【中学受験】途中で断念すべきか?-最後まで受け続けるメリットと考え方

(写真:アフロ)

「前半(2月1日・2日・3日)とうまくいかず、精神的に参っています。もう受験は断念した方がよいでしょうか?」

毎年この時期になると、こんな相談が寄せられる。今回は、このような状況の受験生と保護者に伝えたいことをまとめてみようと思う。

受験生は受験しながら成長している

第一志望の学校が複数日程ある場合は、最後まで受け続けて欲しい。これには幾つかの理由がある。まず第一に、受験生は日々成長しているということ。特に、本番ギリギリまで現実感が湧かず「本気」になれなかったような受験生はなおさらだ。このような受験生は、本番になってはじめて本気で問題と対峙したと考えられる。模擬テストは所詮「本番」ではない。いくら「本番のつもりで臨みなさい」と言ったところで、心のどこかで「これは本番ではない」と思っている。模擬テストが活用できる生徒は、そもそも競争や順位が好きだったり、点数や偏差値が上がることで喜びを感じ、下がれば悔しくて燃えるようなタイプなので、模擬テストであっても本気になれる。しかし、そうでない受験生は、本番まで真に本気にはなれない。つまり、ようやく本気で受験や問題と向き合い、そこから学びながら急激に成長がはじまったところなのだ。試験にも慣れて全体が見え、緊張もしなくなってくる。だから、最後まで受け続けることでだんだん実力を付けながら発揮できるようになってくる。筆者の教え子は、いわゆる大手塾が合わないという生徒が多いからかも知れないが、取り立ててこのタイプが多い。

相性や問われていることが分かってくる

第二に、全日程似た傾向の問題を出す学校が多いということが挙げられる。思考力型やAL型などの特殊入試ではなく、2科4科どちらかの受験の場合、数字を変えただけや、同じテーマ、同じ問題形式などの出題をする学校は多い。これは、先日の記事(『【中学受験】受験校や進学校をどう選ぶか?-入試問題で相性を確認する』)にも書いたとおり、入試問題は学校の思想を反映しているからということが大きいが、受け続けてくれる受験生が有利になるような配慮でもある。学校側としても、自分の学校を志望している生徒に入学して欲しいというのは本音である。「住めば都」「蒔かれた場所で咲く」とはいうものの、やはり「志望校ではなかったけれどこの学校しか合格しなかったから入学した」という生徒が学校に合わずに問題になるケースは少なくない。以前は、中堅校の教師から「難関校の滑り止めで入学してくる生徒の方が成績が良いから大学進学実績に繋がる」と言う話も聞かれたが、私立であっても不登校が問題になる昨今、受け続ける生徒が入試の中で成長して合格を勝ち取って欲しいという学校側の思いもまた本音であろう。

後半の方が合格しやすい学校もある

第三に、これは中学受験の構造的な問題だが、複数日程を準備している学校は、偏差値や倍率とは関係なく後半に受験した生徒が入学することが多い。これは、1日に午前午後で2校受験できるようになった影響も大きいが、1日・2日であっても第一志望は別の学校であるケースが増えたためだ。当然、第一志望の学校に合格していた場合には入学手続きを取らない。そのため前半で合格した生徒のうち実際に入学する生徒の割合は後半の受験生よりも少なくなる。

以上のような理由で、私は「後半ほどチャンスは広がる」と言うことを受験生達には伝えている。しかし、偏差値だけを見て、後半ほどキツくなると指導している講師も数多見てきた。だから、1日・2日が勝負だというわけだ。精神的に参ってしまえば当然実力は発揮できずにキツくなるが、それこそ講師も保護者も一丸となって支えて欲しい。最も大事なのはそういう受験生こそ「今、まさに成長している」ということに気づくことだ。本人が成長していることが一番の財産だと感じることができる大人が増えることで、中学受験はもっと健全に、可能性に満ちた経験にできるだろう。まだ頑張っている受験生と保護者にエールを送りたい。(矢萩邦彦/知窓学舎教養の未来研究所