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意外な場所に表示 au PAY「重要なお知らせ」

山口健太ITジャーナリスト
意外な場所に「重要なお知らせ」(筆者撮影)

3月中旬ごろから、iPhoneに登録した「au PAYプリペイドカード」が、意外な場所にお知らせを表示するようになりました。

カードの券面に注意書きを直接表示するのはかなり珍しいと思われますが、どのような経緯で実現に至ったのか、運営会社に聞いてみました。

表示にあたって「関係各社」と調整

au PAYプリペイドカードは、KDDIのスマホ決済「au PAY」の残高をそのまま使えるプリペイドカードです。iPhoneに登録して使える「Apple Pay」にも対応しています。

しかし3月中旬ごろから、Apple Payのカード画面に「重要なお知らせ」が表示されるようになり、ユーザーにちょっとした驚きを与えています。

重要なお知らせの内容(Apple Payの画面より、筆者作成)
重要なお知らせの内容(Apple Payの画面より、筆者作成)

複数のカードが重なる「ウォレット」画面でも目立っている(Apple Payの画面より、筆者作成)
複数のカードが重なる「ウォレット」画面でも目立っている(Apple Payの画面より、筆者作成)

KDDIの説明によれば、4月30日(予定)までにカードをいったん削除し、再設定する必要があるとのこと。再設定をしない場合、利用できなくなるとしています。

3月1日午後6時以降にApple Payに登録した人の場合、この再設定は不要です。また対象はプリペイドカードのみで、クレジットカードのau PAYカードでは再設定の必要はないとのことです。

再設定が必要になる理由として、KDDIのWebサイトでは「Mastercard社のネットワーク接続方法変更に伴うもの」と説明されています。

いったい何が起きているのか、KDDIは次のように説明しています。「Mastercard社のシステム変更に伴い、Apple Payのシステム提供会社側でネットワーク接続のシステム変更を行うことが決定され、KDDIとしてもシステム提供会社の方針に従うこととしたため、今回の変更となりました」(KDDI広報部)

また、それ以上に気になるのが、Apple Payのカードに注意書きを直接表示するという手法です。こういう表示はかなり珍しく、少なくとも筆者はこれまでに見たことがありません。

一般に、アップルは画面のデザインに一定のガイドラインを設けており、各事業者はそれに従ってiPhoneやiOSの雰囲気に合うようにカードをデザインする必要があると考えられます。

しかし、もしカードの券面にどんな情報でも載せられるのであれば、キャンペーン情報やおすすめ商品、広告などを表示することも可能ではないかと思えてきます。

一方で、各社がそれをやり始めると、Apple Payの画面がごちゃごちゃして見づらくなるといった弊害が起きることも容易に想像できます。

このような表示方法を採用した経緯についてKDDIに聞いてみたところ、次のような回答がありました。

「今回、au PAY プリペイドカードにおいてApple Pay再設定の対象となるお客さまが多数いらっしゃり、再設定をしない場合の影響も大きい(一定期間経過後にApple Payをご利用いただけなくなる)と判断したことから、弊社からの提案で、カード画像に注意書きのような形で重要なお知らせを掲載することといたしました。掲載にあたっては、アップル様含め関係各社さまの許可をいただいております」(KDDI広報部)

つまり、今回のケースについては関係各社から許可を取るなどの手順を踏まえた上で、実現したものといえそうです。

多くのユーザーが再設定を強いられるというのは何とも手間がかかる話ですが、KDDIでは再設定の促進にあたって、その期間にあわせて最大10万ポイントが当たるキャンペーンを実施したとしています。

残高の使い道を広げるプリペイドの存在

ポイント還元率としては0.5%を維持しているものの、他の電子マネーなどへのチャージ時のポイント還元は廃止されつつあります。3月13日からは新たに「B/43」も対象外となりました。

他社決済サービスへのチャージ分(Apple Pay、Google Pay経由のチャージ含む)「モバイルSuica」「モバイルPASMO」「nanaco」「WAON」「Revolut」「B/43」「モバイルICOCA」はポイント加算の対象外です。

https://www.au.com/payment/prepaid/

ただ、キャッシュレスの決済手段として、「コード決済」や「プリペイドカード」の選択肢は多数あるものの、au PAYのように両方対応しているのは意外と少ないのが現状です。

コード決済だけでいえば国内ではPayPayが先行していますが、残高をMastercardやQUICPayの加盟店で、またApple Payのアプリ内決済などにも使える点を考慮すれば、au PAYは意外と健闘している印象です。

au PAY残高を持つことの価値を考える場合、使い道が多いに越したことはないでしょう。このあたりは、4月から解禁される「給与デジタル払い」でも注目ポイントになると筆者は考えています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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