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ディズニーランドに「スターバックス」 日米ディズニーパークにおけるコーヒーメニューの多様性

山口有次桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
TDL&TDSと米国ディズニーランドのコーヒー販売を独自比較

米国ディズニーパーク内には必ずスタバがある

 熱心なディズニーパークファンは、海外のディズニーパーク内に「スターバックス(以下スタバ)」があることを知っている。米国カリフォルニア州のディズニーランド・リゾート2パークに各1カ所、米国フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの4パークにも各1カ所ある。すなわち、米国のすべてのディズニーパーク内には必ず1カ所スタバがある(それ以外に、香港ディズニーランド内にも1カ所ある)。

 パーク内にスタバが初出店したのは、2012年6月とされる。スタバはスポンサー企業ではなく、ディズニーがスタバとライセンス契約を結び、フランチャイズ店として運営している。あくまでパーク内のカフェでスタバ商品を販売するものであり、一般的なスタバの店舗ではない。

 そこで、東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)、および米国カリフォルニア州のディズニーランド・パーク(DLP)とフロリダ州のマジック・キングダム(MK)について、公式アプリのメニュー情報をもとに、パーク内のコーヒー販売を比較した。この調査手法は、私のゼミの卒業論文を参考にした。

TDLのコーヒー販売店は比較的多い

 最初に、コーヒーを販売する飲食施設(カフェ、レストラン、軽食店、売店)の数は、TDLが比較的多いことがわかる(表1)。各テーマランドには1店舗以上のコーヒー販売店がある。

 TDLは、UCC上島珈琲など8社が約半数の12店、TDSは同じく8社が約半数10店のスポンサー企業となり、コーヒーを販売する飲食施設が運営されている。それに対して米国のDLPやMKは、ほとんどホスト企業がついていない。そして、DLPの4店、MKの大多数でJoffrey’s coffee&Teaのコーヒーを提供している。Joffrey's Coffee&Teaは、米国2カ所のディズニーリゾートと2013年にオフィシャルブランド契約を結びコーヒーを販売している。

表1 コーヒー販売店数と提供・ホスト企業比較

出所:各パークの公式アプリ情報に基づき独自集計
出所:各パークの公式アプリ情報に基づき独自集計

コーヒーの種類はTDLは劣り、TDSは充実

 次に、コーヒーの種類別に販売店舗数を比較した(表2)。TDL&TDSはレギュラーコーヒーとアイスコーヒーが基本構成となっている。米国ではアイスコーヒーは少なく、デカフェ(カフェインレスコーヒー)が比較的多い。そして、特に注目したいのは、TDLのコーヒー販売は種類が少ないこと、TDSは比較的多様なコーヒーが販売されていることである。

 コーヒーを販売している全店の全種類を合計した結果は表3のとおりである。全体的な数はパークごとに大差はないが、レギュラーコーヒーとアイスコーヒーを除くと、TDLが少ないことが際立つ。そして、DLPとMKは、店舗数は少なくても多様なコーヒーを販売する店があり、さらにスタバがあることでコーヒー販売の多様性は大きく向上している(参考データ:多様なコーヒー販売店)。

表2 コーヒー種類別にみた販売店舗数の比較

出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計。スターバックスのコーヒーはメニュー数ではなく種類で分類。
出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計。スターバックスのコーヒーはメニュー数ではなく種類で分類。

表3 コーヒー販売全店のコーヒー種類の合計

出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計。スターバックスのコーヒーはメニュー数ではなく種類で分類。
出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計。スターバックスのコーヒーはメニュー数ではなく種類で分類。

パーク内スタバの多様なコーヒーメニュー数

 最後に、DLPとMKで販売されているスタバのコーヒーメニュー数を集計した(サイズの違いはひとつとカウントした)。フラペチーノは7〜8種類、エスプレッソ&コーヒーは7〜8種類、コールドブリュー(いわゆる水出しアイスコーヒー)は3〜4種類あり、さらにコーヒー以外のスタバオリジナルドリンクを多数揃えている。この多様性がスタバの魅力といえるだろう。

表4 スターバックスのコーヒーメニュー数

出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計
出所:各パークの公式アプリのメニュー情報に基づき独自集計

TDL&TDSのコーヒーメニュー多様化に期待

 以上のように、米国のディズニーパークでは、スタバがあることでパーク内で販売するコーヒーメニューに多様性をもたらしている。TDLとTDSにおいても、多様なコーヒーメニューに対する需要は間違いなくある。一方、TDL開業時からUCC上島珈琲がオフィシャルスポンサーとなり、TDSのスポンサーにもなっている。そして、TDLとTDSにおけるコーヒーの味の評判は総じてよい。コーヒー以外は、オリエンタルランド独自のドリンクブランド「D’s Delights」を2012年から展開している。そのため、TDL&TDSのパーク内でスタバ商品が提供されることはないと見てよい。しかし、販売店数は多いが多様性に劣るTDLのコーヒーメニューをできるだけ増やすこと、TDSのコーヒーメニューの多様性をさらに向上させることが必要と考える。TDLとTDSがスタバに匹敵する多様なコーヒーの魅力を発揮することを期待する。

参考データ:多様なコーヒー販売店(提供・ホスト企業または提供商品)

  • TDL:センターストリート・コーヒーハウス(UCC上島珈琲提供)
  • TDS:テディ・ルーズヴェルト・ラウンジ(キリンビール/キリンビバレッジ提供)、リストランテ・ディ・カナレット、カフェ・ポルトフィーノ(UCC上島珈琲提供)
  • DLP:マーケット・ハウス(スタバ商品提供)、ジョリー・ホリデー・ベーカリー・カフェ
  • MK:メインストリート・ベーカリー(スタバ商品提供)、ジャングルナビゲーション・スキッパー・キャンティーン(Joffrey’s coffee&Tea商品提供)、トニーズ・タウンスクエア・レストラン(Joffrey’s coffee&Tea商品提供)

参考文献:若林明日香:世界のディズニーランドにおけるフード施設の傾向、2021年度桜美林大学ビジネスマネジメント学群卒業論文、2022.01

桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年より桜美林大学ビジネスマネジメント学群助教授、准教授を経て、2009年より現職。専門分野は、レジャー産業、レジャー施設、レジャー活動。1990年から『レジャー白書』の執筆に携わる。近年はアジア諸国のレジャー活動状況調査を実施し発表。単著『新 ディズニーランドの空間科学 夢と魔法の王国のつくり方』『観光・レジャー施設の集客戦略 利用者行動からみた“人を呼ぶ魅力的な空間づくり”』、共著『「おもてなし」を考える 余暇学と観光学による多面的検討』『観光経営学』『観光学全集 観光行動論』等。レジャー施設に関する論文多数。

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