色褪せないサンダーバードの魅力を再発見!「サンダーバード博」

日本科学未来館で開催中の「サンダーバード博」

7月10日~9月23日、東京・お台場の日本科学未来館で「サンダーバード博」が開催されている。サンダーバードで描かれている未来と、現在の日本の先端科学技術を比較しながら紹介しているというので行ってみた。

1965年に100年後の2065年を描いた「サンダーバード」

サンダーバードとは、プロデューサーである故ジェリー・アンダーソン氏の製作総指揮の下、1965年に英国で誕生した特撮作品だ。日本では1966年にNHKで初放送されたのを皮切りに、その後TBSやテレビ東京、フジテレビなどで何度も再放送されているため、幅広いファン層を持つ。子供時代に夢中になった読者も多いのではないだろうか。

時代は1965年からちょうど100年後の2065年。世界中で勃発する大事故や大災害の危機から人類を救う「国際救助隊」の活躍を描いている。

国際救助隊のメンバーは、隊長のジェフ・トレーシーと5人の息子たちだ。妻と死別したジェフ・トレーシーが、数々の発明品の収益によって得た巨万の富を資金に、南太平洋に浮かぶ絶海の孤島を買い取り、息子たちと共に人類をさまざまな危機から救う私設組織を設立したという設定だ。

「トレーシーアイランド」と呼ばれる絶海の孤島は秘密基地になっており、トレーシーファミリーが住む豪邸のほか、最新鋭の科学技術によって開発されたスーパーメカであるサンダーバード1~4号の格納庫を装備。上空3万6000メートルの静止軌道上に位置するサンダーバード5号を介して、世界中から発信されるSOS信号を受け取ると、パイロットである息子たちがそれぞれのサンダーバードに乗り込み、出動していくのである。

会場にはトレーシーアイランドのジオラマも
会場にはトレーシーアイランドのジオラマも

科学的根拠に基づきデザインされたメカ

さて、今回このタイミングでサンダーバード博が開催された理由は、2013年が1965年と2065年のほぼ中間点に位置するからであり、「当時、考えられた科学技術のアイデアと現在の先端科学技術とを照らし合わせることで、未来をともに考えるきっかけにしてほしい」(日本科学未来館 毛利衛館長)とのことだ。

サンダーバード博の会場は主に4つのコーナーで構成されている。入場後、まず出迎えてくれるのが、3Dメガネを装着して視聴する「サンダーバード3D映像」だ。おなじみのオープニングシーンや1号と2号の出動シーンを3D映像で楽しめる。

約8分間の3D映像を見終わると、その次には、「サンダーバードギャラリー」が控えている。ここでは、サンダーバード1~5号の特撮秘話が紹介されているほか、当時製作されたマリオネットも展示されている。

音声を電気信号に変換し口の開閉を実現
音声を電気信号に変換し口の開閉を実現

この中で、筆者自身が最も驚いたのは、サンダーバードに登場するマリオネットの口が、声優のセリフを先に録音し、その音声を電気信号に変換して開閉させていたということだ。マリオネットの滑らかな口の動きには何度見ても感心させられるが、その背景には、画期的なシステムの開発があったのだ。

一方で、マッハ20(時速約2万~2万5000キロメートル)の速さで、世界のあらゆる場所に60分以内に到着できるという設定の超高速ジェット機「サンダーバード1号」の飛行シーンでは、「ローリングスカイ」と呼ばれる装置を使用していたという。横方向に回転する空の背景の前にサンダーバード1号を固定し、背景側を動かすことで、飛行シーンを再現しているのだ。

「ローリングスカイ」で飛行シーンを演出
「ローリングスカイ」で飛行シーンを演出

また、水難救助作業用に開発されたという「サンダーバード4号」では、手前に水槽を置き、水槽越しにメカを動かすことで、あたかもサンダーバード4号が水中で作業をしているように見せる工夫をしているとのこと。

サンダーバード4号は水槽越しに撮影
サンダーバード4号は水槽越しに撮影

いずれも至ってシンプルな方法ではあるが、映像として見るとどれもリアルだ。それは、メカが極めて精巧に作られていることや、ウェザリング(汚し塗装)などの手法を多用して、丹念に製作されているからに他ならない。

