新たなネットニュースの標準となるか「ハフィントンポスト日本版」

やまもといちろうです。持病はあるけど今日も私は元気です。

こんな枕詞を置くと煽られるかもしれませんが、インターネットメディアの隆盛に伴い、旧来の新聞やテレビを基幹としたマスメディアにおける報道のあり方が色々と問われるようになった昨今です。とくに日本では、2011年3月11日に起きた東日本大震災が、その大きな転換点の一つになったことは間違いありません。

震災報道で一気に進んだマスメディアとネットの融合(日本経済新聞 2013/3/3)

あの大きな不幸な災害がなければ、もしかすると大手報道メディアはいまだにソーシャルメディアとの連携を真剣に考えるということはなかったかもしれません。そのぐらい、ソーシャルメディアは国民の間の情報インフラとして利用されていて、しかも有用だったのだと思い返さざるを得ませんね。

今後、報道メディアが、とくにネットでビジネス展開するということを考える場合、好むと好まざるとに関わらず、ソーシャルメディアをどう取り込んでいくかが(もしかしたら取り込まれていくのかもしれませんが)、メディア・情報産業生き残りのための大きな課題と感じます。

そういったソーシャルを取り込むという点では、やはり米国の報道メディアが一歩先を行っている感がありますが、その中でもとくに大きな成功を収めているとされるインターネット新聞が「The Huffington Post」です。

“最強ニュースサイト”実現の方程式――Huffington Postをめぐって(Blog on Digital Media 2012/1/26)

2005年にオンライン専業メディアとしてアリアナ・ハフィントン女史らが開設。10年には年商3000万ドルに達し、翌11年には大手メディア企業AOLから約3億ドルで買収されました。買収発表時に同社の年商は約4000万ドル。また、オンラインでの読者リーチという点でも、The New York Times、Mail Online、そしてハフィントンが肉薄しており、創業以来約5年で“最強サイト”へと成長したことになります。

Huffington Postでは、1つの記事に対して5000件以上ものコメントが付くことも珍しくないそうで、まさにソーシャルを上手に取り込んで、読者の購読へのモチベーションを効果的に高めていると考えられます。

そのHuffington Postが、いよいよ日本版を5月7日からオープンする予定であり、編集長には「BLOGOS」や「GREEニュース」を手がけた松浦茂樹氏が就任すると発表されました。

Huffington Post日本版編集長に「BLOGOS」「GREEニュース」手がけた松浦氏(ITmedia 2013/3/6)

海外で成功したネットのビジネスモデルが必ずしも日本で上手くいくとは限らないのは、これまでにも数々の失敗例があることからわかりますが、それだけに、編集長となる松浦氏の手腕には注目せざるをえません。

そんな同氏の人となりと考え方の一片をうかがえる興味深い記事が、TechCrunch Japanに掲載されていました。

Huffington Post日本版の編集長はネットニュース出身者(TechCrunch Japan 2013/3/6)

この記事によると、米国のHuffington Postは読者から寄せられる大量のコメントを「機械的にあるいは人的にカット」することで、ソーシャルな部分にも編集を加えていることがわかります。以下、やや長いですが、松浦氏が日本版で考えているソーシャルへの関わり方を引用します。

彼は食べログのようなユーザー参加型のサイトを例に出しながら、投稿に対して1つ1つそのコメントをどう扱うかをサイト運営の編集チームの業務としたいと考えている。食べログではレストランに誹謗中傷を加えるコメントに対して、ユーザーに修正するように返していると言われている。それによって独特の空間を作っている。さすがに投稿されたコメントに対して意見を変えるようなお願いをユーザーにすることはないだろうが、いいコメントを前面に出したり、積極的に編集スタッフもコメントによる議論に加わったりと、いわゆるCGMのサイト的な運営には注力していきたいということだった。

ソーシャルが抱える問題の一つである「炎上」を、どうコントロールしていくかが、やはりメディア運営のキモであるということでしょう。ネット社会には「炎上」させてメシウマを愉しむ悪質な一部のブロガーもおりますので、気をつけたいところです。

また、松浦氏は、日本で無名なHuffington Postの認知度を一気に上げるための施策として日本版編集長に「小泉純一郎元首相」を提案したという話も面白いですし、ネット以外の世界で影響力を持つ人を巻き込むためには日本での親会社となる「朝日新聞のパワーも利用している」という姿勢はビジネスマンとして大いに頷けるものがあります。

先にあげたBlog on Digital Mediaの記事では、米国版Huffington Postを評して、以下のような表現がされています。

「他社のコンテンツを題材にして稼いでいる」「ブロガーに無償で記事を執筆させている」等の批判や圧力も高まっています。「きれいごとじゃない」(?)同社の事業ですが、その徹底ぶりから逆に現代のデジタルメディアの経営指針を読み取ることもできます。

毀誉褒貶はありつつ、日本での展開がはたしてどうなるのか、今から色々と気になるところではあります。

個人的には、インターネット黎明期にアメリカの最先端雑誌であった「WIRED」を日本に持ってきた小林弘人氏(こばへん)を髣髴とさせます。インターネットカルチャー定番の何だか良く分からないところと、今風の情報交差点の雑踏とをうまく体現できる日本版ハフィントンポストができると面白いと思いますし、逆に面白くなかったら容赦なく叩いて炎上させたあと無視するんだろうなあオーマイニュースとかJANJANみたいに。ああ、私がではなくてネットユーザーが、ですけれども。