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2020箱根駅伝 “厚底”に履き替えた青山学院大が優勝奪還/ナイキ着用率はナント84.3%に急増!

山口一臣THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)
今年、アディダスからナイキに履き替えて優勝を奪還した青山学院大(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

ほとんど全員が“ナイキの厚底”なんじゃないか?

 正直、もうこの話題は書かないつもりだった。「ナイキの“厚底”が席巻」という記事だ。2018年の東京マラソンで設楽悠太選手(Honda)が日本記録を更新して以来、「マラソン界の常識を覆した革命的シューズ」「記録を伸ばす革命的シューズ」などと何度も書いてきたからだ。2019年の箱根駅伝でも、区間賞の70%が“ナイキの厚底”だったこと、着用率が全選手の約41%だったことを速報した。昨秋のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では男子30人中16人が「ピンクの靴」だったことも指摘している。もう、“ナイキの厚底”の凄さは書き尽くしたつもりだった。

〈参考記事〉マラソン界の常識を覆した革命的シューズ 「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%」の実力

〈参考記事〉箱根駅伝 なんと区間賞の70%を“厚底シューズ”が叩き出していた!

〈参考記事〉トップランナーがこぞって着用 ピンクの厚底シューズ 「ヴェイパーフライ ネクスト%」は何がすごいのか?

 しかし、書かざるを得ない。今年の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)は、いやもっと言うと元日のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走大会)も含めて“ナイキの厚底”の席巻ぶりは、いままでの比ではなかった。ほとんど全員が履いているのではないかと見まがうほどだったのだ。

「ピンクの靴」を履いてMGCで優勝した中村匠吾選手=富士通=(写真:NIKE)
「ピンクの靴」を履いてMGCで優勝した中村匠吾選手=富士通=(写真:NIKE)

参加210選手のうちなんと177人がナイキを履いていた!

〈陸上競技の好記録情報や話題をひたすらツイート〉している熊田大樹さん(@athletekuma)が1区~3区までの選手のシューズを速報してくれていた。それによると、1区でナイキ以外のシューズを着用していたのは、帝京大(ニューバランス)と日大(ミズノ)だけ。2区は早大(アシックス)のみ。3区は帝京大(ミズノ)、法政大(アディダス)、拓殖大(ニューバランス)、神奈川大(アディダス)、早大(ニューバランス)といった具合だ。

 これは大変なことになるぞと思っていたら、最終的に私の元へ入ってきた情報によると、参加210選手中、177人(往路87人、復路90人)が“ナイキの厚底”を履いていたという。着用率なんと84.3%だから、ザックリ言うと昨年と比べて倍増で、ほとんどすべての選手といっても過言ではない。しかも、見ていた人はお分かりの通り、今年の箱根駅伝は区間新記録が続出だった。そのうち10区を除く区間賞と新記録はすべて“ナイキの厚底”が叩き出したものだった! こりゃ凄いわ。凄すぎる。一応、明記しておくと、以下の通りだ。

6つの区間新記録を叩き出した“ナイキの厚底”

1区 米満玲選手(創価) 1:01:13

2区 相澤晃選手(東洋) 1:05:57 新記録

3区 イエゴン・ヴィンセント・キベット選手(東国大) 0:59:25 新記録

4区 吉田祐也選手(青学) 1:00:30 新記録

5区 宮下隼人選手(東洋) 1:10:25 新記録

6区 館澤亨次選手(東海) 0:57:17 新記録 

7区 阿部弘輝選手(明治) 1:01:40 新記録

8区 小松陽平選手(東海) 1:04:24

9区 神林勇太選手(青学) 1:08:13

 ここまで浸透した背景には、世界中で「記録を塗り替える」結果を出し続けたことがあると思う。2017年のデビュー以来、着用した多くのトップアスリートの声やデータの蓄積によって改良が重ねられことも大きい。現在のモデルは3世代目の「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」だ。詳しい性能については、過去記事を参照して欲しい。

〈参考記事〉ロンドンマラソン上位独占! ナイキの“新厚底シューズ”が鮮烈デビュー

2019ロンドンマラソンの上位選手のすべてが新作の“厚底”を履いていた(写真:NIKE)
2019ロンドンマラソンの上位選手のすべてが新作の“厚底”を履いていた(写真:NIKE)

青学大の選手もアディダスからナイキに替えていた

 もうひとつは、ユニフォームなどでサポート契約している大学の選手も「シューズはナイキ」という流れになったことがある。その典型が、王者奪還を目指して往路優勝を決めた青学大だろう。青学大はこれまで大半の選手がアディダスを履いていたが、今年からナイキが“解禁”になり、往路の全選手が“厚底”を履いていた。テレビを観ているとわかるが、他のメーカーのウエアを着ていても足元が“ナイキの厚底”という選手がけっこういる。

 面白いのがシューズの色だ。最新モデルのネクスト%は、ライトグリーンでデビューし、MGCでは鮮やかな「ピンクの靴」がお披露目され、以来、「ピンクの靴」がネクスト%の代名詞になっていた。毎日新聞などは最近、3回も「ピンクの靴」の記事を書いていた。だが、よく見ると、ライトグリーンやピンクに混じって、「ん?」というカラーのシューズを履いている選手に気づくはずだ。

〈参考記事〉「ピンクの靴ばかり」と話題 記録更新支える「厚底」シューズ席巻 全国高校駅伝

〈参考記事〉「ピンク厚底靴」の波、ニューイヤー駅伝にも

〈参考記事〉ニューイヤーも箱根も 新記録続々 驚異?脅威? ピンク靴

ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の新しいカラーが12月に発売された(写真:NIKE)
ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の新しいカラーが12月に発売された(写真:NIKE)

すでにピンクの「次」がデビューしている!

 これは、2019年-2020年の駅伝シーズンに合わせて発売された「EKIDEN PACK」コレクション用の新色で〈オーロラ〉と呼ばれるものだ。薄いブルーとオレンジのコンビネーションで左右のカラーが微妙に違ってカッコイイ。実は、私も昨年末に〈年明けの箱根駅伝も「ピンクの靴ばかり」になることだろう〉なんて記事を書いてしまったが、「ピンクの靴」はもう古い!

のだ(笑)。

〈参考記事〉1位はあの偉業……!? 2019年マラソン界10大ニュース!

 デビューしたての新色を履いているということは、その選手の多くはナイキからシューズを供給されていると見ていいだろう。逆にいうと、ピンク(もくしくはライトグリーン)のシューズを履いている選手は、自腹でもナイキが履きたいという選手たちだ。まあ、そんなわけで、ナイキはもはや「手が付けられない」状態といってもいいだろう。

 2020年オリンピックイヤーの今年こそ、“ナイキの厚底”に対抗するライバルが現れて欲しいものである。

THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)

1961年東京生まれ。ランナー&ゴルファー(フルマラソンの自己ベストは3時間41分19秒)。早稲田大学第一文学部卒、週刊ゴルフダイジェスト記者を経て朝日新聞社へ中途入社。週刊朝日記者として9.11テロを、同誌編集長として3.11大震災を取材する。週刊誌歴約30年。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。2016年11月末で朝日新聞社を退職し、東京・新橋で株式会社POWER NEWSを起業。政治、経済、事件、ランニングのほか、最近は新技術や技術系ベンチャーの取材にハマっている。ほか、公益社団法人日本ジャーナリスト協会運営委員、宣伝会議「編集ライター養成講座」専任講師など。

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