「腕を組んで歩く」の衰退

結婚式で腕を組む新郎新婦

先日、姪の結婚式があって出席したのだが、新郎新婦が腕を組んで歩くさまを見ながら、こうやって腕を組んで歩くカップルを街中ではとんと見かけなくなったことに改めて思い当たった。

街を歩くとさまざまな年齢層のカップル(男女に限らない)を見かけるが、少なくとも最近の個人的な経験の範囲では、腕を組んでいるカップルはほとんどおらず、代わりに手をつないでいるケースが多い。かつてはこうした印象を持つことはあまりなかったから、近年減ってきているのではないか、とかねてから思っていた。

個人的な印象だけでは何なので、少し調べてみた。この手の話は比較的関心が高いテーマのようで、検索すると調査結果がいくつも見つかる。多くはウェブ調査なので統計学的には厳密とはいえないが、おおまかな傾向はわかる。

まずは女性対象の調査から。

彼氏と歩くときどうしますか?デート中の手ポジ大調査

めるも 2018/9/25

Q.あなたは恋人と一緒に歩くとき、どちらが嬉しいですか(単一回答)

女性10代 手をつなぐ:69.4% 腕を組む:16.0% どちらも嬉しくない:14.6%

女性20代 手をつなぐ:56.2% 腕を組む:15.2% どちらも嬉しくない:28.6%

女性30代 手をつなぐ:59.3% 腕を組む:11.8% どちらも嬉しくない:28.9%

有効回答数:2,231名

調査期間:2018年8月16日~8月22日

調査対象:(エリア)全国(性別年齢) 女性15歳~39歳

調査媒体:アンケートサイト infoQ

【OL白書vol.25】彼氏と歩くとき、腕を組むのと手をつなぐ…どっちが好き?

ORICON 2009-01-16

Q. 彼氏と歩くときにしたいのは?

【手をつなぐ】派(77.4%)

【腕を組む】派(22.6%)

(2008年11月21日~11月26日、自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員の、20代、30代の未婚社会人女性、各250人、合計500人にインターネット調査したもの)

次いで男性対象の調査。

「手をつなぐ」or「腕を組む」どっちが好き? #恋の答案用紙

マイナビウーマン 2018.12.08

Q. 女性と手をつなぐor腕を組む、どっちが好き?

手をつなぐ:70.8%

腕を組む:29.2%

※マイナビウーマン調べ

調査日時:2018年10月10日~10月12日

調査人数:281人(22~39歳の働く男性)

※有効回答数281件

これらは実際にどうしているかではなく、好みや願望について聞いたものだ。選択肢も違うので一概には比較できないが、男女とも圧倒的な差で「腕を組む」より「手をつなぐ」の方が好まれていることがわかる。

実際にどうしているかを聞いた調査もある。これは男女別になっていない。「どちらでもいい」の解釈は難しいが、少なくとも「手をつなぐ」方が圧倒的に多い点は上掲調査と共通している。

恋人と手をつなぐ? それとも腕を組む?

マイナビニュース 2012年6月6日

恋人と手をつなぐ? それとも腕を組む?

Q.恋人と歩くとき、手をつなぎますか? 腕を組みますか?

手をつなぐ……411人(41%)

どちらでもいい……340人(35%)

どちらもしない……151人(15%)

腕を組む……98人(9%)

調査期間:2012/2/29~2012/3/4

アンケート対象:マイナビニュース会員

有効回答数 1,000件(ウェブログイン式)

専門外だが、男女が「腕を組んで歩く」というのは、近代西洋の慣習に由来すると考えられているのではないかと思う。男性(いわゆる「紳士」)は常に女性(淑女)をエスコートすべきものであり、並んで歩く際には女性がふらついても(ハイヒールを履いている前提なのだろう)支えられるよう、腕を組んで歩く、というわけだ(下図参照)。腕を組んで歩こうとすると、女性は男性より少し後ろに位置することになる。いろいろ理屈はつけられようが、男性が女性を保護しリードするスタイルであることはまちがいなかろう。

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日本にこうした習慣が伝わったのは明治以降だろう。広く社会全体に普及したとまでいえるかどうかはわからないが、少なくとも腕を組んで歩く男女は、20世紀の特に後半にはそれなりに数多くいたように思う。

しかし今や、少なくとも建前上、「男性が女性をリードすべき」とおおっぴらにいえる時代ではない。となれば男性優位の象徴ともいえる「腕を組む」という行動自体が廃れていってもおかしくない。朝日新聞の記事データベースで、全文検索が可能な1985年以降の記事をキーワード「腕を組んで&男女」で検索したところ、以下の27件が見つかった(同性で腕を組むケースも含めている)。せっかくなので該当部分も引用しておく。

