ノーベル生理学・医学賞受賞者の大隅良典氏が理事長を務める「大隅基礎科学創成財団」が講演会を開催

大隅良典氏が理事長を務める「大隅基礎科学創成財団」が講演会を開催

「すぐに役立つことを問わない基礎科学」の支援と、文化としての科学の振興を目的とする公益財団法人

1949年の湯川秀樹博士による日本人初のノーベル賞受賞以来、相次いでいる日本人のノーベル賞受賞。その一方で、近年、日本の研究力の低下が顕著になっている。追い打ちをかけるように、国立大学の2004年の法人化に伴い国が補助金として出してきた運営費交付金が減額し、国立大学は財政難に陥っている。加えて、すぐに役立つ応用研究を重視する傾向が強まっており、長期間を要するような基礎研究への補助金がおりにくくなっている。

このような状況を危惧し、2016年のノーベル生理学・医学賞受賞を機に公の場で基礎研究の重要性と大学への支援の必要性を訴えて続けてきたのが、東京工業大学の大隅良典栄誉教授だ。

大隅教授は同年10月3日のノーベル賞受賞の記者会見でも、「私がこの研究を始めた時、(受賞理由である)『オートファジー』が必ずがんにつながる、人間寿命の問題につながると確信して始めたわけではありません。基礎研究はそういう風に展開していくものだとぜひ理解していただきたいと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思っております」「社会が少しでもゆとりをもって基礎科学を見守ってくれるようになってほしいと常々思っていますので、私も少しでも努力をしてみたいと思っています」と述べている。

そこで、大隅教授がノーベル賞受賞賞金の多くを投じ、2018年8月1日に内閣総理大臣の認定を受け、公益財団法人としてスタートさせたのが、「大隅基礎科学創成財団」である。

「大隅基礎科学創成財団」の「第1回感謝の集い」では宇宙飛行士の向井千秋さんらが講演

同財団の目的は、日本における基礎科学の発展だ。現在、同財団では、大隅教授の専門分野である生物学の新分野を拓くような先見性や独創性に優れた研究に対する助成と、市民講座などを通じた研究者と市民、企業との新たな連携の構築に尽力している。特に、国や公的機関、既存の財団では支援がむずかしい課題に対する助成を重要視しているのが特徴だ。

そして、2019年7月26日、公益財団法人としてのスタートから1年が経つのを記念し、東京都千代田区の如水会館で、「第1回感謝の集い」が開催された。

大隅榮譽教授
大隅榮譽教授

同財団では、現在、「酵母研究助成」と「一般研究助成」の2種類の助成を行っており、同集いでは、まず、それぞれの助成を受けた2名の対象者が登壇し、研究内容を紹介した。

その後、「宇宙と生命」をテーマに、日本人女性初の宇宙飛行士で、現在東京理科大学の特任副学長である向井千秋さん、東京薬科大学の名誉教授の山岸明彦さんの2人が登壇し、講演を行った。

まず、向井さんの講演のタイトルは、「宇宙環境の生物影響ーー宇宙生命科学・宇宙医学が果たす役割ーー」だ。宇宙旅行や宇宙への移住に関する研究開発が進められる中、向井さんは現在、医学博士として、宇宙環境下で我々のような地球の生物が受ける影響を医学的観点から研究しており、講演ではその先端研究が紹介された。

向井千秋東京理科大学特任副学長
向井千秋東京理科大学特任副学長

一方、山岸明彦さんの講演のタイトルは、「宇宙での生命の起源と生命探査」だ。地球の生命の起源の解明は人類の長年のテーマであり、その1つに、「パンスペルミア仮説」がある。これは、地球の生命の起源は、地球以外の天体で発生した微生物の胞子が地球に到達したものだという仮説だ。山岸さんの研究グループでは、この仮説を検証するため、現在、国際宇宙ステーションで「たんぽぽ計画」を推進中で、宇宙を飛んでいるかもしれない微生物の捕集を試みている。講演ではその内容などが紹介された。

山岸明彦東京薬科大学名誉教授
山岸明彦東京薬科大学名誉教授

お二人による講演後には、来場者を交えた討論会や交流会も開催され、和やかな雰囲気の中、第1回感謝の集いが終了した。

大隅基礎科学創成財団では、今後も助成事業に加え、小中高生を対象とした市民講座やセミナーなどを開催していく予定なので、興味のある方は大隅基礎科学創成財団のホームページをチェックしてみてはいかがだろうか。