これからゲーム機市場はどこへ向かうのか

やまもといちろうです。出張続きでダルいです。

いまさらながらの話ではありますが、ソニーと任天堂の2社が共に、ゲーム機市場で苦戦を強いられている様子が報道されていました。苦戦っつーか、まあ案の定というか、なかなか打開策もないだろうと思う中で、むしろ健闘してるんじゃないかとさえ思うのですが、ただ数字で見ますと大変な感じですねえ。

他人事のように書いておりますが、私の本業のひとつはコンテンツ開発でありまして、ゲーム企画制作や開発も行っている手前、基本的には第三者のように書いてますがあれこれ制約がある、その前提で公開情報をベースに論じてみたいと思います。

ソニーCFO、ゲーム苦戦「今期は値下げ実施せず」(日本経済新聞 2013/2/7)

「プレイステーション・ポータブル(PSP)とPSVitaが思ったほど伸びなかった」と述べ、携帯型の不振を挙げた。

任天堂・岩田社長、進退かけた来期への覚悟(日本経済新聞 2013/1/31)

下方修正された今年3月末までの販売予想は、Wii U本体が従来予想比150万台減の400万台、Wii U向けソフトが同800万本減の1600万本。3DSは本体が同250万台減の1500万台、ソフトが同2000万本減の5000万本。

任天堂は国内市場だけ取り出せば、昨年末に販売されたキラータイトルの「とびだせ どうぶつの森」も好調で盤石なようにも見えますが、Wii Uの苦戦も含めてグローバル市場規模で考えるとなかなかに厳しい状況です。

国内向けキラーコンテンツで市場を牽引するという方法は昔から有効至極であるんですが、では「とびだせ どうぶつの森」のシリーズがゲーム機でないと実現できないようなタイトルか? と問われるとまた微妙で、悩みの深いところであります。スマホでできちゃうじゃん。で、GREEが堂々とパクったりしているわけですね、悲しいことに。

3DS『どうぶつの森』が発売週60万本 + DL版20万本を超える好調、ダウンロードカードの品切れも(Engadget日本版 2012/11/14)

ソニーにいたっては、携帯ゲーム機の販売見通しを前回予想から3割減の大幅な下方修正としています。こちらも、かなりSCE各部門が頑張ってセールスに取り組んでいたように思いますが、キラーコンテンツどころではなく、体制の全面的立て直しを今後余儀なくされる可能性がまた強いです。値下げであったり目玉タイトルだったり広告宣伝の工夫といったところのやりくりで立ち直るのかどうか、業界全体が興味深く見守っている、という状況だろうと思います。

ソニー、携帯ゲーム機販売見通しを3度目の下方修正 700万台に(ITmedia 2013/2/7)

Vita世代交代失敗の代償 SCE、ミリオンタイトル消滅の危機(SankeiBiz/ITmedia 2013/1/8)

ゲーム機販売がここにきてふるわない理由としては、スマホが従来の特に携帯ゲーム機に取って代わって普及しているという話が欧米などでは見受けられます。任天堂が「スマホは競合ではない」というニュアンスの発言をしても誰も耳を貸さないのは、もはや当事者が特定の立場を理由にポジショントークをしても、誰もが携帯用ゲーム機のコンペティターは汎用性の高いスマートフォンだと肌で感じ、選択しているからなんですよね。

スマホに夢中なアメリカンチルドレン 任天堂ゲーム機が振るわない北米市場【デジ通】(ガジェット通信 2013/2/1)

一方、日本国内市場では、従来からのゲーム好きな人達の間では現状のスマホゲームにネガティブな意見も少なくなく、その一番のポイントはやはり操作性ということになりそうです。

ゲーム専用機の唯一最強の強みは、「ゲームに特化した操作系が提供されていること」だと思うのです(不倒城 2012/11/2)

ゲーム機とスマートフォン(トップボーイ蒲田店ゲームな日々 2012/10/14)

もちろん、ゲーム好きからすればこのような議論になるのは分かりますし、理解もできます。スマホの場合、とくにAndroidではOSの特性(Javaベース)なども関係して、どうしても今のままでは長時間のスムーズな動作は実現しにくい点もありますから、アクションゲームでは不利な点も否めないでしょう。

また、プレステを作った張本人の久夛良木健氏に至っては、「スマートフォンの時代は終わる」とまで豪語されていますね……。

「スマートフォンの時代は終わる」 サイバーアイ・エンタテインメント社長兼CEO、久夛良木 健氏に聞く(日経ビジネスオンライン 2013/1/29)

まぁ、このインタビューの骨子は、ゲーム機に限定しない普遍的なネット端末を念頭に置いての話ということでしょうが、これから数年というスパンで考えれば、スマホ有利の時代は続くのではないでしょうか。とくに低迷気味な経済状況の中で、はたして一般消費者がゲーム専用機に高いお金を出せる機会は再び訪れるのかが、ゲーム機メーカーにとって考えなければならない問題の一つなのかなと感じます。

そもそも、PC/AT機が国産NECのフラッグシップPC-9801シリーズを打ち負かしたのも、そんなグローバルな規格に基づいた汎用性の高いPCが専門性では勝るが機能特化していたワープロ機を駆逐したのも、同じゲームルールに基づいて「水が低きに流れた」典型だろうと思います。ゲーム専用の携帯用ゲーム機が通信環境を整えたとしても、より汎用的で拡張性を備えたスマートフォンに勝つことは至難であることは言うまでもないことでしょう。

なので、プラットフォームビジネスや、より単価の高いところでコアファンをしっかり抱えてクオリティとユーザーあたりの利益率の高いプラットフォームビジネスに転換していかなければならないところを、むしろ逆に間口の広いタイトルへの投資を絞ってラインナップ不足に見舞われる、ということではなかなかソフト装着率も上がっていってくれないという事情はあるのでしょう。

そんな中で、4万円を越える価格でソニーが次世代ゲーム機を年内発売するのではないかという噂がネットでまことしやかに流れているのはなかなかに興味深い事態ではあります。いやまあ、実際はそりゃいろいろあるわけですが。

【2ch勢い】プレイステーション4が年内にも発売か。価格は4万超え?(マイナビニュース 2013/2/7)

X-boxも、その次世代機のスペックが推測されるリークが出るなど、据え置き機市場もそろそろリビングに次のハードウェアをどう提供していくかでしのぎを削る展開になるのは仕方のないことかもしれません。

スマホでもゲーム専用機でも企画制作をする業者の立場で言うならば、もはやユーザー体験はいまのUIとグラフィックの両輪をいくらいじってもなかなか向上しません。言うなれば、いつまでも十字キーでゲームしてると思うなよ、ということです。私の三歳児でも、十字キーでゲームするよりもタッチパネルで直感操作できるソフトを好みます。もうこの段階で、スマホやタブレットに軍配が上がってしまう状況である以上、いまゲーム業界、とりわけハードの世界に必要なものは操作系(UI)のイノベーションである、というのは断言できますね。タッチパネルに勝てるUIを実装できるかどうか、その上にどういうゲームのグラフィックが乗りうるのか、真剣に考えるべきだろうと私は思っております。