1990年06月30日 朝刊 1社

秋篠宮ご夫妻結婚パレード 3万人が沿道でフィーバー

「専門学校生の稲見成彦さん(19)と狩野美樹子さん(18)は交際中で、腕を組んでパレードを見送った。」

1993年05月25日 週刊 アエラ

日本新党・細川護煕代表が疑惑に答える 混迷政局・攻める側

「私の祖父が七十歳ぐらいのときに、銀座で親しい芸者衆と腕を組んで歩いていたんですね。」

1995年09月16日 朝刊 岡山

ファッションショーや交流会 敬老の日に催し /岡山

「岡山市本町の岡山高島屋であった「悠々素敵カップル・ファッションショー」には、夫婦や父娘、友人同士で組んだ七十八歳までの男女七組が出場。アウトドアカジュアルやフォーマルといったスタイル別に色調などを合わせ、腕を組んで家族が声援を送る会場に現れた。」

1997年01月20日 週刊 アエラ

女の子は女の子が大好き ソフトレズの大流行

「「カレシとは腕組まない。一メーターくらいあけて歩く」

 と言いながら、女の子同士で腕を組んでいたのは、東京都内に住む大学生、あやちゃん(一九)だ。」

1997年07月05日 夕刊 らうんじ

夜の散歩 街角に金で買えない温かさ カイロ(世界のひととき)

「男性同士で腕を組んで歩く姿も、親しい友達では普通のことだ。」

1999年02月12日 朝刊 東京

下北沢の「横丁の飲み屋2階」に映画館も楽しめる映画館 /東京

「若い男女が腕を組んで木製の階段を上がっていく。」

1999年06月07日 週刊 アエラ

風俗は働く女の癒し ストレス発散や性の不満を解消

「二十五歳のメーカーに勤めるOLは、私立高校教師の男性と結婚を前提に付き合っている。が、教え子や父母の目があるためラブホテルの利用はできず、町中を腕を組んで歩くことすら嫌な顔をされるという。」

