「文春砲」も沈黙!? 文藝春秋の内紛を告発する“連判状”を独占入手!

甘利明大臣を辞任に追い込んだのも「文春砲」だった(写真:ロイター/アフロ)

「文春砲」のおひざ元で人事をめぐる内紛劇が!

 あの「文春砲」を擁する名門出版社、株式会社文藝春秋で次期社長・役員人事をめぐって内紛まがいのことが起きているという話をずいぶん前に聞いていた。先週、それがついに、部署長クラスの有志がメールで“危機”を訴える事態にまで発展し、社内は騒然となったという。トップ人事をめぐって出所不明の怪文書の類が出回るのはどこの企業でもよくあることだが、これは正真正銘の社内メールを使ったもので、発信者6人の名前も明記されている。これを読めば、いったい何が起きているかは一目瞭然だ。

 ちょっと長くなるが、以下に紹介してみよう。

これが先週、社内で流れた実名入りの“連判状”だ

(ここから引用)

部署長の皆様

 お疲れ様です。

 このメールは、部署長の有志によりお送りするものです。突然のことで、驚かれたかもしれません。

 私たちは、文藝春秋に長く勤め、この会社の自由闊達で風通しのよい社風を愛してきました。

 もちろん、出版不況といわれて久しく、会社の業績は落ち、文藝春秋も私たちも大きく変わっていかざるを得ない状況に置かれています。かつてのようにはいかない、ということは私たちも認識しています。

 しかし、そうした厳しい状況を鑑みても、この数年わが社を覆ってきた重苦しい空気は、それだけが原因とはいえない、異常なものでした。物が言いにくく、不安や疑心暗鬼が横行し、士気がそがれてきたことを、私たちは実感してきました。

 そしてごく最近、文藝春秋の混迷がもはや看過できない状態にまで至ってしまったことを確信させる一連の出来事がありました。

 私たちは、現在のわが社の松井清人社長以下、役員・執行役員からなる執行部に対して、全幅の信頼を持つことができません。このような異例な形で、声を挙げる決意をせざるを得なかったのはそのためです。順を追って説明していきたいと思います。

 なぜわが社はこのような状況になってしまったのか。

 私たちの認識としては、それは松井社長の会社運営に大きな要因があります。松井社長は社の先輩として、編集者として、実績もあり尊敬できる方であることは言うまでもありません。しかし、社長に就任されて以降、私たちには理解しがたい強引な手法を取られることが多くなりました。

 最初は「松井さんには何を言っても通じない。全部自分ひとりで決めて、押し通してしまう」という声が、役員・執行役員から漏れてくるようになりました。それなりに社歴のある私たちも、わが社でそのようなことを聞くのは初めてでした。

 もともとの松井さんを知っていた人は、さもありなんというところもありましたが、次第に事態は深刻になります。自分のやり方に反対する者に対して厳しい叱責をし、心が折れそうな思いをした人が出るようになりました。また、社の人事を次長クラスにいたるまで、誰にも相談せずに決めてしまうこと。さらには新聞広告のサイズ、単行本の部数、雑誌の編集方針にいたるまで、強引に決めていくことが続出しました。

 信頼されない現場は、当然、やる気を失っていくことになります。若い社員の間でも、「上に意見を言うと、次の人事で不利になる」という気分が蔓延しました。

 このようなやり方は、文藝春秋始まって以来の異常な手法であると言わざるを得ません。わが社の士気を著しく低下させている重苦しい空気の源は、ここにあったと考えています。

 こうした状況を背景として最近、次期社長・役員人事をめぐる様々な出来事がありました。部署によっては上長から説明があったかと思います。

 当初、松井社長が会長となり、引き続き会社運営を行なうという考えが示されました。付随して新社長・役員人事の構想が役員に提示されました。私たちは、この構想に強い違和感を持ちました。松井さんが人事権を握ったまま会長となる構想では、何も変わらないどころかむしろ不安が増大するばかりだったからです。この会長就任構想は、7人の取締役のうち4人が諒承し、実現しかけましたが、残る3人が職を賭して説得し、最終的に見送られました。

 しかし、松井さんは会長就任を断念したものの、引き続き7月以降の人事についてひとりですべて決めると宣言し、すでに内々に人事案を総務に提出したと聞きます。

 これは会社の危機であると私たちは考えています。

 私たちは、松井さんのこれまでの会社運営に大きな問題があったと考えています。その当人が、社長を辞して以降の人事を決めていくという。これは、いったいどういうことなのでしょうか? 

 私たちは、現在の松井社長以下の執行部に対して、「要望書」を提出しようと考えています。もちろん、私たちには役員人事を左右する権限などありません。下に掲げる提案も、あくまで社に対する「要望」でしかありません。

 しかし、いまの文藝春秋の流れに疑問を持っている者がいることを示し、少しでも歯止めをかけるために、声を挙げていかなければいけないと考えています。

 以下は要望書案です。ぜひ様々な方の意見を聞きたいと私たちは思っています。賛同できる方、また異なる意見の方でも大歓迎です。幹事に声をかけていただいても結構ですし、メールでも結構です。それらを待って、近日、会合を開きたいと考えています。

 次期執行部の人事は、5月30日の決算役員会で決定します。松井会長就任に反対した3人の取締役のうち2人は退任します。つまり、一度は松井会長体制を承認した人たちで、次期執行部が固められる目算が大きいことになります。いま指名されている次期社長以下の執行部では、松井社長体制同様の人事が継続する危惧があります。

