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伸び悩む「マイナンバーカード」 携帯ショップ対応や新CMで加速するか

山口健太ITジャーナリスト
7月27日からは携帯ショップで申請サポート(プレスリリースより、筆者撮影)

マイナンバーカードの普及に向けた新たな施策として、7月27日から携帯ショップでの申請サポートや新テレビCMの放映が始まります。普及率はまだ5割に達していない状況ですが、持っていない人を動かすことはできるのでしょうか。

携帯ショップでも申請サポート開始

総務省が公開している資料によると、マイナンバーカードの交付枚数は2022年6月末時点で5700万枚を突破。日本の人口1億2665万人に対して、普及率は45%となっています。

2021年1月からの交付枚数をグラフにしてみると、たしかに順調に伸び続けているようにみえます。

マイナンバーカードの累計交付枚数(総務省の資料より、筆者作成)
マイナンバーカードの累計交付枚数(総務省の資料より、筆者作成)

ただ、その伸びが緩やかになっていることも事実です。上のグラフから、単純計算で月別の枚数を計算してみると、2021年10月以降は低迷していることがうかがえます。

マイナンバーカードの月別の交付枚数(総務省の資料より、筆者作成)
マイナンバーカードの月別の交付枚数(総務省の資料より、筆者作成)

総務省のデータは6月末で終わっていますが、その直後には「マイナポイント第2弾」の申請が始まりました。初速は好調とのことでしたが、ここから再び勢いを取り戻せるかどうか期待がかかります。

さらに、総務省は新たな施策も投入しています。7月26日からは、カードを持っていない5500万人を対象にQRコード付きの交付申請書を「再々送付」。これに関連した新しいテレビCMも放映するといいます。

7月27日からは携帯ショップでの申請サポートが始まります。NTTドコモKDDIソフトバンクの全国約8000の店舗が対象となっており、「UQスポット」や「ワイモバイルショップ」も含まれるとのことです。

携帯ショップでの申請サポートは無料。申請書を持ち込む以外に、手ぶらで来店してもOK。所要時間は10分程度で、携帯電話契約の有無に関係なく誰でも利用できるなど、幅広い受け入れ体制となっています。

注意したいのは、携帯ショップでできるのは「申請」のみで、カードを受け取る際には市区町村窓口などを訪れる必要がある点です(市区町村窓口で申請した場合は郵送で受け取る方法もあります)。

この手間が普及に向けたハードルになっている印象はあるものの、マイナンバーカードは重要な身分証明書となることから、やむを得ない面はあるようです。

ポイント以外の魅力はあるか

マイナンバーカードのICチップ内には電子証明書が入っており、デジタルの身分証明書として機能します。技術的にはスマホに搭載できるもので、米国では一部の州で始まっています。

カードを普及させるにはコストがかかりますが、行政手続きなどのデジタル化を進めることで長期的には元が取れると考えられます。事務処理を効率化できれば、困った人の支援など、人間にしかできない仕事に人員を割けるようになります。

一方、現時点でのマイナンバーカードはそれほど有用なものではなく、定期的にe-Taxなどを利用している人を除けば、メリットが少ないとの声もあります。

2023年3月末までにほぼすべての国民に普及させるとの目標に向け、ポイントやCMなどで普及を図ろうとしているのが現状ですが、本質的には誰もが自発的にカードを持ちたくなるような利便性向上が期待されるところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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