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スマートスピーカーが、テレビ、スマホなどから時間を奪いメディアの主役に!

山田順作家、ジャーナリスト
Amazon Alexa を追いかけるGoogle Home(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカでは、「スマートスピーカー」の普及がすごい勢いで進んでいる。このままいけば、「1家に1台スマートスピーカー」の時代が来るのは間違いないと思われる。となると、現在のメディアの状況は大きく代わり、いままでの主役だったテレビ、スマホが主役ではなくなる日がやってきそうだ。

 それを裏付けるレポートが発表されて、それを基にして「Techcrunch」などのメディアでいくつかの記事が書かれ、メディア関係者の間で注目されているので、ここで紹介してみたい。

→「NPR」と「Edison Research」による調査レポート

「The Smart Audio Report」

→「NPR」の記事

「Following Holiday Surge, One In Six Americans Owns A Voice-Activated Smart Speaker」

→「Techcrunch」の記事

「39 million Americans now own a smart speaker, report claims」

 このレポートをまとめたのは、アメリカの公共ラジオ放送「NPR」と調査会社の「Edison Research」 。調査は、2017年11月17日から5日間、オンラインで行われ(回答数806)、それに12月26日から4日間の電話調査の結果(回答数1010)を加えている。回答者はすべて18歳以上で、オンライン調査の対象者はすべてアマゾンかグーグルのどちらかスマートスピーカーの所有者だった。

 なお、この調査では、スマートスピーカーを「VASS:Voice-Activated Smart Speaker 」(音声駆動スマートスピーカー)としているので、以下、VASSと表記する。

 調査の結果、NPRでは、アメリカ人の16%がVASSを所有していると推測した。この16%という普及率は、1年前と比べると2倍以上で、人口にして3900万人である。また、この普及のペースは、スマホの普及時、2010年春の時点の14%とほぼ同じのため、このままいくと、2020年には75%となると見られている。

 これは、すでに予想されたことなので、それほど驚くことではない。しかし、メディア関係者が「やはり」と、驚き注目したのは次の質問の結果だ。

 「VASSで使った時間は、それまでどんなメディア機器で使っていた時間でしたか?」という質問に対し、回答者は、万遍なくほかのメディアの時間をVASSに振り向けたこと(リプレイス)がわかったからだ。

 回答割合は次のとおり。

 

 ラジオ39%、スマホ34%、テレビ30%、タブレット27%、コンピュータ26%、印刷物23%、ホームオーディオそのほか17%(注:これはVASSの利用により、39%の人がラジオ、34%の人がスマホ、30%の人がテレビの利用時間を減らしたことを表す)

 どうだろうか? これまで主要メディアとされてきたテレビもスマホも、今後どんどんVASSにシェアを奪われていくことが予想できないだろうか? すでにシェアを大きく落としている新聞、雑誌などのプリントメディアも、今後、さらに落ち込むのは間違いない。

 それを裏付けるのが、次の「最初の1カ月と比べて利用時間は増えましたか?」という質問に、回答者の51%が「より多く」、33%が「ほぼ同じ」、16%が「減った」と答えていることだ。アメリカ人は、VASSをすでに“親しい友人”として、その利用時間を増やしていることがわかる。

 では、どのようにVASSを利用しているのだろうか?

 回答者の多くは、「音楽を聴く」ために利用していた。つまり、VASSに楽曲検索をさせて、それをかけさせているわけだ。回答者の71%がVASSを購入後、音楽を聴く時間が増えたと答えている。また、60%が友人や家族と過ごすときにVASSで音楽を聴くと答えている。

 音楽に続くのが、「一般的な質問をする」で30%、「天気情報を聞く」の28%だ。

 また、どんな場面でVASSを利用したいかとの質問には、テレビを観る場合と答えた人の割合が53%、電話をかける場合が60%、自動車に乗車中が64%という結果になっていた。

 なお、VASSの利用に関しては、別の調査結果がある。「アドビ・アナリティクス」が行ったもので、これによると、「音楽」61%、「天気予報」60%、「面白い質問」を54%、「一般的な調査」53%、「行き方」39%、「リマインド」39%、「買い物」22%となっている。

 先日、ラスベガスで行われた家電見本市「CES 2018」では、グーグルがスマートスピーカーで大攻勢をかけた。会場のどこでも、「Google Home」への掛け声「Hey Google」と書かれた看板が目についた。そして、ほぼすべての展示メーカーが、音声アシスタント対応のテレビや家電製品をメインに展示した。こうしたことを見れば、今後はスマートスピーカー中心に、メディアも家電もクルマも対応して行く時代になるのは確実だ。

 すでに、スマートスピーカーのメーカー別シェアでは、アマゾン「Alexa」対応製品が約3分の2、「Google Home」が約4分の1となっていて、この2社がほぼ独占している。となると、このままいけばアマゾン&グーグルがすべてのメディアを支配する時代がやってくるだろう。

 そんななかで発表された「NPR」と「Edison Research」のレポートだが、音声メディアの専門家の手によるものだけに、メディア関係者の衝撃は大きい。

 今後、すべてのメディアの入り口が、音声アシスタントになる可能性がある。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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