大阪大学が太鼓判! 人畜無害でコロナを殺す“魔法の水”が大ブレイク 

東京・大手町で行われた「MA-T産業創造戦略会議」設立記者発表会

新型コロナ対策の“切り札”が登場か?

「MA-T」(マッチング・トランスフォーメーション・システム)という名前の水溶液をご存知だろうか? 別名「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液」という。と言っても何のことかわからない人がほとんどだろう。実はこの水溶液、新型コロナウイルス感染予防の切り札になるかもしれないと、いま注目度が急上昇中のシロモノなのだ。

 室内の抗菌コーティングなどに使われる光触媒を開発していたエースネットという会社の高森清人社長らが1993年から約17年にわたって研究を続け、2010年に触媒によって酸化反応を制御できる技術を確立したことで誕生した。と言っても、まだ何のことだかわからないと思う。ひとことで言うと、今までにない「革新的な消毒剤」ができたのだ。いや、あまりに画期的なので“魔法の水”と表現した方がいいかもしれない。

 MA-Tは、水にごく少量の亜塩素酸イオンを混ぜた水溶液で、亜塩素酸イオン(水性ラジカル)が菌やウイルスを攻撃する。最大の特長は、普段は水とほぼ同じ性質を持ちながら、攻撃すべき菌やウイルスの存在を察知した時だけ、“敵”の量に応じて亜塩素酸イオンが生成されるということだ。2015年に大阪大学の研究によって、この仕組みが解明された。

赤ちゃんからシニアまで使え、口に入れても安全

 水とほぼ同じということは、要するに人体への影響がほとんどないということだ。アルコールや次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウムといった主要な消毒剤は殺菌効果と安全性がトレードオフの関係にある。殺菌効果を強くしようとすると、人体への何らかの悪影響があり、逆に人体への影響を減らすと、肝心の殺菌効果が減じるといった具合だ。

 ところがこのMA-Tは、そんな心配がいっさいいらない。強い殺菌効果がありながら、無色無臭無刺激でアルコールのような揮発性もなければ引火性もない。何度手を洗っても肌荒れしない。次亜塩素酸は不安定で分解しやすい物質だが、MA-Tは非常に安定していて常温で10年の長期保存試験をクリアしている。亜塩素酸イオンの配合率を変えることで一般的な除菌剤はもちろん、化粧品やマウスウォッシュとさまざまな用途に使える。口に入れても平気なのだ。

 ちなみに、MA-Tが「システム」と名付けられているのは、配合率によって性質(酸化の強さ)をコントロールできるからだ。それによって、単なる消毒剤の域を超えて、大袈裟でなく世の中を変える可能性を秘めているとさえ言われるのだが、それについては後述する。

 いずれにせよ、そんな便利な消毒剤がなぜ開発から10年間もブレイクしなかったのか。実は、アルコールのような可燃性がないことから、すでに航空機、空港、ホテルなどで除菌・消臭剤として広く使われていた。ANAもJALも、使っている。しかし、供給量や生産コストの問題などがあって広く一般向けというよりもBtoB(企業向け)にとどまり、その市場規模も約10億円と大きくなかった。

新型コロナを99.9%消毒できることが実証された!

 ところがそれが、予期せぬ新型コロナウイルスの蔓延で取り巻く環境ががらりと変わった。協力関係にある大阪大学の研究によってすでにMA-TがインフルエンザやSARS、MARSなどの消毒に有効であるとされていたが、今年5月、新型コロナウイルス(COVID-19)についても99.9%消毒(不活性化)できると実証され、一躍脚光を浴びることになったのだ。

 MA-Tは新型コロナウイルスに対する「強い効果」と「高い安全性」を両立させたまったく新しい消毒剤として知られるようになる。さらに、原材料がすべて国産であることもポイントのひとつとされた。なぜなら、パンデミックで国境が閉鎖されると輸入比率の高いアルコールは品薄になる可能性がある。だが、原料が国産ならばその心配がなくなるからだ。

 6月には、殺虫剤メーカーとして知られるアース製薬、大阪大学発ベンチャーのdotAqua、そしてエースネットの3社の包括業務提携が発表された。これによって、当時5000円台~6000円台だったアース製薬の株価が7500円まで跳ね上がった。直近も7950円(9月28日終値)と高値を維持したままだ。

MA-Tビジネスは、果たしてどこまで広がるか?
MA-Tビジネスは、果たしてどこまで広がるか?

 こうした流れを受けて9月28日、「MA-T産業創造戦略会議」の設立が発表された。一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が中心となり、医療、化粧品、エネルギー、素材、環境、自動車などMA-Tを使った製品やサービスの開発を狙う企業約20社とそれぞれの分野の専門家で構成され、MA-Tの社会実装のためのさまざまな提言などを行うという。

【参考サイト】レジリエンスジャパン推進協議会

 エースネット、アース製薬、dotAqua、大阪大学の4者はMA-T技術を独占するのではなく、基本技術の研究開発、素材提供の立場で関わるという。要は、アース製薬が原料となるMA-Tを使いたい企業に供給して、世の中への普及をはかろうということのようだ。

実は、単なる消毒剤ではなかったMA-Tの正体

 戦略会議と並行して、MA-Tを使用する製品・サービスを展開する事業者のネットワークとして日本MA-T工業会も発足する。同工業会が定めた基準に適合する商品をオフィシャル認証する「MA-T JAPAN認証」制度を設けるという。粗悪な類似品が出回ることを防ぐ狙いがある。

認証第一号商品に選ばれたマンダムの「MA-T Pure」11月上旬発売予定だ
認証第一号商品に選ばれたマンダムの「MA-T Pure」11月上旬発売予定だ

 単なる消毒剤の普及にしてはなんとも大袈裟に見えるが、実はそこには大きな理由がある。MA-Tの持つ可能性だ。

 これまでの研究によって、MA-T技術を応用すれば、例えばメタンをエネルギーを使わずに液体であるメタノールに転換したり、全固体電池であるマグネシウムイオン電池の耐久性を40倍にしたり、リチウムイオン電池の容量を3倍にしたりと、医療、エネルギー、ライフサイエンス、素材、環境、レジリエンスなど広範な分野で“世の中を変える”可能性が期待されているのだ。

 医療従事者がアルコール消毒液で手荒れの心配がなくなるといったレベルの話ではないようだ。

 戦略会議設立の記者発表に出席した東京工業大学特命教授・先進エネルギーソリューション研究センター長の柏木孝夫氏は「ひさびさに出た、日本発の大型基盤テクノロジーだ」と語っていた。

 しかしもし、新型コロナ禍がなかったら、こんな急展開はなかったかもしれない。世の中、何が幸いするかわからないものである。

(写真はすべて筆者撮影)