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確実にしゃっくりを止める方法は?

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
しゃっくりは驚かせて止めますか?(写真:アフロ)

しゃっくりで救急受診

救急外来や、夜間外来に、たまにしゃっくりが止まらないと言って受診される方がいます。最近もそんな方がいらっしゃいました。しゃっくりを100回したら死ぬみたいな都市伝説もある様ですが、そんなことはありませんので、緊急に止める必要は全くありません。

ただ、ずっとしゃっくりしているとしんどくなってしまいますよね。日中我慢していても、夜間になり我慢できなくなって受診するパターンが多いのだと思います。しゃっくりごときで救急?だなんて思いませんし、来ていただいたら毎度しゃっくりを止めているのですが、もし、家にあるもので簡単にしゃっくりが止められたら嬉しくないですか?

しゃっくりとは?

しゃっくりは、医学用語では「吃逆(きつぎゃく)」と書きます。吃逆は横隔膜が不随意的(意図せず)に痙攣を起こすことで生じるもので、中枢神経から横隔膜までの神経経路を刺激する病態があれば起こると考えられます。救急医がしゃっくりを診察するときは、神経疾患含め様々な病態が隠れている可能性を考えるのですが、多くの場合は食べ過ぎなどで迷走神経や横隔膜を刺激して発生しています。

しゃっくりの治療

そもそも迷走神経や横隔膜の刺激で起こるので、再度同じ様な刺激を与えると治ることが多いです。例えば、息こらえなどが有名ですね。驚かせて止めるという方法もまことしやかに伝わっていますが、息こらえを強制的に起こしているのでしょうか…。ですが、こんなことで治れば病院に行かなくても良いわけです。

病院では一般的にどの様に治療するのでしょうか?投薬治療としては、クロルプロマジン(興奮などを抑える抗精神病薬)やメトクロプラミド(消化管の蠕動を促す薬)といった薬剤を使用することがあります。使用頻度の高い薬剤であり医師は慣れているという一方で、高齢者では副作用のこともあり、無闇矢鱈には使いにくいなという印象があります。

自然界でもしゃっくりに効くものがあり、柿のヘタが有名です。漢方では「柿蒂(シテイ)」と言います。しゃっくりを治したかったら柿のヘタを20個煎じて飲めば良いのです。良いのですって言っても、病院の外来に柿のヘタを大量に置いているわけがありませんし、家に柿のヘタを大量に集めているという人もかなり珍しいと思います(いるの?)。でも安心してください。そんな時は漢方製剤として柿蔕、丁子(チョウジ)、生姜(ショウキョウ)が配合されている「柿蒂湯(シテイトウ)」が販売されておりますのでそれを使ったらいいと思います。その辺の薬局にも多分売っております。その他、こむら返り(筋痙攣)に使用する芍薬甘草湯もしばしば使用されます。柿蒂湯がなくても、芍薬甘草湯であれば院内に常備しているところも多く、休日や夜間でも処方されやすいかもしれません。

家にあるもの→酢

最初に家にあるものでしゃっくりを止められたら嬉しくないか?と書いたので、家にあるもので止める方法を書いておきます。僕が個人的にお勧めしているのが、酢を少量飲むことです。ショットグラスに一杯程度で良いです。一気に飲みます。ショットグラスでなくてもいいですが、少量の酢を一気に飲めば、咽頭から食道を通過することで迷走神経刺激となりしゃっくりを止めることができるのです。点鼻で止める方法が報告されていますが、自分で鼻に酢を注入するのは勇気がいります。飲めば止まるので飲んでみましょう。これで止まらなかった人は今のところいらっしゃいません。

酢はつらい…という人は、ショットグラスにウイスキーを入れて飲めば、アルコールの刺激で止まるかもしれません。検者僕、被検者僕の小規模研究しかありませんが、これで止まった事をここに報告しておきます。病院に車で来た人にはお勧めできませんが、家にアルコール度数の高いお酒があればできると思います。さらなる研究が必要です。

それでも止まらない時は

もし、これで止まらない時は、何らかの異常があるのかもしれないと思い、病院受診を検討してください。何度止めても繰り返す場合には、脳腫瘍などの頭蓋内病変が隠れている場合や、迷走神経に異常を来す病変があるかもしれません。

以前、入院中の患者さんで、しゃっくりが止まらず、食事もままならなくなっている方がいらっしゃいました。その方は、食道に食物残渣がはまりこんでいて、その刺激でしゃっくりが止まらなくなっていました。消化管内視鏡で残渣を取り除いたことで、めでたくしゃっくりがおさまって食事もできるようになりました。原因検索は大事です。

まとめ

・しゃっくりが止まらない時は酢をショットグラスに一杯だけ一気に飲んでみる

・酢がつらかったら蒸留酒をストレートで一気に飲んでみる

・止まらなかったり、繰り返したりする場合は病院へ

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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