【PR】「最高の肉」が「最高の料理」とは限らない 食のプロが教える「美味しい」に出会うコツ

人と食は、切っても切り離せない関係にあります。かつては栄養を摂取することのみを目的とした原始的な行動は、料理という概念が生まれたことで、やがて生きるうえでの楽しみへと変化していきました。

外食産業も目覚ましい発展を遂げ、美味しい食事のために長い行列に並ぶような行為も、今や珍しいことではありません。

そんな豊食の時代に、フードアクティビストとして精力的な活動を続けるのが松浦達也さん。美味しいお店や隠れた名店の紹介などはもちろん、「食から見た地方論」や「食文化」、「調理の仕組みと科学」などの考察記事は、読む人を深い食の世界へと誘ってくれます。

執筆の際は、論文を読み漁り、生産者に取材し、実際に調理して再現するなど、「食」に対する真摯な取り組みを続けてきた松浦さんに、今だからこそ向き合うべき食との関わり方、食の楽しみ方について、じっくりとお話を伺いました。

「食」を正しく伝えるためには、美味しい料理を「食べる」だけではいけない

論文や学会誌をチェックする姿勢は、長年のライター活動を通して培われた最適な方法だそう
論文や学会誌をチェックする姿勢は、長年のライター活動を通して培われた最適な方法だそう

――松浦さんは「フードアクティビスト」として、具体的にどのような活動をされているのでしょうか。

松浦:あ、実はその肩書きに特にこだわりがあるわけでもないんです(笑)。

もともと気が散りがちな気質で、いわゆるフードライターらしいお店の紹介の企画にも携わりますし、ひとつの料理に対して数十、数百パターンの試作を延々繰り返す"実験"系の企画も大好きです。

一方で食資源や環境課題に触れるような記事も書くし、メニューやレシピを作る仕事もやっているしで、どう名乗っていいかわからない時期があり、知人につけてもらったんです。

そんな調子だから肩書きは、お声がけくださったメディアや番組にお任せすることも多いですね。フードライター、フードジャーナリスト、グルメライター、料理研究家などなど。食べ物以外も含めた、編集やプランナー領域の仕事もしています。敬愛する高田純次さんも「第三者が思ってくれるのが肩書き」(参照)と仰っていますしね(笑)。

――確かに「フードライター」と「フードアクティビスト」では、印象が全く異なりますね。

松浦:肩書きに対して持つイメージって人によって少しずつ違いますよね。

本当は「ライター」とか「編集者」で十分なんですが、どちらの肩書きも内包する意味がこの15年ほどでずいぶん変わってきました。仕事について話をすると「それ、ライターじゃなくて、ジャーナリストじゃないですか」とか「編集者というより、講師みたいですね」とか。

――肩書きが指し示す意味が変わってきているということでしょうか。

松浦:そうですね。例えば「ライター」という仕事は、世にある事実を検証して裏取りをして事実に即した発信をするものだと思っていました。

ところが最近若いライターさんと話していたら「松浦さんはライターじゃなくて、ジャーナリストじゃないですか」と言われて、そこに線を引くのかと驚きました。

後者の「編集者」も本来は大量のインプットを土台に企画を考え、ライターなど周辺職種と連携して企画を練り上げていく職種。「正しい」と信じられる仮説に基づいて、企画を推し進める推進力と、違和感を覚えたら舵を切り直す柔軟性を持ちながら、適切な角度と強度で企画を仕上げていく。

特に書籍などは著者自身の評価に直結しますし、Webと違って後から直せないから慎重になりますよね。

――著書の『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』など、検証に手間のかかる本を出版されていますよね。

松浦:「美味しい」と体感したものに対して、知見を重ねて手法をストックする。論文などで仕組みを検証して、再現できるか何回も調理をする。肉も卵も加熱温度が重要なファクターだったので、「安全」を担保するための調べ物が一番大変だったかもしれません。

理屈をベースで料理に取り組む人は意外に少なく、古い調理法や間違った手順など誤った常識が固定化してしまっているケースも意外に珍しくありません。

一方で、料理の世界は日進月歩で進化している世界でもあるからこそ、料理研究家や料理人に対してアップデートの機会を提供していきたいと思っています。逆に家庭の台所に立つ方でも正しい手順で調理をすれば、プロの料理人以上の料理を作ることができるとも考えています。

そういう情報を正しく発信していくために、頼りになるのが学術論文です。

食関連の研究誌や学会誌から、信頼性の高いデータやアプローチを探る。PDCAサイクルにも似ていますが、食べ物や調理の場合は「食べる」「作る」という体感・体験ー"Experience"が重要ですから、「E-PDCA」ともいうようなサイクルで進めています。

何よりも身近な「食」の問題だからこそ、私たちも知っておくべきことは多い

居酒屋やスーパーで提供されているからといって、食の安全は担保されているわけではない
居酒屋やスーパーで提供されているからといって、食の安全は担保されているわけではない

――ヤフーニュース個人では、食の安全に関する情報も積極的に配信されています。『今年も発生。鶏肉の生食由来の食中毒事件が各地で後をたたないやるせなさ』という記事の内容も、非常にショッキングなものでした。

松浦:特に「食の安全」については、「誤った常識」を正していくのも大切だと考えています。安全を上回る美食はありえません。

「世間に流通するほとんどの鶏肉は加熱用」、「加熱用の鶏肉を生食してはいけない」、「どんなに新鮮でも危険なものは危険」という話を毎年のようにいろんなメディアで書いているんですが、そのたびにTwitterなどで「鳥刺しでギラン・バレー? 知らなかった」というような声を見かけます。

