」と思っていました。でも違った。「世界のマンガ市場をすべてあわせたより日本一国の方が大きい」これを知ると、見方が変わります。 藤本由香里  @honeyhoney13

出典:Twitter/@honeyhoney13

また、ポップカルチャーと定義される商材の中で、唯一貿易黒字を生んでいるゲーム業界で投資や制作を営んでいる私の立場から申しますと、確かに日本のゲームはいまなお比較優位を有しています。一時期の圧倒的なシェアから比べると見る影もないですが、それでも一角は占めており、財務省の貿易統計でも1,000億円以上の黒字になっているのがゲーム業界です。ただし、この黒字になっている理由というのは明確で、それはコストをかけてローカライズし、アメリカならアメリカ人好みの、EUであればそれぞれの国ごとに相応しいチューニングを行って、現地で受け入れやすく、売りやすい改変をしているからです。

しかし、我が国は我が国の市場向けのコンテンツがかなり幅を利かせ続けています。例えば、ライトノベルを原作としたゲーム作品があったとして、これはもう日本では売れるとしても海外では厳しい。初音ミクにしても、一定の顧客には強烈に刺さる素晴らしい概念、キャラクターですが、海外ではまったくと言っていいほどウケは良くありません。深夜アニメしかり、コミケの二次創作しかり、日本人好みに最適化されているからこそ面白さが際立つ作品群というのは、ゲームであれマンガであれ海外ではなかなか売れないのです。

私は、こういう現象の原因というのは、コンテンツのプロが疲弊しているからだと思います。というのも、給料が安すぎる割に仕事量が多く、疲れ果てているのです。ゲーム業界もアニメ業界も、40代で年俸200万円台という人はゴロゴロいます。そういう人を雇って業者が儲かっているかというと、これまた儲からないのです。政策主導で「海外に売っていくぞ」というよりは「日々のカネが回っていない」という実情がある以上、業界の現状というのはそんなところにカネを積むのであれば最低限クリエイターが飯を食えるようにして欲しいと思うのです。

また、知的財産の点から言うならば、いまなお日本のコンテンツはパクられ放題、海賊版が出回り放題です。これはもう、民間ではどうしようもありません。これこそ、政府の出番なのではないでしょうか。「日本のコンテンツ力を生かして外交力を高める」というぐらいなら、まず海賊版やファンサブも含めた知的財産の保護ができるような仕組みを作ってもらわないとなりません。

音楽プロデューサーの山口哲一さんがJ-POPの状況をお話されていますが、ゲーム業界とは位相は若干異なるにせよ非常に参考になります。

クールジャパン推進会議に間に合わなかったけど、コンテンツ輸出への極私的処方箋~国のお金の使い方~

それで、どうするべきか? この問題の本質的な解決策は、海外の市場で利益を出せるプロデューサーがたくさん出てきて、グローバルなビジネスモデルと稼ぐノウハウを持つことだ。 以上終了、なんだけど、、、  じゃあ、どうするかの答えは簡単じゃ無いし。まして国の政策として、どう落とし込むのかは、全然わからない。頭の良い人達に考えて欲しい。

出典:いまだタイトル決めれず

個人的には、海外の政策事情を見たりすると各国の文化省が芸能関連業者との癒着を強めて問題になったりするケースも散見されるので、フェスに参加するアーティストの渡航費の一部助成ぐらいまでで留めておくべきではないかと思うんですが、これも見方によると中堅以下の食えないアーティスト対策ともいえますね、自力ではなかなか海外のフェスにいけるだけの財力がないわけですから。

ただ、文化事業というのはどこの国も赤字ですね。そういう性質のものなのだろうと思いますが、より戦略的にお金を使っていくのだ、ということであれば、日本の文化、企業、商品やサービスといったものに対して好影響になるようなものを支援するべきです。間違っても、児童ポルノ紛いのヲタアニメやマンガを支援するべきではないと思いますね。

そういった意味では、上記山口さんのご指摘と被りますが、コンテンツが受け入れられるかどうかの選球眼は物凄く大事です。その海外市場で何がウケるのかという目利きができるプロデューサーのみが利益を上げ成果を出すことができるからです。逆に言えば、民間でさえなかなかそういう人材を確保できていないのに、役人が血税でファンド作ったりするの、ほんとやめて欲しいです。リスクマネーを供給、というか、ただのリスクです。そもそも、民間は儲けられる確信のある作品であれば、自前の資金で勝負します。こういうリスクマネーというのは売れる確信はまるでないものにカネを付けることになりかねないので、そんな銭があるぐらいだったら食えないアニメーターや残業ばっかで死にそうなプログラマーに健康診断を無料で受けさせてやれるような予算を計上してくれたほうが、よほどポップカルチャーのためになると言えます。

400億円投入!官製コンテンツ・ファンドは愚策か

文化省を作るのは構わないし、100年やり続ける政策だというのも別に良いので、その文化に携わる人たちがもう少し人間らしい暮らしの出来るような政策をクールジャパンでやってもらいたいと切に願います。

クールジャパンを担ってる連中が疲弊してたらしょうがないでしょう。

でも、これが現実なのよね。