【Yahoo!ニュース 個人】6月の月間MVAとMVCが決定

(写真:アフロ)

■Yahoo!ニュース 個人、6月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選6本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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6月のMVA

日産から幹部が「大量脱走」 背景に内田社長への不満か(井上久男)

筆者による受賞コメント:日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏の逮捕以降、コーポレートガバナンスの再建が急務でありながら、いまだに日産の経営は迷走しています。その象徴的な出来事が、西川廣人前社長辞任後の新社長選びでした。社外取締役で構成される指名委員会6人のうち3人が後任に関潤専務(当時)を推したことで関氏の社長就任が決まりかけましたが、仏ルノーが猛反対したため、一転して指名委員会での支持が当初「ゼロ」だった内田誠専務(同)が昨年12月1日付で昇格しました。新体制で関氏は副COOというナンバー3のポストに就きましたが、すぐに退任を表明。その後、日本電産に転職し、社長に就きました。こうした人事のごたごたを取材する過程で、上級幹部3人も日本電産に転職する動きをキャッチしました。さらに退社する動きもあるようです。まるで「泥船」から逃げ出すかのごとくです。末筆ながらこの度は月間MVAの受賞にあずかり御礼申し上げます。(井上久男

選出理由:日産自動車の元上級幹部3人が、日本電産に転職したことをいち早く報じた記事です。なぜこのような人材流出が起きているのか、日産の現状にも鋭く迫って解説しています。自動車業界に精通し、豊富な人脈がある筆者だからこその記事です。

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創刊30余年のタウン誌に東海ウォーカーも存続。名古屋で情報誌が愛される理由とは?(大竹敏之)

筆者による受賞コメント:名古屋の情報誌事情は長年のひそかな取材テーマでした。私がおよそ30年、名古屋在住でフリーライターをやってこられたのは、地元に情報誌のマーケットがあったからに他なりません。地域発の雑誌産業がこれだけ発達している街は他になく、にもかかわらずそれが全国で認知されることはありません。駆け出し時代に売り込みに行った東京の出版社で「名古屋ってライターいるんだ!?」と驚かれたのは、今でも「自分はその名古屋でライターとして食っていくんだ!」という決意の原動力になっています。このテーマは20年来独自に取材を続け、何度かメディア批評誌などに投稿したものの日の目を見ませんでした。今回ようやく人様の目にふれる機会を作ることができ、育ててくれた地元の雑誌業界への恩返しに少しはなったのではないかと感じ入っています。今後もホームタウン・名古屋を元気づけられる話題を拾い上げていくことが名古屋ライターである私の役目だとあらためて意を固くしております。(大竹敏之

選出理由:雑誌不況にもかかわらず、名古屋の情報誌が愛されている理由についてわかりやすく伝えています。「製作スタッフはほぼ地元の人で、きめ細かな情報を持っている」「喫茶店には多数の雑誌があり、活字文化を支えている」など、ご当地ならではの背景がありました。出版社の今後の戦略にも触れていて、大変読み応えのある記事です。

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マツコの知らない世界で人気沸騰したホテルが経営破綻!その非情な現場(瀧澤信秋)

筆者による受賞コメント:様々なホテルを取材していますが、破綻して“なくなった”ホテルを取材するのは極めて異例でした。一方で過去出演した人気テレビ番組で紹介するなど、思い入れのあったホテルだけに、これを書けるのは自分だけだと奮い立たせ現地(滋賀県)へ取材に出向きました。元スタッフとの信頼関係も深かっただけに実りある取材となり、綿密な取材はリアリティある記事を生み出すことを改めて実感しました。(瀧澤信秋

選出理由:アットホームな雰囲気で地域密着の大型リゾートホテルとして愛されながら2020年4月28日に事業停止してしまった「ロイヤルオークホテル スパ&ガーデンズ」。コロナ禍が決定的な影響を及ぼした混乱から少し経って、筆者のインタビューに答える元スタッフたちの肉声には怒りや悔しさ・悲しみ、そしてホテルへの愛もにじみ出ます。一宿泊者としてもファンだったという筆者の思い入れも感じる1本です。

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中国「無人コンビニ」ブームの結末と、新興スマートコンビニ「便利蜂」の強みとは(滝沢頼子)

筆者による受賞コメント:ここ数年、中国のテクノロジーやデジタル事情がキャッチーな形でメディアで取り上げられることが増えました。表面的な事実を紹介し「中国ってすごい」「中国ってこわい」など、センセーショナルな伝え方をする記事も多く見受けられますが、一つ視点を上げ、示唆や学びを得られる記事をお届けしたいと思い、本記事の執筆に至りました。賞に選んでいただけたこと、大変感謝しております。ありがとうございました。(滝沢頼子

