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【シリーズ救急の日】救急車を呼ぶべき時は?アプリの有効活用も!

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
救急車を呼ぶべき時は(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

救急の日

9月9日は救急の日です。救急の日から1週間は「救急医療週間」として、日本全国で救急に関する様々な行事が実施されています。この機会に、シリーズで救急医療の話をしています。今回は第2回。前回の記事はこちら

緊急度と重症度

前回、救急要請をした時に、サイレンを鳴らして欲しくない人が多いという話をしました。その様におっしゃる背景には、実のところそこまで急いでいないという実情があるのかもしれないなと思います。どれだけ急がなくてはならないかを考える指標は、緊急度です。重症度ではありません。日本の救急搬送の実情を見ると、救急搬送の半分ほどは、入院を必要としない軽症患者さんです。

傷病程度別の搬送人員と5年ごとの構成比の推移:総務省「令和元年版 救急・救助の現況」より
傷病程度別の搬送人員と5年ごとの構成比の推移:総務省「令和元年版 救急・救助の現況」より

軽症というのは入院しなかったというだけのことで、必ずしも緊急性は反映していません。軽症の多くは緊急性が低いのかもしれませんが、軽症でも急がねばならない場合もあり、発作的に症状が出現したものの、迅速な処置で症状が短時間で改善し、入院の必要がなくなるということもよく経験します。緊急度も低く重症度も低い場合はいわゆる不適切利用になってしまうのかもしれませんが、緊急度と重症度は必ずしも一致するものではありません。緊急時には、入院するしないにかかわらず救急要請すべきです。

緊急度が高くない場合も

一方、緊急度が高くない救急要請も多々あります。緊急度は高くないけれども重症度が高いというのも、よくあることだからです。急いでいるわけではないけれども、救急車を呼ばざるを得ない場面というのがあります。何らかの理由で起き上がることができなくなってしまっている高齢者を病院に連れて行きたいけれども、寝たまま移動する交通手段がないという場合や、転倒して自分自身が動けなくなってしまっている事態などです。「急ぎはしないけれども、どうにか病院に行きたい」という気持ちが強ければ、サイレンを鳴らして欲しくないと思われても不思議ではありません。そうは言っても、救急車は緊急に搬送をするためのシステム。「急がないけど動けない」という場合は、代替案が必要です。このような場合には、民間救急車介護タクシーの利用も考慮いただければと思います。一般的に、タクシーは医療費控除の対象になりませんが、移動手段がない場合、タクシーを利用せざるを得ない場合には医療費控除の対象になります。救急車と違って、直接お金を払わなくて良いというわけではないですが、救いの道になると思います。

救急車で来なくても診療可能な場合もある

夜間などで、救急車を呼ばないと診察が受けられないと思われている方もいらっしゃるかもしれません。実は意外とそうでもなくて、夜間に受診の相談があったときには、救急車で来ても来なくても診療内容が変わらないことは往々にしてあります。軽症であるなら尚更です。もしどのような手段で来院されても診療内容が変わらなさそうであれば、その旨をお知らせしています。猶予がありそうなら、緊急度が低そうだということも説明しますし(翌日受診でも良さそうならさらに説明)、緊急度が高ければ即時救急要請するように伝えることもあります。救急車以外の手段も紹介しつつ、ご自身の状態と相談しながら、交通手段を選択してもらうわけです。

電話した先がすぐに対応してくれれば良いですが、いくつかの病院に連絡をしたものの診療可能なところがなく、受診の必要性もわからず、困ってしまって救急要請という場合もあります。この様な事態に陥らないよう、緊急受診の必要があるかどうかを判断するシステムをもっと広めたり(#7119など)、walk-inの救急患者さんへの対応を拡充させたりしていくのが今後の課題です。現時点での解決策として、総務省消防庁が作成している救急受診ガイドアプリ「Q助」が使いやすく、オススメできます。症状を入力していくと、緊急度を教えてくれます。ぜひご活用ください。

Q助広報用チラシ:総務省消防庁HP(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate003.html)
Q助広報用チラシ:総務省消防庁HP(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate003.html)

我々も24時間365日、電話相談にのったり、交通手段にかかわらず診療したいと思うのですが、今の日本はそこまでの体制を敷くに至っておりません。医療機関のマンパワーが不足しがちな夜間や休日に電話を入れると、なかなかに対応がしにくい部分も出てくるものです。利便性も大事ですが、緊急性を重要視して、医療体制の維持に視線を向けていただければ幸いです。我々は、できる限り医療体制が拡充されるよう頑張ります。

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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