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30分以内に配達「Qコマース」、日本で本格普及するか

山口健太ITジャーナリスト
Woltが札幌でQコマースに参入(Wolt提供画像)

コロナ禍で急速に一般化したフードデリバリーに続き、食事以外の分野でも即時配達のニーズが高まっています。30分以内の配達をうたう「Qコマース」が世界的に盛り上がる中で、日本市場への参入が相次いでいます。

Eコマースは1日〜数日での配達が基本になるのに対して、30分〜1時間以内の即時配達を実現するのがQコマース(Q=Quick)の特徴です。

国内のQコマース事業としては、フードデリバリーのfoodpanda(フードパンダ)が2021年7月に神戸で開始。11月からは東京・渋谷でも始まりました。8月には「10分で届く」をうたうスタートアップ企業OniGo(オニゴー)が東京・目黒区でサービスを開始。12月からはフィンランド発のWolt(ウォルト)が札幌でQコマースに参入します。

従来のフードデリバリーにおいても、日用品や医薬品を取り扱う事例はありました。さらにQコマースでは専用の配送拠点として「ダークストア」を置く事例が増えています。これは一般客向けに開かれている商店とは異なり、配送専用の倉庫のような位置付けの店舗で、「マイクロフルフィルメントセンター」との呼び方もあります。

配送専用のダークストアの様子(foodpanda提供画像)
配送専用のダークストアの様子(foodpanda提供画像)

Qコマースが注目される背景には、コロナ禍で広まったデリバリー体験があります。アプリで注文すると数十分で食事が届くことに慣れてきた消費者が、食事以外の買い物についても同じように届けてほしいと考えるのは自然な流れといえます。

また、フードだけでは特定の時間帯に注文が偏るのに対し、取り扱う品目が広がれば需要が平準化されます。働く時間の自由度が高まることで「空き時間に働ける」など報酬以外の魅力が高まると考えられます。

ビジネス面では競争の本質はソフトウェアといってよいでしょう。ユーザーや配達員向けアプリの作り込み、人工知能(AI)による配送ルートの効率化など、ソフトウェアが利益を大きく左右するのはフードデリバリーと同様です。

米国の1000都市に展開するGopuffには、AI企業に投資するソフトバンク・ビジョンファンドが出資。AIを用いて人気商品のみに在庫を絞り込み、配送ルートや配送拠点を最適化することで大きな利益を生んでいるといいます。

Gopuffについて語るソフトバンクグループの孫正義社長(ソフトバンクグループ2021年度3月期 決算説明会より)
Gopuffについて語るソフトバンクグループの孫正義社長(ソフトバンクグループ2021年度3月期 決算説明会より)

Eコマースの配送も加速する?

食料品や日用品の配送にはネットスーパーも人気があります。しかし、たとえばイオンでは13時や15時といった当日配達の締め切り時間があるのに対し、Qコマースはもっと気軽に注文できるコンビニのような存在になろうとしています。

一方で、当日配達を強化するEコマース事業者も出てきています。アマゾンは生鮮食料品などを取り扱う「Amazonフレッシュ」を7月に強化。ライフなどのスーパーと提携したサービスを含め、注文から最短2時間での配達を実現しています。

Amazonフレッシュは最短2時間で配達する(アマゾンジャパン提供画像)
Amazonフレッシュは最短2時間で配達する(アマゾンジャパン提供画像)

さらに11月22日にアマゾンは「当日便」を強化。すでに東京23区は当日の配達に対応していましたが、品川区と世田谷区を除く21区では「午前」と「午後」の2つの締め切りを設けることで、配達時間を予想しやすくなりました。商品数はQコマースの数千点程度に対して最大150万点とはるかに多く、Amazonプライム会員なら配送料は無料というのも強みです。

ほかにもYahoo!ショッピングはヤマト運輸と組んで最短で当日に、カメラ量販店も独自に当日配達のサービスを提供しています。Qコマースの登場を背景に、Eコマースの配達スピードがさらに加速していくのか注目しています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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