農薬でハチが消える!?ーネオニコチノイド系農薬が食料生産に与える深刻な影響

環境や人体などへの影響が懸念されているネオニコチノイド系・有機リン系などの農薬を使用せずに農作物を生産する「選別農薬農法」。この農法を全国に先駆けて推進している群馬県渋川市は、選別農薬農法で生産された農作物の認証マークと愛称の募集を開始しました。今、農業の現場で注目されつつあるネオニコチノイド系農薬の影響について取材しました。

◆ネオニコチノイドの影響

最近数年間の冬で、ヨーロッパで死滅したミツバチの巣は平均で20%前後(国によって1.8%から 53%まで幅がある)に達するといいます。その原因のうち最も大きいものの一つが ネオニコチノイド系農薬の使用だと考えられます。もともと害虫駆除の目的で殺虫剤として使用されている農薬ですから、昆虫への影響は想像に難くありません。実際高濃度で使用した場合のハチへの影響は採食能力や学習能力の低下や発育不全など多様に観察されています。

国際環境NGO グリーンピース・ジャパンのレポートによると、ハチのような虫媒受粉がなければ、リンゴ、イチゴ、トマト、アーモンドなどの食用農作物全体の 3分の1は75%の生産量減少に見舞われるといいます。また自然受粉により生産 される作物の価格をもとにした受粉による世界の経済利益は 2,650億ユーロ(約37兆円)にものぼるという試算も。

◆現場から始まる“脱ネオニコチノイド”

国際自然保護連合(IUCN)の「浸透性農薬タスクフォース」が先月24日に発表した、ネオニコチノイド系農薬とフィプロニルを含む神経毒の浸透性農薬が、生態系にどのような影響を及ぼすかに関する総合評価書『Worldwide Integrated Assessment』によれば、ネオニコチノイド系農薬や浸透性農薬による悪影響は、ミツバチや野生の花粉交配者だけではなく、水生昆虫やミミズ、野鳥などの有益な生物も含まれるとしています。

ジノテフランをはじめ急速に使用量が増加しているネオニコチノイド系農薬。徐々に消費者の不安が高くなっている今、対策をはじめているのは、渋川市だけではありません。高知県では主力のナスで9割以上、ネオニコチノイド系農薬を使わない農法で実現しており、農業現場から脱ネオニコチノイドは始まりつつあります。グリーンピース・ジャパンの成澤薫さんは「このままでは国の残留農薬に関する基準や規制は、実態からかけ離れていくことになります」と警鐘を鳴らします。現場が率先して動いているということは、すでに明らかな被害が生じている段階と考えられます。

◆「分からない間は使い続ける」という恐怖

成澤さんは「かつては使用されていたが、その危険性がわかり世界中で使用禁止になった有機リン系農薬やDDTなどの有機塩素系農薬などと同じ運命を、今、ネオニコチノイド系農薬もたどりつつあります」と懸念します。有害性が証明され、周知から規制されるまではかなりの時間を要します。その間に取り返しの付かない深刻な影響も考えられます。「同じ過ちを繰りかえさないためにも予防原則が重要で、科学的証拠にもとづいて、さらなる被害を防ぐ対策をとることが日本も急務といえます」。

すでにEUは昨年末よりネオニコチノイド系農薬の規制をはじめている中、日本で唯一クロチアニジンを製造している住友化学は、ミツバチ減少の要因にはダニや伝染病も関係しておりネオニコチノイド系農薬が主要因とは特定されていない、またEU以外の地域では使用制限されておらず行き過ぎた予防的措置だ、と反論しています。もちろんその主張にも理があると思いますが、ミツバチ減少に限らず、自然界で起きる現象には多くの原因が考えられます。主原因かどうか、という発想ではなく、原因の一つとして考えられるのならば前向きに対策をする、という姿勢が政府や企業には必要なのではないでしょうか。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

関連リンク

渋川市農政部農林課

グリーンピース・ジャパンレポート「滴る毒」(PDF)

グリーンピース・ジャパンレポート「消えるハチ」(PDF)