これは地獄への道。日銀の追加緩和ではっきりしたアベノミクスの「金融詐欺」

■日銀とGPIFはいったいなにをやるのか?

10月31日、日銀が異次元緩和第2弾(追加緩和:黒田バズーカ砲第2弾)を発表した。また、政府はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株の運用比率を引き上げる改革案を承認した。

その結果、株価がなんと755円も上がり、円は一時112円台を記録した。

そこでまず、いったいなにが起こったのか整理してみたい。

《異次元緩和第2弾の内容》

・長期国債の買い入れを「保有残高が年間約80兆円に相当するペース」に増やす。(国債の平均残存年限を7-10年程度とし、最大3年程度延長する)

・ETFの買い入れを年間3兆円に増やす。(買い入れ対象に新たにJPX日経400連動型ETFを加える)

・不動産投資信託(J=REIT)の買い入を年間約900億円に増やす。

これによって、「2年で2%」という物価上昇目標の達成を促進する。黒田日銀総裁は「デフレマインドからの脱却」をまたもや強調し、「いまが正念場」と発言。つまり、追加緩和をやらないと目標達成は困難と判断したわけだ。

《GPIFの運用改革》

・ 国内株をこれまでの12%から25%に引き上げ

・外国債券は現行の11%から15%に、外国株式は12%から25%に引き上げ。

・国内債券は60%から35%に大幅に引き下げ。

資産規模127兆円のGPIFの運用は、これまで国債に偏っていた。これを大幅に改めて国内外の株式での運用を増やし、その分債券での運用を減らす。つまり、日本株を買うことで株式相場の上昇・維持を図るわけで、そうしないと株価が下がると判断したわけだ。

■財政ファイナンスと株価操作は「不正行為」

以上、日銀とGPIFがやろうとしていることを合わせると、政府がアベノミクスの失速(失敗)を極度に恐れていることがわかる。

アベノミクスが失敗していることは、最近の経済指標が軒並み悪化していることで明らかだが、まだ、国民周知の事実になっていない。しかし、このままなにもしないと、それが本当に国民周知になる。すると、12月に予定されている「消費税再増税」も流れる。

とすると、政府は「アベノミクスは間違いでした」と失敗宣言をするほかなくなる。もちろん、そんなことはできないから、またしてもバズーカ砲を撃ったと言うことだろう。

日本の財政は、国債発行という借金で支えられている。これ以上借金できないという限界点が来ると崩壊する。つまり、国債の引き受け手がいなくなった時点で終わりだ。

アベノミクスは、この国債の引き受け手を日銀にやってもらうという政策だった。

そのため、今回の追加緩和では、いままでGPIFが引き受けていた国債を日銀が引き受けることになっている。GPIFは、国債に回していた資金で株を買うというわけだ。

政府が借金を中央銀行に引き受けてもらう「財政ファイナンス」と、公的資金(国民の税金)で「株価操作」をやるというのは、どちらも明らかな「不正行為」である。市場を歪める。やってはいけないことだ。

しかし、アメリカは今回、量的緩和(QE)を止めたとはいえ、7年間もやってきたのだから、日本がやってはいけないという理由はない。ただし、アメリカは世界覇権を持っていてドルは基軸通貨だ。やらないと、世界が困る。

しかし、日本はまったく事情が違う。やり過ぎると、待っているのは、強烈な副作用だ。

■異次元緩和は止められないのに「サプライズ」?

アベノミクスは第3の矢の成長戦略を除いては、単なる景気刺激策で、ただのカンフル剤だ。

だから、実質的な効果はない。あると思っていた方々は、一部の経済学者(リフレ派と呼ばれる人々)と、その主張を受け入れた政治家、それに洗脳された一部の国民に過ぎない。

というわけで、カンフル剤は打ち続けなければならない。つまり、異次元緩和は止められない。当初は2年の予定だった。そして、今年末までに、日銀は国債購入で270兆円を積み上げることになっていた。それを、追加緩和でもっと積み上げることになった。

しかも、いつまでやるのか明言されていない。出口はあるのだろうか?

今回の追加緩和では、日銀委員のうち4人が反対した。しかし、5対4で、緩和が決定した。日銀は破れかぶれなのだろうか?

また、メディアは「サプライズ」と騒いだ。予想外だと言うのだ。

エコノミスト32人に対するブルームバーグ・ニュースの事前調査では、3人が追加緩和を予想、29人が現状維持を見込んでいた。エコノミストの予測はまったく信用できない。

■出口のないトンネル入り。出たら地獄が待っている

追加緩和がないとどうなっていただろうか?

日銀の当初の目標、国債買いで270兆円は今年の暮れまでに達成されるはずだった。そうすると出口戦略に移る。つまり、日銀は長期国債の買い手から降りる。そうなると、誰が国債を引き受けるのだろうか?

昔のように、国内の生保や銀行、GPIFが再び引き受けるのだろうか? もし、それができないとなるとどうなるのだろうか?

単純に考えて、日本国債は暴落し、金利は急上昇し、日本株も円も急落する。政府が目指したデフレ脱却は成功するが、その結果のインフレは予想をはるかに超えて、景気は悪化、財政破綻の危機がやって来る。

これが副作用だが、その副作用は強烈すぎる。円安がどうのこうの、消費税再増税がどのこうのというレベルではない。これが、やってはいけない「財政ファイナンス」の結果だ。日本は、出口のないトンネルに入った。出たら地獄が待っている。

■詐欺師ジョン・ローと同じことを日本はしている

アベノミクスの異次元金融緩和を、いまだに「景気対策」と思っている人がいるとしたら、おめでたいと言うしかない。私は、アベノミクスが始まったときから「その先には地獄が待っている」と書いてきた。そういう内容の本も書いた。

すでに、野口悠紀雄先生も書いているが、アベノミクスは18世紀の初めにフランスを財政破綻に追い込み、インフレと生産力の破壊を招いた詐欺師ジョン・ローの行為と同じだ。

ジョン・ローはミシシッピ会社を設立し、国の債務をこの会社の株式に移し替えた。これで、フランスは事実上、国債の負担から解放された。しかし、ミシシッピ会社には実体はなく、株価はバブルを起こしたが、3年を待たずにそのバブルは崩壊して、価値はゼロとなった。

中央銀行が国債を購入することで財政赤字をまかなうことを「国債の貨幣化」と呼ぶ。異次元緩和の本当の目的は、景気対策ではなく、国債の貨幣化である。それがわかっていて、投機筋はババ抜きゲームを行っている。

■奇跡が起こらない限り地獄はやって来る

アベノミクスは、国債を増発することで財政を拡張している。日本の国家予算は、拡大を続けている。

これは、一見するとなんの負担もないように見える。日銀が引き受けてくれるからだ。しかし、借金が負担なしにいつまでも続けられるという、そんな「うまい話」はありえない。いつか、誰かが必ず負担を負う。それが、私たち国民自身なのは明白だ。

もちろん、カンフル剤が効いているうちに、日本の実体経済がなにかの奇跡で爆発的な成長をする。そういうことが起こらないとは言えない。また、金融バズーカ砲を上回る構造改革のバズーカ砲が発射され、景気が奇跡的な回復を遂げる。それがないともいえない。

しかし、日本のような資源のない国、国民が額に汗して働いて富を創造しなければない国で、そんな奇跡が起こるだろうか?

起こらないと思うから、有力企業はみな国外に出ていき、富裕層は資産を円からドルに移し替えている。出口のない異次元緩和は、来年もまた続く。さらに再来年も続くかもしれない。アベノミクスの「金融詐欺」がいつまでもバレないことを願うしかない。