選出理由:日本でも注目度が高かった中国「無人コンビニ」の現在の姿を、現地の様子とともに伝えてくれた記事です。多くの無人コンビニが倒産同然となってしまった要因を、ユーザー視点からわかりやすく解説してくれています。一方で、高度なデジタル化とデータ活用によって躍進するスマートコンビニ・便利蜂の成功を分析することで、テクノロジーがもたらすであろう今後の生活の大きな変化を予感させてくれる内容に仕上がっています。

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キッズラインのシッター2人目、わいせつ容疑で逮捕 内閣府補助対象、コロナで休園中に母在宅勤務の隣室で(中野円佳)

筆者による受賞コメント:この記事をきっかけに、厚生労働省のシッター利用における注意喚起の文言変更、厚生労働大臣のシッター制度見直し発言、被害者家族と保育事業者らが保育教育現場での犯罪歴照会制度を求める記者会見及び法務大臣への要望提出をするなど、国全体を巻き込んだ議論が動き出したと感じます。記事に対しては読むのもつらいという声もあがり、またこの事件の周知によりシッターを頼みづらくなる等の弊害もあったことについては心苦しく思いますが、キッズライン個社の問題については改善をしてもらい、また国全体としても法整備が進むことを願い、引き続きこのテーマを追いたいと思います。これ以上同様の被害者を増やしたくないという思いで連絡をくださり、声をあげられた被害者のご家族に感謝と敬意を表します。(中野円佳

選出理由:大手ベビーシッターマッチングアプリ「キッズライン」の登録シッターが逮捕された件に関して、経緯をレポートした記事です。被害の証言とともに、時系列で出来事を詳細に伝えています。スピーディーに利用者に注意喚起し、さらには、保育の現場で性犯罪をどう防いでいくか、そもそも保育の質をどう担保するか、制度設計についても問題提起する意義のある内容です。

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夏に多い『青身魚のうそアレルギー』とは?アレルギー専門医が解説(堀向健太)

筆者による受賞コメント:月間MVAに選出いただき、大変光栄です。夏が近づいてくると経験することが増える『ヒスタミン中毒』を知っていただくことで皆さんのリスクを減らせないかと考えて作成いたしました。あえて難しい用語を避け、専門用語ではない『うそアレルギー』という言葉を使いましたが、医師からも『分かりやすくする為に“うそアレルギー”って書かれたのも言葉を色々悩まれたんだろうと思います。多くの人に伝える細かい配慮感じます』というコメントをいただき、胸をなでおろしました。外来では、極力難しい言葉を避けて平易なことばで伝える努力をしていますが、その経験が生きたかもしれません。この記事を読んで頂く機会が増えることで、患者さんと医療者の相互理解の助けになることを願っています。改めて感謝いたします。(堀向健太

選出理由:この時期になると魚の『本物ではないアレルギー』が増えるという医療現場の話から、メカニズムや注意点などを解説した記事です。「仮性アレルゲン」や「薬理活性物質」による症状という専門用語を避けて、「うそアレルギー」と平易な言葉を用いたり、アレルギーとの違いがはっきりわかるように図解を作成したりと、むずかしい話をできる限りかみ砕き、読者に伝わるように配慮の行き届いた労作です。

6月のMVC

『オンリーワン目指した富岳 ガラパゴス化した京』の記事へのオーサーコメント(森井昌克)

筆者による受賞コメント:「2位じゃダメなんですか!?」という、2010年度国家予算編成で話題となったスパコン京でしたが、決して世界一だけを目指したスパコンではなかったのです。世界一になったのは一瞬でしたが、気象に関係する災害対策をはじめ、医薬品や自動車の設計等で約10年間ほとんど休むことなく働き続け、様々な科学技術の成果において縁の下の力持役割を担ってきました。その功績が広く認められてこそ、その後継となる次代のスパコン富岳の意義が深まるのです。華々しい記録や成果だけが取り上げられがちな科学技術ですが、これからも目立たないながらも重要な基盤技術をはじめ、社会を支える技術について、わかりやすく、そして的を射たコメントを心がけたいと考えています。今回の受賞、ありがとうございました。(森井昌克

選出理由:9年ぶりに日本のスーパーコンピューター「富岳」が世界一に返り咲いたニュースに関連して、2009年の事業仕分けの対象事業として、世間の注目を集めた「京」について性能や功績をあらためてたたえ、ねぎらうような筆者の専門性があってこそのオーサーコメントです。