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トランプ大統領を完全にバカにした安倍発言「米国大統領に敬意を払え」に驚愕!

山田順作家、ジャーナリスト
同盟国の大統領に「一定の敬意を」の真意は?(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 やはり、安倍総理という人は、あまりに単純な思考力しか持ちあわせていない人間なのか、そう残念に思ったのが、18日の国会答弁だった。

 この日、衆院予算委で、元民主党で無所属(立憲会派)の小川淳也議員が、トランプ不信を前面に打ち出して、「ノーベル平和賞に推薦するなんてことはありえないし、日本国として恥ずかしいことだと思いますが、総理はどう思われますか」と質問した。その前に彼は、INF条約やパリ協定からの離脱、移民排斥の壁の建設などの例を挙げ、トランプの数々の“暴挙”を指摘した。いずれも、誰もが「トンデモない」と思っていることだから、そんな大統領をノーベル賞に推薦するなんてどうかしていないかと言いたかったわけだ。その気持ちは、痛いほどわかる。

 しかし、これにどう答えたらいいのかは、日本国の総理だけに非常に難しい。「そうですね」なんて言おうものなら、おそらく大変なことになっただろう。

 それで、総理の答弁に注目したのだが、安倍総理はなんとこう言ったのだ。

「いま、同盟国の大統領に対して口を極めて批判をされたわけでございますが、米国は日本にとって唯一の同盟国であり、その国の大統領に対しては一定の敬意を払うべきだろうと、私はそのように思うわけであります」

 さらに、安倍総理はこうも言った。

「まあ、御党も政権を奪取しようと考えているんであれば、ですね」

 本当に驚愕の発言である。

 こんな露骨な本音を国会で言い放っていいのだろうか?日本語がわかれば、安倍総理発言は、こう解釈できる。

「トランプ大統領はあなたが言うようにトンデモない大統領で、私も同感だ。しかし、日本はアメリカの属国だから、“一定の敬意”(おべっか、恭順の意)で付き合わなければならない。

 それができないのなら、野党は政権を担うことなんかできませんよ」

 もちろん、これは総理の自己弁護でもある。「私は好んでトランプのポチになっているわけではない。そんなことぐらい、わかるでしょ」と、安倍総理は言い放ってしまったのだ。

 トランプをノーベル平和賞に推薦したことを、海外メディアは大いに皮肉っている。安倍ニッポンを完全にバカにしている。しかし、その理由を安倍総理本人が、この発言で認めたことを、日本語の裏読みができない海外メディアは理解できていない。

 安倍発言は、日本人が聞けば、トランプを完全にバカにしていることは明白だ。ところが、日本の一部メディアは、海外メディアと同じく、これをまともに受け取って「アメリカのポチぶりを認めた屈辱的な発言」と受け取ってしまっている。信じがたいことだ。

 

 日本のポジションは、どこまでいってもアメリカの属国である。だから、政権党になるのは、このポジションを理解して、いくら“おバカ大統領”だとしても、アメリカに従わなければならないという「真実」を安倍総理は、あまりに単純に口にしてしまったのである。「一定の敬意」の「一定」にそれがよく表れている。

 単に、「トランプ大統領に敬意を持っています」と言えばいいのを、本音を言ってしまっている。さらに「同盟国」を強調している。これは、同盟国でなければ敬意なんか示さないと言っているのと同じだ。

 残念ながら、安倍総理は野党質問にムキになるところがあり、そこに、つい本音が出てしまうという欠点を持っている。

 つきつめると、そこには、日本国をどうしていくかという戦略も、定見もない。このような総理は、もしかしたら日本の最大の不幸ではないだろうか。

 アメリカと渡り合うには、もっと狡猾かつ利口な総理が必要だ。そうでないと、日本は今後どんどん衰退するだけだろう。この先、日米FTA交渉で、自動車関税を飲まされてしまう“危機”が迫っている。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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