ただ「鶏肉の生食」については、鹿児島や宮崎では安全を確保するため、ガイドラインが更新され続けていることなど、ポジティブな新情報を盛り込むことができたのはよかったですね。

ひとたび大規模な食中毒が発生すれば、全国的にご禁制の品になる可能性がある。なんとかして安全に食べられないかと工夫を続けてきた、鹿児島や宮崎の努力を、東京など他地域の人が台無しにしていいわけがありません。

飲食店であれば、まず店が食材や調理法にどんなリスクがあるのかを理解し、筋道立てて説明できるよう備えておくべきです。そして客側も何が安全で、何が危険かという最低限の知識は入れておきたいですね。

逆にそうした知識もなく、飲食店で過剰な要求をしたり、過敏な反応をするのはいい振る舞いとは言えません。

――私たちお客側としても、食について「知っておくべきこと」は、たくさんありそうですね。安全性もさることながら、「美味しい店との出会い方」も知識があるのとないのとでは、雲泥の差がありそうです。

松浦:毀誉褒貶もありますが、口コミサイトなどは使い方次第だと思います。点数を盲信すると痛い目に遭うこともありますが、自分と好みが近い人をベンチマークするとか、あら捜しをするのではなく良い部分を探すくらいの気持ちで使えば、口コミサイトもまだまだ有用です。

ただ理想を言えば自分の感覚と近いと思える、顔の見える友人を見つけたいですね。

顔の見えないネットには"集合知"もあれば"集合愚"もある。建前と本音の区別もつきづらい。しかもGoogleも含めた口コミサイトはそれぞれ「加点ルール」が異なり、しかもそのルールも変わっていきます。

そんな数字をどう読み解くかに腐心するより、食いしん坊仲間としっかりコミュニケーションを取ったほうが精度は高いと思います。

――ある意味、アナログな情報の価値が高くなるわけですね。ただ、そういうグルメな友人が、特には思い浮かばないのですが……。

松浦:例えば、自分が好きなレストランの店主に、おすすめのお店を教えてもらう「わらしべ長者」方式もありますよ。特に同じジャンルの飲食店の店主だと、好みが似ている可能性は高いですね。

――そのためには、まず店主と仲良くなることが重要ですよね。それはそれで違う難しさというか、高いハードルを感じてしまうのですが。

松浦:客としての領分をわきまえた上で、店主とコミュニケーションを深めようとするのはいいことだと思いますよ。ただ、常連顔して特別扱いを要求するなどはおかしな話。店にかけた過剰な負担は、いずれ客に跳ね返ってきます。

僕個人としては、一定の距離感がある店のほうが好きですね。通ううちに特別扱いをしてくれるような店もありますが、他の客の目などが気になってドキドキしちゃいます。普段の接客が気持ちいい店が好きですね。

食にまつわる知識を深めれば、食はもっと楽しくなる

有料版だからこそ踏み込んでいける問題はいろいろある、と語る松浦さん
有料版だからこそ踏み込んでいける問題はいろいろある、と語る松浦さん

――松浦さんはこれまでニュース個人で、食に関する興味深い情報記事を何本も執筆されてきました。今回2020年1月より配信開始の『食とグルメ、本当のナイショ話 -生産現場から飲食店まで-』という連載シリーズでは、どのような情報を発信されていくのでしょうか。

松浦:単なる有料版というより、クローズドな空間だと考え、そのなかで共犯関係が作っていけるといいなと考えています。

だからそこでは、半ばタブー視されているような食の問題にも踏み込んでいこうかと思っています。「誰も何も言わないけど、この流れって本当に正しいの?」という問題提起をしていきたいですね。

以前ニュース個人でも『日本で特異な進化をした「和牛」は海外にどう受け止められるのか』という記事を書きましたが、「A5」が味として肉の最高峰かというとそうとは限らないわけです。

――え! A5ランク肉に、何か問題があるのですか?

松浦:現在の格付制度は30年以上前に作られたものですが、近年の「A5」は30年前に比べて「サシ」が3倍にもなっているという調査結果もあります。市場関係者や料理人に聞いても「感覚値でも倍は違う」と言うほどです。

ただ、生産者にとっては「最高と評価される肉」が高く売れるわけですから、当然「A5」を目指す。その結果、料理人も客も望んでいないようなサシだらけの肉が流通してしまう……。

と、オープンな場ではこのくらいに留めるわけですが、クローズドとなる有料版ではもう少し具体的な話にするかもしれません。

――なるほど。有料版では、そのように深く切り込まれていくテーマがいろいろあるわけですね。

松浦:和牛肉のランクの話以外にも、二極化する飲食店事情、新規店舗開店の難しさ、アルバイトが集まらない外食産業事情など、おおっぴらに、しかも正直に書くと炎上しかねない話もありますから。

もちろん、そうした公開の場では書きづらい話以外にも、家での食事や外食をより一層楽しむための情報も発信していくつもりです。さらに、無料版よりも多面的に食を深掘りする記事も配信していきたいと考えています。

この連載を読むことで、これまでと同じ皿の料理が、もっともっと愉しめるようになってもらえるとうれしいですね。

画像

松浦 達也(まつうら たつや)

『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド/ニュース解説も。著書『大人の肉ドリル』(マガジンハウス)などのほか、経営者や政治家、アーティストなどの書籍・コンテンツの企画・構成も多数。共著の『東京最高のレストラン』審査員。マンガ大賞選考員でもある。

『食とグルメ、本当のナイショ話 -生産現場から飲食店まで-』

【この記事は、Yahoo!ニュース 個人の定期購読記事を執筆しているオーサーのご紹介として、編集部がオーサーにインタビューし制作したものです】