一番人気のサンダーバード2号は「リフティングボディ」だった
一番人気のサンダーバード2号は「リフティングボディ」だった

また、機体にコンテナを装備し、その中に救助に必要なさまざまなレスキューメカを入れて現場に向かうことで、最も人気が高いのが大型輸送機の「サンダーバード2号」だ。

丸みを帯びたフォルムに、「これはSFの世界の話であって、実際にこの形で飛ぶのは難しいのではないか」と思っていた読者も少なくないのではないだろうか。

ところが、実はこのフォルムは「リフティングボディ」と言われるもので、JAXAやNASAでも、研究開発が進められているという。一般に飛行機は翼が発生させる揚力によって浮上することができる。それに対し、リフティングボディは胴体そのものが揚力を生む形状になっている。つまり、胴体が翼の役割を果たしているため、飛行機のような大きな翼が不要なのである。

さらに、サンダーバード2号には、先端部が前を向いている「前進翼」が付けられているが、これも実存する翼で、高い機動性を実現するとのことだ。1984年に米国のグラマン社が前進翼を搭載した実験用航空機「X-29」の初飛行に成功している。

このように、一見、荒唐無稽に見えるが、サンダーバードに登場するメカには科学的な根拠に基づいたものも多く、その点が、製作後50年近く経った今でも、人々がサンダーバードに魅了される理由の1つになっているようだ。

エネルギー問題や宇宙開発など先見の明があり示唆に富むサンダーバードの世界観

さて、「サンダーバードギャラリー」を見終わると、3つ目のコーナー「参加体験型展示」が待っている。これはサンダーバード2号と一緒に救助活動を行おうという子供に人気のアトラクションだ。

サンダーバード2号と消火活動が行えるアトラクションも
サンダーバード2号と消火活動が行えるアトラクションも

そして、最後のコーナーが、「先端科学技術展示」だ。ここは、サンダーバードで描かれている未来の暮らしと、現在の日本の先端技術やアイデアを比較して、我々が理想の未来にどこまで近づいているかを検証しようというコーナーだ。

サンダーバードのエピソード6「原子炉の危機」では、サハラ砂漠を緑地化するため、「脱塩プラント」が登場するが、それに対して、同コーナーでは、東レが開発した、「逆浸透膜」を使って海水から淡水を作る技術を、また、エピソード30「太陽反射鏡の恐怖」で描かれる「太陽の熱線を電気に変える太陽光発電機」に対しては、現在の太陽電池を使った太陽光発電を紹介している。

ちなみに、サンダーバードのメカの動力源のうち、1~4号が熱核融合炉と核融合反応炉、5号が太陽電池と原子力電池という設定だ。その一方で、エピソード6をはじめいくつかのエピソードでは原子力の脅威がキーワードとして登場しており、サンダーバードが、科学技術にはプラスとマイナスの両方の側面があることをきちんと提示している点が興味深い。

エピソード30では太陽光発電機の話も
エピソード30では太陽光発電機の話も

また、このコーナーで筆者が最も注目したのが、宇宙救助活動用単段式ロケットである「サンダーバード3号」と、2013年8月末にいよいよ初号機の打ち上げが迫っている固体燃料ロケット「イプシロン」との比較だ。

イプシロンはJAXAとIHIエアロスペースが共同開発したロケットで、最大の特徴は、人工知能を用いてロケットが自ら点検する機能を持っていることだ。これによって、これまでかけていた人と時間を大幅に削減、低コストと打ち上げ前の準備期間の短縮に成功している。

こういったイプシロンのコンセプトは、実はイプシロンのプロジェクトマネージャーであるJAXAの森田泰弘氏の、子供時代に夢中になったサンダーバードへの憧れからきているという。

サンダーバード3号では、トレーシー家の末っ子であるアランがボタン1つ押すだけで簡単に発射できるようになっている。それに対し、森田氏は、ロケットの設計をコンパクトに、打ち上げをより手軽なものにすることで、サンダーバード3号のように、宇宙への敷居を下げることを目指しているという。

「イプシロン」のコンセプトのベースとなったサンダーバード3号
「イプシロン」のコンセプトのベースとなったサンダーバード3号

一方で、実現にはまだまだ時間がかかりそうな面もある。サンダーバード3号とイプシロンなど既存のロケットとの決定的な違いは、サンダーバード3号が往還機であるという点だ。今後、我々が往還機を実現するには、乗り越えるべき多くの技術課題がある。それゆえ、サンダーバード3号はロケットの1つのゴールであり、大きな目標となっているようだ。

その他、サンダーバード博では、大事故や大災害の危機から人々を救うという点で海上保安庁によるイベントや、将来の水不足や地球環境問題を一緒に考えるワークショップなども開催予定だ。

このように、大人も子供も楽しめる「サンダーバード博」。残り少ない夏休みを子供と一緒に訪れてみるのも良いだろう。

実際にTVや映画に使われたマリオネットも展示
実際にTVや映画に使われたマリオネットも展示