山本一郎です。昨夜は思わずメジャーリーグ開幕戦を観戦してしまい、年甲斐もなくほぼ徹夜してしまいました。でもまだ元気です。

ところで、NTTが、NTT東西の固定電話やNTTドコモの携帯電話ユーザーを対象にした大がかりなモニター調査を企画しながら、中止するという話がありました。

NTT、「ネット利用状況モニター」を取り止め(ケータイWatch 2013/4/1)

NTT(持株)は、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本と連携して実施する予定だった、インターネットの利用状況調査について、パソコンやスマートフォンから取得する情報の範囲や収集した情報の利用目的が不明瞭といった批判を受け、中止すると発表した。

このモニター調査の面白かった点は、ユーザーがPCやスマホを使ってアクセスするデータのほとんど全てを収集しようという意欲に溢れたものであったところです。きょうび、全量調査とか超タフネスですね。

Webブラウザ等を使って他者には知られたくない通信を行う際には、SSL通信という暗号化された通信規格を利用するのが一般的ですが、今回のNTTのモニター調査では、このSSL通信の内容も取得できるような仕組みを導入していました。もちろん、モニター調査に参加するユーザーが、事前にこの情報は取得されたくないということで、ちゃんと設定をしておけば問題は無いわけですが、その設定はいちいち通信相手毎に手動で行わなければならず、もし設定をし忘れてしまうとNTT側にダダ漏れというような条件になっていました。

しかも、こうして情報がダダ漏れしても、その被害の実態をNTT側が認めなければ損害賠償は発生しないと解釈できるような規約となっていました。さすがNTT、抜け目はありません。中の人は安心です。

モニター参加規約(NTTモニター参加者向け規約PDF書類)

(損害賠償)

第7条 本モニターの実施にあたって、NTT東日本及びNTTの責めに帰すべき事由により、モニター参加者に損害が生じた場合、NTT東日本及びNTTは直接かつ現実に発生した損害のみ賠償するものとします。但し、次のいずれかに該当する損害は、NTT東日本またはNTTの故意または重過失に基づく場合を除き、NTT東日本またはNTTは一切責任を負いません。

(1)本モニターを実施するにあたり、モニター参加者が第三者に対して与えた損害

(2)モニター参加者の逸失利益に基づく損害

(3)NTT東日本及びNTTの予見できない特別の事情から生じた本ソフトウエア等の誤動作・停止等その他の原因に基づく損害

さすがに、ここまでNTTにとって都合の良いような運営方針では、プライバシーやセキュリティに敏感なユーザーが黙っているわけがなく、我らが高木浩光先生のTwitter投稿などを中心として、ネット上で大きな反論が巻き起こりました。その辺りの経緯はNAVERまとめに詳しいものがあります。もうネット住民はほんとこういうネタ大好きですからね。ボルテージあがりっぱなしです。

要注意!NTTの「インターネットご利用状況調査のモニター募集」が怖すぎると話題に(NAVERまとめ)

結果として、NTTはこういったネット上での世論に対して、同社としてはむしろ異例とも思えるほどの素早い対応をして事態を収拾することができたわけですが、それにしても、NTTはなぜこんな、非常に杜撰なデータ収集の企画を立ち上げたのでしょうね。やはり社内に「乗るしかない、このビッグデータという名前のビッグウェーブに」という空気があって、そこへ「いつやるか? 今でしょう」という誰か偉い人の鶴の一声があって、ノリノリで前へ向かって突進したというところでしょうか。関東軍みたいでかっこいいです。

以前にも「ビッグデータという、99%の事業者には効果の無い話」を書きましたが、ビッグデータは今の時代、ちょっと工夫すれば簡単に収集できてしまうが故に、収集して何かをしたくなる誘惑があるのかもしれません。しかし、やっても意味のないことをしてくたびれもうけで済んでいるうちはともかく、肝心のお客様に不利となるようなことまで平気でやってしまうのは、いかがなものかとしみじみ思った次第です。

もちろん、フォローするわけじゃないですがNTTがやろうとした取り組み自体がいかんという話ではないのです。やはり、効率的なインフラを運営していくにあたって、その検証を行うにたる信頼性あるデータ群を揃えて定点観測することもまた、重要なことだろうと思うからです。

ただ、進め方が企業本位でありすぎ、結果として大きな反発をネットから喰らってしまう結果となったのはまことに残念なことです。調査にはリスクがつきもの、協力してくれるユーザーにも納得できるような方法をとるとNTTとしてはリーガルリスクがあるというところでの二律背反をどう考えるかと言うのは「センス」の問題ですので、今回の失敗を教訓にNTTは畏れず業務改善に取り組んでいって欲しいと切に願います。