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KDDI通信障害でお詫び返金「200円」の根拠は?

山口健太ITジャーナリスト
返金について説明するKDDIの高橋誠社長(会見のライブ配信より)

7月29日、KDDIが通信障害についてユーザーへの補償を発表しました。約款に基づく返金に加え、税抜200円の「お詫び返金」を実施します。200円にはどのような根拠があるのでしょうか。

約款に基づく返金に加え、お詫び返金を実施

KDDIの説明によると、通信障害が発生したのは7月2日の午前1時35分から7月4日15時までの61時間25分。影響エリアは全国、影響数は音声通話が約2278万人、データ通信が765万人以上とのことです。

その補償としては、「約款に基づく返金」と「お詫び返金」の2種類が発表されました。

約款に基づく返金に加え、「お詫び返金」も(KDDI提供資料)
約款に基づく返金に加え、「お詫び返金」も(KDDI提供資料)

まず、通信障害が発生した場合の返金については「約款」に定められています。これは「24時間以上連続してすべての通信サービスを利用できなかった場合」で、今回は音声通話が該当するといいます。

具体的には、音声通話のみのプランを契約している271万人を対象に、基本使用料等の2日分を返金(請求額から減算)します。1日あたりの平均額は52円としています。

筆者は3日分と予想していたのですが、約款に基づいて厳密に計算すると、61時間の障害は24時間が2回で2日分とカウントするようです。

ただ、これではデータ通信を含むプランの契約者など、大多数のユーザーが対象外となってしまいます。そこでKDDIはスマートフォンや携帯電話の契約者3589万人を対象に、税抜200円の「お詫び返金」も実施します。

200円の根拠については、約款上に定めはないため悩んだとのことですが、約款に基づく返金(1日平均52円)をベースに、61時間の障害を(約款よりも多い)3日分とカウントして156円、そこに上乗せをして200円にしたと高橋誠社長は説明しています。

なお、povo2.0は基本使用料が0円であることから、返金の代わりに1GB/3日間のデータトッピングが付与されます。

200円では納得できないという意見も多数ありそうですが、約款上の義務ではなく、また対象者が3589万人と膨大であるため、業績に与える影響はKDDIが73億円、沖縄セルラーを含めると75億円という規模になっています。

この金額は、(ユーザーの料金に転嫁するようなことはせず)社内でのコスト削減などの経営努力によって吸収していくとのことです。

返金を装うフィッシング詐欺に注意

返金についての案内はWebサイトだけでなく、7月30日以降の新聞各紙にも掲載。8月中旬以降には、対象となるユーザーにSMSによるメッセージを送信し、実際に返金されるのは9月以降となっています。

返金について新聞各社やSMSでの案内も(KDDI提供資料)
返金について新聞各社やSMSでの案内も(KDDI提供資料)

ここで注意したいのが「SMS」です。今回の返金に便乗して、KDDIからのメッセージを装ったフィッシング詐欺が横行する恐れがあります。

こうした詐欺では、メッセージに偽サイトへのURLが含まれており、そのリンクを開かせるような形式が想定されます。そこでKDDIが送信するSMSには「リンク先のURLを記載しない」「お客様情報の入力を求めない」としています。

もし今回の返金についてリンク付きのSMSが送られてきたら、間違って開かないように注意しましょう。

緊急時の回避策は実現するか

今回の障害を振り返ってみると、ネットワーク管理の現場でありがちな問題をきっかけに、携帯電話インフラの特性も相まって、全国的に障害が広がったことがうかがえます。

以前のNTTドコモが引き起こした障害と同様に、KDDIに特有の問題というよりは、どの携帯キャリアであっても同様の問題を起こす可能性がある印象を受けます。

KDDIには再発防止を求めつつも、今後もこうした問題が絶対に起きないとは限らず、万が一発生した場合には、緊急時の通報ができないなど社会全体に多大な影響が及ぶことになります。

KDDIが発表した再発防止策(KDDI提供資料)
KDDIが発表した再発防止策(KDDI提供資料)

そこで総務省は、緊急時に他キャリアにローミングする仕組みについて検討しようとしています。もし問題が起きた場合でも最悪の事態を防げるような回避策は用意できるか、注目が集まりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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