猪瀬直樹都知事のインタビュー記事に批判が集まる

 山本一郎です。スワローズの連勝に気を良くしています。

 すでに報じられております東京都知事・猪瀬直樹氏関連、日本国内だけでなく海外でもその発言のヤバさをおおいに問題視されてしまっています。

Pour Tokyo, un d rapage qui pourrait co ter cher(francsjeux.com)

 トルコでも青年スポーツ相が違和感を呈するアピールが行われ、メディアでも報じられてしまっています。

 もちろん、猪瀬直樹氏も自身のFACEBOOKで釈明のコメントを寄せるなど、対応に追われている状態です。

猪瀬直樹 - FACEBOOK

 ただ、おそらくは猪瀬氏の発言内容自体は動かないんだろうなあとすると、問題は発言の「解釈」と「真意」になりますね。

米紙「記事に絶対の自信」 五輪招致巡る都知事の反論に(朝日新聞)

 スタルマン氏によると、インタビューをした記者は2人とも日本語を話すうえ、猪瀬知事はインタビューのために自ら通訳を用意した。記事で引用した言葉はその通訳が話した内容で、録音もされているという。

出典:朝日新聞

 記事の問題の箇所を読みますと、話の構造がより深く伝わってきます。

In Promoting His City for 2020 Games, Tokyo’s Bid Chairman Tweaks Others

But Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classes.

出典:NewYork Times

 訳すると「だが、イスラム諸国に共通するのはアラーだけであって、それでも彼らはいつもお互い喧嘩している。それに彼らには階級制度がある」という話でありまして、前後の文脈も考えるに「だからイスタンブールは候補地として望ましくないのだ」という内容以外にとりようがないのも事実です。そして、それは他候補地の誹謗中傷や比較を禁じるIOC憲章違反だ、という問題に直結します。

 ただ、実際にはもう少し奥行きのある問題でもあります。それは、政教分離の進んでいるトルコをイスラムの問題ひとくくりにしているばかりか、イスラム世界であるからオリンピック精神にそぐわず、オリンピック開催に相応しい候補地ではないのだ、と主張しているに等しいからです。他にも、「若い人が多いイスタンブールは有利ではないのか」というNYTからの水向けに対してトルコの平均寿命の短さを引き合いに出して日本文化を真似たらどうか等の発言をしたようで、これはもう庇いようがないレベルの失言であるのは間違いないところです。

 猪瀬直樹氏は、自身の著書でもグローバルに語るべきことについて、このような論述をされています。

言葉の力 -   「作家の視点」で国をつくる(猪瀬直樹)

相容れない考えを持つ相手であっても、正確に理解し、きちんと言葉で自分の考えを伝えることが大切です。世界で通用する共通のルールを知らなければ、対話は成り立ちません。

出典:言葉の力 -「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ)

 さて、失言はやむを得ないとしても、その釈明にあたってFACEBOOKで通り一遍の「真意」を表明するだけでの対応が「世界で通用する共通のルール」なのでありましょうか。”トルコやイスタンブールにいったことがあるし”というのは国際的な心証をより良くするために真意を伝える言葉として適切なのかという話であります。

 そして、なぜニューヨークでNYTなのかという点では、石原慎太郎都知事を支える副都知事時代に猪瀬直樹氏が提唱する形で「石原都知事がニューヨークで都の予算や寄付を募り、尖閣諸島地権者から土地を買い取って都有化」という発表を行った経緯があります。確かに、世界の中心で鋭角の論陣を張り、世界中の注目を集めようとする手法は、効果があるのかもしれません。その後、尖閣諸島で船たまりを建設するための寄付はどうなったのかあまり続報がない気もしますが。ただ、パブリシティとしては有効だった、とも言えます。

 それは当然、失言もまた世界中に拡散するわけでありまして、猪瀬氏が政治生命をかけて取り組む政策のひとつであった東京オリンピックの開催を、自らの言葉の力で崩壊に導こうとしているのもまた、皮肉なものです。そして、おそらく猪瀬氏の都政に対する反発や、一部のスキャンダルめいたものも出てくるかもしれないし、その手の傲慢批判は突き詰めればこの国の人材の薄さの証明でもあるということですね。そういう失言を世界に対してかましてしまう人を圧倒的支持という形で都知事に祭り上げてしまった都民の問題とも言えましょう。

 よりによって、あさって安倍晋三首相がトルコ訪問だというのに、厄介な問題を残してくれたものです。まあ、日土両国としては触れずに流すべき問題なのかもしれませんが。