LGBTなどの性的マイノリティは、国内人口の5-8%存在すると言われていて、(※1)平成29年3月の大学卒業予定者のうち性的マイノリティは2.1〜3.4万人にのぼると想定されます(※2)。

また、日本の全就業者数、約6322万人で考えてみると(※3)、LGBTの就業者数は480万人を超えます。

しかし現状では、「履歴書等、男女欄どっちに丸をつけていいかわからず、就活のスタート地点にすら立てない」「職場に理解がないのでは…と思うため、カミングアウトすることが不安」「就職面接でカミングアウトしたら帰れと言われた」など、トランスジェンダーの70%、同性愛者や両性愛者の44%が求職時にセクシュアリティ(性の在り方)に由来した困難を感じるといいます(※4)。

LGBTの子ども・若者の課題に取り組む認定NPO法人ReBit(りびっと)(https://rebitlgbt.org)では、2013年度より「LGBT就活」(就活生支援事業)を立ち上げ、「LGBTの人を含む全ての人が自分らしく働ける社会」の実現に向けて、10~20代のLGBTに向けたキャリア開発セミナーや、企業や自立就労支援者に向けた研修を多数開催してきました。

本記事では、ReBitのLGBT就活事業に関わっているLGBTの学生や若手社会人の実体験を紹介し、LGBTが抱える就活・就労時における困難についてお伝えします。

1.面接でのカミングアウト。する悩みもしない悩みも…

面接でカミングアウトするかしないかは、多くのLGBTの就活生が悩むことのひとつです。

就職後もセクシュアリティを隠さずに働きたい、という思いから面接でカミングアウトをする人や、セクシュアリティが原因で不採用になるのが怖い、という気持ちからカミングアウトせずに臨む人など、人によって様々。企業によって、するかしないかを見極める、という人もいます。

都内で働くトランスジェンダー男性のOさんは「戸籍を変えていないので、戸籍上は女性。そんな状態で男性物のスーツを着て、男性っぽい見た目の僕が面接に行くと、面接官は毎回必ずといっていいほど戸惑っていました。自分の望む性別で働くためには、面接、もしくはエントリーの時点でカミングアウトは避けては通れませんでした。」と話します。

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また、「面接で途中までいい感じで話していたのに、セクシュアリティの話になった途端、面接官の態度があからさまに変わってしまった」という経験も。「自分の能力が足りず落とされたのか、自分のセクシュアリティが原因で落とされたのか…それが分からなかったので、一時期かなり落ち込みました。」

また、カミングアウトしないで面接に臨むと決めた人にも、こんな悩みが。

大学4年生のパンセクシュアル女性のMさんは「セクシュアリティを理由に落とされたくなかったので、面接ではカミングアウトしませんでした。私の場合、志望理由や大学時代に頑張ったことが、セクシュアリティと密接に関係していたのですが、志望動機を聞かれたときなどは、自分のセクシュアリティに触れないように話をしなくてはなりませんでした。今思うと、セクシュアリティの部分に触れないようにしなきゃ!というポイントに意識がいきすぎて、うまく話すことができず、それが面接にも悪い影響を与えてしまったのかもしれません。」

2.不意打ちのように飛んでくる、職場での差別的な発言

1日の多くの時間を過ごす、職場。その職場でも、いわゆる「ホモネタ」や「SOGIハラ(※5)」といわれるようなLGBTに対する差別的な発言はまだまだ存在します。

都内のメーカーで働くゲイのFさんは「あの人って男なの?女なの?オカマなんじゃないの?」といったような、セクシュアリティがネタにされる場面に職場で遭遇することがあると話します。

「普段、普通に働いているところで、不意打ちのようにとんでくるこういった発言を聞くと心が痛くなります。自分に向けられたものではないですが、それでも傷つきます。」

都内のIT企業ではたらくレズビアンのIさんは、職場ではほとんどカミングアウトしていません。

「飲み会の席でセクハラ発言が飛び交ったり、『彼氏いないの?』と何度も聞かれたり…。いつも右から左へ受け流すようにして気にしないようにしていますが、飲みの場といえど気持ちのいいものではありません。」

3.人事担当者に思いがあっても、適切な配慮ができないことも

人事担当者などが、LGBTの社員に対して配慮ある対応をしたいという思いはあるにも関わらず、適切な対応の仕方がわからず、空回りしてしまったり、アウティング(※6)に繋がってしまうケースもあります。

前出のゲイのFさんは、セクシュアリティに関わらず自分らしく働けそう、という理由で現在働いているメーカーへの入社を決め、面接ではゲイであることをカミングアウトしました。人事担当者からは、「積極的に社内のダイバーシティを推進したい」という言葉ももらっていたそうです。

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しかし、入社前、社宅への引越しの際に、自分だけが女性社員用のフロアに部屋を用意されていることに気がつき驚きました。

「対応しようとしてくれている気持ちは分かったけど、私はゲイであって、性自認は男性。女性として扱ってほしいわけではないのに…。勝手に決める前に、一言聞いてくれればよかったのに…と思います。」

前出のトランスジェンダー男性のOさんは「私の会社では、人事部が持っている社員のデータベースに、人事部に仮配属になっていた新入社員もアクセスできる状態でした。会社では男性として働いていて、人事担当者以外には自分がトランスジェンダーであることを伝えていないので、データベースを見た他の新入社員に自分の戸籍上の性別がばれかけるということがありました。」

