キレる小学生~増加する暴力問題とその背景を考える

(写真:アフロ)

先月文科省が発表した『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』によると、2014年度に小・中・高校で発生した暴力行為は54242件で、全体としては前年度よりも5103件減少していましたが、小学校では増加傾向にあり、7年間で3倍に増加しています。問題視されることが増えてきた小学生の暴力行為について、背景を考えてみたいと思います。

◆キレる小学生の増加

今回の調査では、特に低学年において暴力行為が増えているという結果だったのですが、塾業界においても暴力だけでなく、座っていることが出来ない生徒や、突然怒り出すなど感情をコントロール出来ない生徒は年々増加している印象です。クラスに教師以外の大人を配置するといった対策を講じている教育機関もありますが、対処療法的なものでは根本的な解決に繋がりません。

神奈川県の小学校教諭Aさんは「知らない大人やあまり親しくない大人が教室にいると、大人しく出来る子もいます」としながらも「結局すぐに慣れちゃいますし、関係なく暴れる子もいますから、システム化するのは難しいですね」といいます。また、「ちゃんと原因を突き止めようにも、授業以外の業務が多く子どもたちの生活面までなかなか手が回らない」という意見もあり、学校側の「無関心」や、気にはしつつも結果として「放置」状態にあることも問題を加速させている要因の1つと考えられます。

塾業界においても、問題を抱えている生徒は保護者と連絡がスムースに取れない傾向があり、積極的に家庭と関わることを避ける講師や教室スタッフも少なくありません。また塾の場合、週に1、2時間程度しか生徒と接しないため、その生徒に深く関わろうというモチベーションが低いとも考えられます。

◆ネグレクトと虐待の影響

文科省は「貧困による保護者のネグレクトなどの要因があるのではないか」という見解を示していますが、実際、学校や塾でのスケジュールを把握していない保護者や、お弁当は毎日ファストフードというような家庭も多く、自分の子どもの生活態度や成績に対して「自己責任」とする意見や、「知らない・興味ない」といった「他人事」として捉えている保護者も目につき、保護者会などへの参加率も年々減少しています。

2010~2014年に横浜の小学生約400人にアンケートを採ったところ、半数以上が一週間以内に家族から何らかの暴力を受けているという結果でした。直接身体を殴る蹴るつねるなどの暴力よりも「怒鳴る」「ものを投げる」「壁を蹴る」「両親や家族が喧嘩をしている」などが多く、「無関心」だけでなく成績や生活態度、友達関係に対する「過干渉」や、家族の状態や機嫌に巻き込まれていることにも問題があるのではないかと感じます。実際、問題を起こす生徒の大半の保護者が、「無関心」か「過干渉」、あるいは家庭内トラブルを抱えている傾向が見受けられます。

警察庁によれば、今年上半期に虐待の疑いで児童相談所に通告された18歳未満の児童は17000人以上に上り、この4年間で3倍になりました。その中でも子どもの前で行われるドメスティックバイオレンス「面前DV」による心理的虐待が3分の2を占めています。何を見て、あるいはどの程度で傷つくかも個人差があるので、周囲大人の配慮が求められます。

◆生徒層の拡大とノウハウの不足

指導歴30年のベテラン塾講師Bさんは「クラスに2人以上座っていられない生徒がいると、もう授業どころではないですね。算数なんて特に無理だと思います。塾なんだから他の生徒への影響を考えて欲しい」と、経営方針に問題があると指摘します。

学校と比べて問題視されることが少なかった塾業界で、暴力などの問題が目立つようになってきた背景には、少子化の影響で低学年から生徒を募集する塾が増えてきたことが挙げられます。同時に「預かってくれる時間が長い」という理由で中学受験塾などに通わせるケースもあり、今までなら塾に通わなかった層の生徒が増えてきています。そもそも低学年を扱うノウハウを持っていない塾や経験のない講師の対応のまずさが、生徒のストレスとして暴力行為の一因になっているのではないかとも考えられます。

小学生に限らずですが、様々な理由による睡眠不足や運動不足、また承認欲求が満たされていないことも攻撃性と相関があるとされます。それらを自分でコントロール出来ない小学生に対して、関係する大人が1人でも多く積極的に関わることで、改善できることがあると感じます。しかし、共働きや家庭の問題で無自覚にネグレクト状態になっている家庭も多いといいます。また特に都市部において地域の大人が子どもたちに関わり難くなっている今、家庭や学校が担いきれない問題を、塾などの機関がサポート出来る可能性を期待します。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE・教養の未来研究所)