1999年11月26日 朝刊 岐阜

元従軍慰安婦のいま描く 韓国の記録映画3部作を同時上映 /大阪

「「男女が腕を組んで歩くのを見ると、気持ち悪くて仕方がない」と話すハルモニ……。」

2001年01月03日 朝刊 埼玉

第2回 通い婚(リセットLIFE 生き直す人たち) /埼玉

「十二月の週末、二人はカラオケボックスで歌った。そして、腕を組んでスーパーに向かった。」

2001年09月16日 朝刊 滋賀

美しき老年へ 近江八幡のホテルで「ファッションショー」 /滋賀

「84歳のおばあさんがはにかみながらポーズをとったり、男女が腕を組んでおどける演技に会場の約600人から拍手と笑いが起きた。」

2002年06月22日 夕刊 2社会

お国のタブー、広告に 阪急交通社、トンガ王国と和解

「ポリネシア系の民族国家には独特の風習や儀式が今もあり、男女が人前で腕を組んでも良いのは一般的な舞踊の場面ぐらい。」

2002年10月16日 朝刊 1社会

万感の「お帰り」 歳月こえた抱擁 北朝鮮拉致被害者5人が帰国

「蓮池薫さん(45)、奥土祐木子さん(46)夫妻は、結婚式での新郎新婦のように、腕を組んでタラップを下りた。」

2003年08月15日 夕刊 北海道

のど自慢(都会のネズミと田舎のネズミ SOHO日記) /北海道

「いかにもカラオケで歌いこんでいる感じのオジサン、プロを目指していそうな若い女性、仲睦(むつ)まじく腕を組んでデュエットする中年夫婦。」

2004年03月12日 朝刊 2社会

「壁」ってどこにある 若い才能は軽々と国境を越えて 日韓新時代

「でも、学校で男女が腕を組んで歩いたりしていいの?」

2004年09月23日 朝刊 福井

とげ抜きの愛と性 アンチエージングな恋愛風景を歩く

「仲良くなった男女は、気軽に腕を組んで食事に出かけていく。」

2006年02月15日 朝刊 滋賀全県・1地方

戦時の恋愛、映像化 立命大生、9人に聞き取り 「当時と今、比較して」 /滋賀県

「京都市北区の男性(84)は、戦時中に恋人と腕を組んで歩くこともあった。」

2006年10月10日 夕刊 1社会

あいち歌壇 岡井隆選 /愛知県

「加藤かつみ氏―男女が腕を組んで歩く風習は昔はなかったし今でも日本人には似合わない。介護する身になって知るのだ。」

2007年10月29日 週刊 アエラ

(ニセモノ社会:9)民意、探り探られ

「約100枚の候補者写真を再検討した。余ったフィルムで偶然撮った、次女と腕を組んでほほ笑む写真にピンと来た。」

2008年04月19日 朝刊 秋田全県・2地方

(G8サミット @洞爺湖)千客万来の街 /北海道

「ユドヨノ大統領が夫人と腕を組んで降りた。」

2009年01月12日 朝刊 島根・1地方

思わず「へぇ~」が出る「ヒラリー伝説」 夢は宇宙飛行士、SPにコーヒーもおごらず

「「堂々とした態度はホントすごかった。日本であれに匹敵するのは川崎麻世の横で腕を組んでいたカイヤくらいです」」

2011年04月16日 朝刊 週末be・b10

(be between 読者とつくる)いま恋してますか? 女性編

「男性はまったく悪びれる様子もなく、彼女を食事や映画のデートに誘い、白昼も腕を組んで歩いた。」

2013年10月24日 夕刊 夕ファッション

東京コレクション「大人への脱皮」 14年春夏、洗練された日常着を探る

「ペアルックで男女が腕を組んで歩く演出で、来場者を魅了した。」

2014年12月22日 週刊 アエラ

クリスマス粉砕、非モテが団結 クリぼっちの葛藤に生温かい視線

「帰り道、ショーウィンドーに、腕を組んで歩くカップルと自分の姿が映る。」

2015年04月06日 朝刊 オピニオン

(声)繁華街の客引き、摘発厳しく 【大阪】

「私の周りの日本人は恥ずかしがりで友達同士で握手もハグもしないのに、客引きは知らない男性に急に声をかけて腕を組んで歩き出すので驚いた。」

2016年03月05日 朝刊 三重全県・1地方

三重の魅力、知事PR 東京の女子大生向け催し 伊勢志摩サミットあと82日/三重県

「鈴木知事はトーク相手のJJモデル大川藍さん(22)と腕を組んで歩き、ステージでポーズを決めて登場。」

2017年05月26日 朝刊 1社会

切り抜きカメラが捉えた、北朝鮮のいま 二つの写真集、相次ぎ出版

「若者、特に男性の服装がカラフルになり、男女が人目をはばからず仲良くするように。高層ビルの建設が続き、平壌の交通量も目立って増加。富裕層の登場とともに、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が夫人と腕を組んで表舞台に現れるなど、「これまでの慣習を打ち破ろうとしている」と映る。」

2019年05月11日 朝刊 山形全県・1地方

「多様な性のあり方」に関心を 「性別が、ない!」山形市で17日自主上映会/山形県

「「彼女と腕を組んで歩いていたら暴言を吐かれたこともある」と話す。」

5年間ずつまとめて記事件数の推移をみると、90年代後半から2000年代前半にかけての時期と比べて、2000年代後半以降、減りつつあるようにもみえる。また、2015年以降の4件のうち3件はそれぞれ風俗、三重県知事、金正恩氏で、一般人の日常の行動とはちょっといいがたい。

1990-94 2件

1995-99 6件

2000-04 7件

2005-09 5件

2010-14 3件

2015-19 4件

もちろん、これで何かをいえるというほどの結果ではないが、やはり近年カップルが「腕を組んで歩く」といった記述の記事は減ってきているような印象を受ける。新聞記事が社会を映す鏡であるなら、これは「腕を組んで歩く」行動自体が減ってきていることを反映しているのかもしれない。

上掲の調査では、それぞれの選択肢をとった理由が紹介されているが、「手をつなぐ」を選択した回答の中に」「腕を組む」と比べて「手をつなぐ」の方が男女対等な感じがする、という意見が散見された。よく考えてみれば、「手をつなぐ」場合でも、実際にはわずかに前後にずれるはずで、その意味では「対等」とはいいがたいような気もするが、まあ「腕を組む」よりはまし、ということだろうか。

ちなみに男性調査では「手をつなぐ:腕を組む」の比が2.4:1であったのに対し、女性調査ではだいたい4:1前後になっていた。もし女性の方がより「腕を組む」を好まなくなっているのであれば、それは女性の方がより強く対等を求めているあらわれ、という可能性もある。

くりかえすが以上は非常にあらっぽい分析であって、確実にそうだといえる自信はまったくない。それなりに面白いテーマだとは思うので、ご専門の方はぜひ調査されるとよいのではないか(もう既にされているかもしれない。ぜひご教示いただければ)。対等云々は別として、腕を組もうが手をつなごうが、はたまた離れて歩こうが、「仲良きことは美しき哉」である。姪と夫君も、街ゆく皆さんも、世の女性も男性も、ぜひ仲よくお過ごしいただきたい。

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