 そこで私たちが提案したいのは、以下の3点です。

(1)進んでいる次期執行部の人事を白紙に戻すこと

(2)松井社長は人事にタッチしないこと

(3)次期執行部は執行役員を含めた役員会で互選すること

 少し解説をします。(1)はすでに理由を述べたと思います。(2)(3)についてですが、現社長が次期役員を誰にするかを決める(その上で株主総会で承認してもらう)のは通常のルールといえます。それに加え、これまで文藝春秋では慣例的に現社長が次期役員人事(誰を社長にするとか専務にするとか)を決めてきました。それで問題がなかったからです。

 しかし、本来は取締役の互選で行なわれるべきものです。今回のような混乱の反省をもとに、本来の姿に戻してはどうかというのが私たちの提案です。

 しかし、私たちは松井会長構想を諒承した役員が大半を占める新執行部に対して、大きな不信感を持っています。そのため、執行役員を入れた互選を要望したいと思います。

 人事はどんな内容でも不満を持つ人が出ます。しかし、その人事が公明正大であること、正当性を持つとみなされることで、皆、その人事に従い、日々の仕事に励むことができます。この原則がないがしろにされてきた影響は、決して小さくありません。

 私たちが提出したい要望は、以上のものです。

 とかく物事を政治的に考える向きもありますが、特定の誰かを後押しするようなものではありません。

 その意味でも多くの仲間を募って要望書を提出したいと思います。

 広く現場の意見を集めて、文藝春秋がこの閉塞感から脱してもう一度活気を取り戻すことができれば、現在の社業の厳しい状況にも、きっと明るい兆しが見えてくると信じてやみません。

 部署長有志の会 

  幹事 ×××× ××× ×××× ××× ×××× ××××(ここは実名)

 要望書(案)

 私たちは今般の社の状況に鑑み、以下の要望をいたします。

 1 松井社長が役員に内示した人事案は白紙に戻していただきたい。

 2 松井社長は、人事について、一切関与しないでいただきたい。

 3 今後の人事については、現役員および執行役員の合議によって決定していただきたい。

 部署長有志の会

   幹事 ×××× ××× ×××× ××× ×××× ××××(同)

以上

(引用おわり)

きっかけは松井社長が進めた“院政”人事構想だった

 これは社内向けのメールなので、少し解説した方がいいだろう。まず、文藝春秋には松井清人社長以下、次の7人の取締役がいる。西川清史副社長、古田維常務、木俣正剛常務、中部嘉人常務、飯窪成幸取締役、石井潤一郎取締役、濱宏行取締役だ。これに4人の執行役員を加えたメンバーで、メールにある「執行部」を形成している。

 松井社長は就任4年目で今期での退任が決まっていた。文藝春秋の社長は代々、「週刊文春」「文藝春秋」(社内ではこれを「本誌」と呼ぶ)の編集長を歴任した編集出身から選ばれることが多かった。いまの取締役でこの条件を満たしているのは木俣常務で、一時は次期社長と目されていた。ところが松井社長は、木俣氏を監査役に退け、次期社長に経理出身の中部常務を起用して、腹心の石井取締役を常務(副社長を打診され断ったとの説も)に据え、自らは会長に就任して“院政”を敷こうとした。これに飯窪氏が賛同し、常務のポジションを与えられた。これが内紛の発端だ。

 この松井“院政”構想は、メールにもあるように4人の取締役によっていったんは了承された。それを木俣氏、西川氏、濱氏の3人の取締役が文字通り“職を賭して”説得して、断念させた。木俣氏は松井社長に「自分も辞める…」と刺し違える覚悟で直談判し、人事案の撤回と松井氏の退陣を迫ったという。松井氏には社員の誰もが知る女性問題があり、そのことも“院政”を敷くにはふさわしくない理由として指摘されたようだ。

“執行部”の暴走でついに中堅社員たちが決起した!

 こうした中で流れたのが上記の“連判状”メールである。

 文藝春秋にはオーナー家や大株主はおらず、株の大半は現役役員と社員が持っている。数の上では現役役員が有利な構成となっているそうだが、株主でもある社員の声を疎かにはできないはずだ。メールの文面にある、

〈人事はどんな内容でも不満を持つ人が出ます。しかし、その人事が公明正大であること、正当性を持つとみなされることで、皆、その人事に従い、日々の仕事に励むことができます。この原則がないがしろにされてきた影響は、決して小さくありません〉 

 というのはその通りで、幹事の元には直後から賛同の声が集まりつつあるという。社員が上層部に対してこうした声をあげられるのも、メールにある〈自由闊達で風通しのよい社風〉の表れではないかと思う。週明け以降、集まった社員の声が正式な「要望書」として松井社長以下の執行部に届けられることになりそうだ。執行部はこれを重く受け止めた方がいい。

 ただ、ある幹部社員によると、この問題の決着は5月30日の決算役員会、もしくは6月の株主総会までもつれ込みそうな気配だという。さすがの「文春砲」も書けないネタだと思うので、続報があればまた報告したい。

【5月23日追記】

 結局、週明けにさらに「幹事」の人数を増やした実名メールの第2弾が出て、5月23日(水)午後6時から部署長有志呼びかけによる集会が開かれることになったそうです。といっても“決起集会”のようなものではなく、そこで会社側からの説明も聞いて、事態は収束へ向かうとのことです。雨降って地かたまるということでしょうか。何よりです。それにしても、こうした要望書を社内に実名で流せるところが、文藝春秋の「風通しのよさ」だと改めて感じました。昨夜、都内であったパーティで松井さんが「お騒がせしております。文藝春秋の松井です」と、乾杯の音頭で笑いをとっていたそうです。ちょっと羨ましい気がしました。