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細川氏、舛添氏、みなNO! 「五輪の顔」が老人でいいのか? 最大の課題は「世界一の超高齢シティ」!

山田順作家、ジャーナリスト

1月14日の二つのニュースに、私はととても暗い気分になった。いや、暗い気分というより絶望的な気分と言ったほうがいいかもしれない。

一つは、2020年の東京五輪の大会組織委員会の会長に、森喜朗元首相の就任が決まったこと。もう一つは、元首相の細川護熙氏が小泉純一郎元首相と会談後、都知事選に立候補を表明したことだ。

なぜ、私の気分が暗くなったかというと、それはこの二つのニュースの中身にあるのではない。ニュースの主役の年齢にある。

森喜朗元首相は76歳である。細川護熙元首相も76歳である。そして、細川氏を押す小泉純一郎元首相は72歳である。つまり、全員70歳を超えた高齢者。森と細川両氏にいたっては後期高齢者である。しかも、2020年の東京五輪のときには、森と細川両氏は80歳を超えてしまう。

とすると、オリンピック期間中は、この2人の老人が、世界中のメディアに「日本の顔」として登場する。オリンピックのような若いアスリートが集まる祭典に、こんな老人たちがふさわしいだろうか? もし、都知事が舛添要一氏になったとしても、現在65歳だから、オリンピックのときは70歳を超えている。

ただでさえ、日本は先進国としては世界最速で高齢化が進んでいる。いまや超高齢社会である。

総人口に占める高齢人口(65歳以上)の比率が14パーセント以上になると、「高齢社会」と呼ばれる。同じく21パーセントを超えると「超高齢社会」と呼ばれる。日本の高齢人口は、1970年の国勢調査時点では7.1%だった。それが、2007年にはとうとう65歳以上の人口が21.5%となり、ついに超高齢社会がやって来てしまった。

そして東京五輪が開かれる2020年、日本の総人口は1億2411万人に減り、そのうちの高齢者人口は3456万人、高齢化率は30%に迫ると推定されている。つまり、老人ばかりの街に、世界から若いアスリートと観光客が大挙してやって来る。東京オリンピックは、世界一高齢化が進んだ「老人の街」で開かれるのだ。

細川氏の立候補で、都知事選の争点は「反原発」になった。しかし、東京が抱えている最大の課題は、世界一の超高齢都市であるということだ。政府は、日本を観光立国化して、外国人観光客をたくさん呼ぼうとしている。しかし、いま日本にやって来る外国人観光客がいちばん驚くのが、「日本のタクシーや観光バスの運転手は、なぜ老人ばかりなのか?」ということだ。

知り合いのアメリカ人は、「東京のタクシードライバーは世界一親切だが、老人が多くて、その運転に冷や冷やすることがある」とボヤく。

オリンピック開催には大量のボランティアが必要とされる。そこで、私も応募しようかと思ったが、「オリンピックのときいくつになると思っているの? ボランティアが老人ばかりになったら、日本のイメージが損なわれるから辞退すべきよ」という妻の意見に、いまから悩んでいる。

本当に、五輪ボランティアが引退した老人ばかりになったら、世界は「老人シティ・トーキョ―」をどう見るだろうか?

それにつけても思うのは、高齢化が進むとともに、日本全体が「老害」に蝕まれていることだ。政治においても、会社においても、そのほかのあらゆる面でも、いまの日本はいつまでも引退しない老人がいるおかげで、大きく停滞してしまっている。

その意味で、暮れのNHK紅白歌合戦で引退を表明した歌手の北島三郎氏は潔かった。ただし、77歳だから、遅すぎたとも言える。芸能関係者によると、「北島氏以外に引退してほしい歌手はまだいっぱいいる」という。

息子の不祥事がなければテレビの顔で居続けであろう、みのもんた氏にしても、「早く辞めてくれないか」と思っていた人間は山ほどいる。みの氏も今年は70歳である。

私は、細川氏と小泉氏が主張する「反原発」に関しては、それなりに思うことはある。しかし、2人が、すでに引退したにもかかわらず、また表舞台に出てきたことに関しては、情けないと思う。なんとかならないのかと思う。

細川氏はついこの間まで「晴耕雨読」と言っていたはずだし、小泉氏にしても議員引退した時点で、政治の表舞台に戻る意思はまったくなかったはずだ。なのに、なぜ時間を巻き戻そうというのか?

この社会、とくにこれからの日本社会は、高齢化が進むだけに、若い人が動かすべきだ。

日本の「年功序列」「長幼の序」という文化は、昔は機能したが、グローバル化、IT化が進む現代社会ではむしろ弊害のほうが大きい。世界では、政治はもとより、企業でもトップはどんどん若返っている。それなのに、日本だけが「逃げ切り世代」(将来が少ない)とされる老人に社会を支配され、将来のある世代が自分たちの将来を決められないでいる。

しかも、老人たちと若者たちの間には決定的なデジタルデバイドがあり、情報量の差もついている。

このような考えから、私は選挙のたびに、政党、政治信条、マニフェスト、人柄など一切無視して、第一に若い、そして次に女性という理由だけで投票してきた。そうして、60歳以上の候補者には、どんなに共感が持てようと、一切投票しなかった。ここ10年以上、ずっとそうしてきた。

しかし、今回の都知事選は、驚くべきことに、泡沫候補を除いて60歳以下の候補者がいない。絶望だ。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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