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米アップルの普通預金「年4.15%」が話題に なぜそんなに高い?

山口健太ITジャーナリスト
アップル普通預金が話題に(アップルのプレスリリースより、筆者撮影)

4月17日(米国時間)、アップルが米国で提供している「Apple Card」の利用者向けに、普通預金口座のサービスを始めることを発表しました。

その金利は「年4.15%」となっており、日本から見れば高く感じますが、米国ではそれほど珍しいものではないようです。

普通預金「年4.15%」は珍しくない?

Apple Cardはアップルが2019年3月に米国で発表したクレジットカードで、金融大手のゴールドマン・サックスと組んで提供しています。

特徴としてはiPhoneとApple Payに最適化されており、申し込みや発行、利用明細の確認がiPhone内で完結。Apple Payで使うと2%の現金キャッシュバックを受けられます。

そのApple Cardの利用者に向けて、新たに始めるのが普通預金口座(Savings account)サービスです。

実体としてはゴールドマン・サックス銀行の支店に口座が作られるとのことから、電子マネーなどではなく、預金保険の対象になる正規の銀行口座といえます。

この普通預金の金利は、4月14日時点で年4.15%とのこと。アップルはこれが全米平均の10倍以上であることを強調しています。

日本から見ればかなりの高金利に感じるところですが、現在の米国ではそれほど珍しいものではないようです。これはインフレ対策として政策金利を引き上げているためで、現在は4.75〜5.00%に達しています。

とはいえ、こうした状況下においても、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカといったメガバンクの金利は「0.01%」です。

最近の金融危機ではこれらのメガバンクに多くのお金がなだれ込んだように、預金は十分にあるので金利を上げる必要はない、という空気が感じられます。

米国でもメガバンクの普通預金金利は低い(BankrateのWebサイトより)
米国でもメガバンクの普通預金金利は低い(BankrateのWebサイトより)

一方、地方銀行やネット銀行など小規模な金融機関を中心に、4%台の高い金利をうたう普通預金(high-yield savings account)があります。

その間で微妙な立ち位置にいるのがゴールドマン・サックスです。投資銀行としては名高いものの、2016年に鳴り物入りで始めた個人向けサービス「Marcus by Goldman Sachs」は苦戦が続いています。

そこで、高金利のサービスで顧客を惹き付けようというわけですが、Marcusの普通預金金利は3.9%であることから、アップルが提供する4.15%はそこに何らかの上乗せをしているのではないか、との指摘があります。

また、米国で高い金利を得るには最低口座残高などの条件が課せられるものがありますが、アップルの普通預金ではMarcusと同様にそうした条件がないことも魅力です。口座の上限は25万ドルで、これは米国の預金保険でカバーされる上限と同じ金額です。

2023年1月には、ゴールドマン・サックスの個人向け事業などが3年間で30億ドルの損失を出していることが明らかになりました。今後の選択肢が注目される中、アップルとの事業は逆に強化するという点も、このニュースの見どころといえそうです。

日本で高金利を得るには?

Apple Cardは米国在住者向けのサービスで、日本ではまだ提供されていません。ただ、日本でも米ドルを持っていれば高金利の恩恵を受けられます。

たとえば銀行の外貨定期や、証券会社の外貨建てMMFでは、4%台の金利をうたっているものがあります。現在はソニー銀行が6か月の米ドル定期預金で年8%というキャンペーンを実施中です。

ただ、ここにはいくつか注意点があります。ネット銀行では抑えめとはいえ、日本円から米ドルに交換する際にはスプレッドが発生します。

最大のリスクは為替変動です。外貨定期の金利では「2年」以上のものが低めに設定されているように、米国でインフレが終われば利下げに転じ、円高・ドル安になる可能性があります。

2年以上は金利が大きく下がっている(住信SBIネット銀行のWebサイトより、筆者作成)
2年以上は金利が大きく下がっている(住信SBIネット銀行のWebサイトより、筆者作成)

仮にコロナ前の1ドル=110円程度の水準まで円高が進んだ場合、現在と比べて20%近い損失になり、これを預金の利息だけで取り戻すには何年もかかる可能性があります。いまからドルを買う場合、この点を考慮したほうがよいでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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