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3.11東日本大震災から8年 50人の人命を救った神社の再建プロジェクト始まる!

山口一臣THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)
倒壊した本殿の「木材」が避難住民の命を救った(写真提供:福島神道青年会)

高台にある「諏訪神社」が約50人の命を救った

 福島県双葉郡浪江町の高台に地元住民の拠り所だった神社がある。浪江町両竹鎮座「諏訪神社」だ。地元では坂上田村麻呂の時代につくられたと言い伝えられる由緒ある神社である。標高約30mの高台にあるため、古くから津波の避難所になっていた。実際、3.11東日本大震災の際も、約50人の住民が避難して命が救われた場所だった。

 震度6強の激しい揺れのため、本殿は倒壊した。避難した住民は壊れた社殿の材木をはがして焚火にして、衣類を乾かしたり、暖をとったりしたという。まさに「命を救った神社」である。

 ところが、震災以来8年間、壊れた神社の社殿は放置されたままだった。

 浪江町は原発事故で2017年3月まで全域が避難指示地域だったため、神社を守り支えていた氏子たちも全員がいわき市などへ避難している。これほど大規模な被災地では氏子の被害も甚大で、神社の再建は手つかずの状態になっていたというわけだ。それはそうだろう。

 そこで、この神社を民間企業の力を借りて再建し、被災地である地元に寄贈しようというプロジェクトが立ち上がった。今日(3月7日)、都内で記者会見が行われた。

 会見を主催したのは、災害被災神社再建・地域復興プロジェクト実行委員会だ。この委員会は大阪の建設会社「創建」と福島県浪江町諏訪神社、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会の3団体で構成されている。

会見を行ったプロジェクト実行委員会。左から3番目が委員長の吉村孝文・創建会長
会見を行ったプロジェクト実行委員会。左から3番目が委員長の吉村孝文・創建会長

 災害の多い日本では今回の諏訪神社のようなケースが全国各地にあるという。プロジェクトの中心になっている創建は、そうした状況を少しでも改善しようと、大規模被災地の神社の修繕を無償で引き受けることを少し前から始めていた。

 第一弾は、熊本地震で被災して本殿が倒壊した白山姫神社(阿蘇郡西原村)だ。昨年11月に竣工し、引き渡しも終えて地元からおおいに感謝されたという。

(参考記事)白山姫神社プロジェクトについて

 そもそも創建がこのプロジェクトを思いついたストーリーがある。数年前に北海道にあった伝統木造建設会社が経営難に陥ったとき、その会社が持っていた木造建築技術を廃れさせてはいけないと、創建が救いの手を差し伸べたことが始まりだ。

 その技術というのは、伝統木造建築専用の「プレカット工法」といって、簡単に言うと、神社などを手掛ける宮大工の「技」を工場で再現すというものだ。これは日本で唯一のものだという。今回の神社再建にもこの工法が使われる。

 この技術を使って4年前に北海道札幌市にある石山神社の再建を請け負ったことが、プロジェクトのきっかけだった。完成すると地域の人から本当にたくさんの感謝の言葉をもらい、創建の吉村孝文会長は大きな達成感を味わったという。

 そんな折、最近の日本各地の災害を目の当たりにして、被災した神社の無償再建プロジェクトを思い立つ。とはいえ、会社の資金力との兼ね合いもあるため、毎年1棟をめどに寄贈を続ける計画だ。創建としては、この活動を通じてプレカット工法の認知を高めることも期待している。

再建工事のために、人力でこの階段を上がらなければならない(写真提供:福島県神道青年会)
再建工事のために、人力でこの階段を上がらなければならない(写真提供:福島県神道青年会)

 今回、浪江町両竹鎮座「諏訪神社」は前述のように住民の命を救った場所であること、また神社の周辺を国と県が復興記念公園にする計画があることから今年の1棟に選ばれた。現場は長い階段を上った奥にあるため重機が入り込めず、木材などは人力で運ぶのだそうだ。6月下旬に地鎮祭を行い、11月中旬の竣工を予定している。

THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)

1961年東京生まれ。ランナー&ゴルファー(フルマラソンの自己ベストは3時間41分19秒)。早稲田大学第一文学部卒、週刊ゴルフダイジェスト記者を経て朝日新聞社へ中途入社。週刊朝日記者として9.11テロを、同誌編集長として3.11大震災を取材する。週刊誌歴約30年。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。2016年11月末で朝日新聞社を退職し、東京・新橋で株式会社POWER NEWSを起業。政治、経済、事件、ランニングのほか、最近は新技術や技術系ベンチャーの取材にハマっている。ほか、公益社団法人日本ジャーナリスト協会運営委員、宣伝会議「編集ライター養成講座」専任講師など。

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