■急ピッチで進む対応。行政も企業も

しかしそんな状況を受け、近年、行政や企業などを中心に、LGBTと就活・就労に関する社会課題の解決に向けて、日本中で様々な対応が急速に進みはじめています。

2017年、厚生労働省は『公正な採用選考の基本』に、「公正な採用選考を行うためには(中略)LGBT等性的マイノリティの方など特定の人を排除しないことが必要」と記載。企業や団体に対し、採用選考における公正を求めました。

2017年の経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向調査によると、LGBTに対応する取り組みを実施している企業は42.1%、検討中の企業は34.3%であり、企業の関心の高まりが見られます。

企業の取り組みが増加している要因の1つに2020 年の東京オリンピック・パラリンピックがあります。2015 年、オリンピック憲章に、性的指向による差別禁止が明記され、また、2017年にはオリンピック・パラリンピックにかかわるすべての企業に遵守が求められる「持続可能性に配慮した調達コード」に、性的指向・性自認による差別禁止等が明記されたことを受けて、これからも企業の取り組みが増加することが考えられます。

また、2018年10月5日に東京都議会本会議において成立した「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例」案にも第4条において「都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」と記載されるなど差別の禁止が記載されたことで、企業の今後の取り組みがさらに注目をされています。

■LGBTを切り口に「誰もが自分らしく働ける社会」を共創する

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このように「LGBTの就活・就労」に関する動きが活発化し始めているなかで、さらにこの動きを加速させるべく、ReBitは2016年から毎年秋に、LGBTの就活・就労について考えるカンファレンス「RAINBOW CROSSING TOKYO」を実施しています。

今年で3回目を迎える「RAINBOW CROSSING TOKYO 」は、10月21日(日)に東京大学 本郷キャンパスで開催予定です。企業、行政、大学、就労支援者など就労に関わる全てのセクターと、LGBT当事者がともに、「LGBTも自分らしく働く」ことを切り口に「誰もが自分らしく働く」ことについて考え・対話できるコンテンツを数多く予定しています。

ReBitは「RAINBOW CROSSING TOKYO」の開催を通じて、学生・就活生・求職者、企業、就労支援者、学校関係者など就労に関わる全セクターが意見・取り組みを共有することで、LGBTにとっても納得感のある職業選択や企業の受け入れ態勢強化につなげ、セクシュアリティに関わらず就業・職業選択ができる社会の実現を目指しています。

LGBTの人たちはもちろん、「働く」に関するセクターに従事している人、あるいは「自分らしく働く」ことを考えたい全ての人にぜひお越しいただきたいイベントです。

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【RAINBOW CROSSING TOKYO 2018】

http://lgbtcareer.org/rainbowcrossing/

日時:2018年10月21日(日)9:45-18:15

場所:東京大学本郷キャンパス

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/map01_02.html

主催:認定特定非営利活動法人ReBit(りびっと)

午前の部:キーノートセッション(9:45~12:40(開場9:30)・安田講堂)

・国際労働機関(ILO) 駐日代表 田口晶子氏によるキーノートスピーチ

・調査報告 「性的マイノリティの就職活動における経験と就労支援の現状」

・企業担当者やLGBTアライの社員によるパネルディスカッション など

午後の部:ダイアローグ(13:30~18:15(開場13:00)・御殿下記念館)

・出展企業のLGBTやダイバーシティへの取り組みを知るブース

・大学、行政での就労支援体制について知るブース

・LGBT の社会人たちと交流し、キャリアについて考えるブース

・働きやすい職場について参加者と意見交換をするブース

・自分らしいスーツやメークを試すブース など

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<参加企業>

アクセンチュア株式会社、NTTグループ、LGBTファイナンス(12社)、ギャップジャパン株式会社、グーグル合同会社、株式会社資生堂、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ、株式会社ラッシュジャパン、ソニー株式会社、日本電気株式会社、株式会社丸井グループ、ユニリーバ・ジャパン、武田薬品工業株式会社、日本航空株式会社、KDDI株式会社、日本マイクロソフト株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、BLOOMBERG L.P.、EY Japan、日本アイ・ビー・エム株式会社、KPMGグループ、キャスレーコンサルティング株式会社、株式会社プラップジャパン、株式会社ペンシル

<後援団体>

厚生労働省、東京都、文京区、一般社団法人日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会(連合)、全国中小企業団体中央会、東京大学

<賛同>

お茶の水女子大学、金沢大学、国際基督教大学、中央大学筑波大学、津田塾大学、法政大学、明治大学、立教大学、早稲田大学

※1諸外国の調査ではLGBTは概ね2-5%程度などと推定されている。(釜野さおり・石田仁・風間孝・吉仲崇・河口和也(2015年)、性的マイノリティについての意識調査2015年全国調査報告書,207ページ)、国内の調査ではLGBTは7.6%(平成27年電通ダイバーシティラボ)や、8%(平成28年 LGBT総合研究所)といった結果がある。

※2]厚生労働省「平成28年度 大学等卒業予定者の就職内定状況調査」により、平成29年3月の大学卒業予定者のうち就職希望者数は42.6万人。うち性的マイノリティの推計人口5~8%として計算。

※3: 総務省統計局「労働力調査(基本集計) 平成27年(2015年)2月分結果」より

※4: 2016 特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 調査より

※5SOGI:Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字をとった言葉で性的指向と性自認という意味で国際的に使われている。SOGIハラは、性的指向と性自認に関するハラスメントを指す。

※6アウティングとは、本人にカミングアウトの意思がないにも関わらず、他者がその人のセクシュアリティを勝手に第三者に伝えてしまうこと