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「返礼品なし」も増加。おトクだけじゃない、ふるさと納税の魅力

山口健太ITジャーナリスト
返礼品のないふるさと納税が増えている(ふるさとチョイスのサイトより)

12月15日、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」とメルペイが、若年層の利用を促す連携強化を発表しました。毎年おトクな「返礼品」が注目されがちな制度ですが、最近は「返礼品なし」のふるさと納税も増えているといいます。

総務省の調査によれば、ふるさと納税は法改正が行われた2019年にやや落ち込んだものの、コロナ禍に突入した2020年は金額・件数ともに過去最高を更新。2021年も盛り上がりが期待されます。

ふるさと納税の推移(総務省 令和3年度ふるさと納税に関する現況調査より)
ふるさと納税の推移(総務省 令和3年度ふるさと納税に関する現況調査より)

2008年に始まったふるさと納税は、地元を離れて都市部などで働く人が生まれ育った自治体に「寄付」をすることで税収格差を是正することが狙いとされ、当初は「返礼品」の概念はなかったといいます。

最初は手紙によるお礼だけだったのが、特産品を送る競争に発展し、Amazonギフト券など自治体とは関係のない返礼品が増加。2019年の法改正により、返礼品の割合は3割以下、地場産品に限るといったルールが定められました。

ふるさと納税における返礼品について、ふるさとチョイスを運営するトラストバンク 広報渉外部部長の宗形深氏は、「おトクさで寄付を集めるものではなく、地場産業を発展させ、寄付者に地域を知ってもらうツールにしたい」といいます。

そこで必要になってくるのがマーケティングです。宗形氏は「地方交付税ではなかなか発展につながらなかった。ふるさと納税を通じて地域の魅力を発掘し、地域の外に向けてブランド化していく。そうした成功体験が地域活性化に重要だ」と指摘します。

また、ふるさとチョイス自身も事業者支援に取り組んでいるとのこと。12月末まで、寄付金額の0.5%(上限5000万円)をコロナ禍で打撃を受けた事業者や生産者に届けるプロジェクトを展開しており、参加者にはオリジナルのNFTアートを配布しています。

コロナ禍で「返礼品なし」のふるさと納税が増加

コロナ禍で起きている変化として、地域や事業者を支援することを目的とした「返礼品なし」の寄付が増えているとのこと。ふるさとチョイスへの登録件数ベースでは、「感謝状」のみのふるさと納税が昨年比で1.8倍になったとしています。

コロナ対策に支援できる寄付の例(ふるさとチョイスのサイトより)
コロナ対策に支援できる寄付の例(ふるさとチョイスのサイトより)

その背景には、エコや地域貢献など政治参画意識の高い若者が増えていることがありそうです。若年層の利用が多いメルペイでは、加盟店の中でふるさとチョイスが上位10社に入っているとのこと。その中で「返礼品やおトクさだけでなく、地域支援に傾向が変化しているのではないか」(メルペイ PRマネジャーの宮本祐一氏)と指摘します。

ふるさと納税は所得に余裕のある層の利用が多く、年齢層は比較的高いとみられるものの、これを若年層にも広げていきたいというのが両社の狙いです。「寄付が多い年と少ない年があると、地場産業は経営が危うくなり、子ども支援では教育に使えるお金を平準化できなくなる。若い世代を含めた関係・交流人口を増やすことで持続的に発展させたい」(宗形氏)といいます。

地域支援を目的としたふるさと納税は、まだ返礼品のなかった創設当初の姿に近いものを感じます。おトクさだけでなく、さまざまな目的でふるさと納税をする人が増えることによる多様化が重要といえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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