国有地売却問題の三角すい-今週の注目点はここ

2015年9月5日に森友学園で講演し名誉校長就任の安倍昭恵氏と安倍首相(写真:ロイター/アフロ)

先週月曜日の「森友学園の国有地取得の収支」、火曜日の「森友学園への不明瞭な国給付」に引き続き、今週も森友学園の問題について書きます。一週間で、だいぶん、事態が変わってきた印象です。

松井一郎・大阪府知事(維新)-森友学園の関係

「条件付き認可」は松井一郎・大阪府知事の下でのこと

今回問題となっているのは、森友学園が大阪府豊中市の国有地を廉価で購入した件ですが、もともと、森友学園は本物件に小学校を設立しようとしています。そこで調べてみると、私立の小学校の設置について、私立学校審議会に諮問し、答申を受け、設置認可を判断するのは、都道府県知事です(地方教育行政の組織及び運営に関する法律22条3号、私立学校法8条1項で参照する学校教育法4条1項3号)。

この点、大阪府では、2011年に松井一郎知事が就任後、松井知事の下で、2012年、借入金があった森友学園でも小学校設置できるように規制緩和されました。2014年10月に森友学園が実際に小学校設置申請をした後は、大阪府と財務省(近畿財務局)が連絡を取り合って森友学園の小学校について国から借地できる見込みを事前に得て、2015年1月27日、大阪府市立学校審議会(以下「府私学審」)が小学校設置について「条件付き」認可をしました。

しかし、2016年4月1日、松井知事が、私立小学校の設置認可権限自体を教育長に委任しました。現在、府私学審は、森友学園の小学校は、「条件」を見定めている最中で、府教育長も最終的な設置認可をしていませんが、認可について知事が責任を負わない仕組みになってしまったのです。詳しい経過は下表をご参照下さい(表を読み飛ばしても結構です)。

大阪府の小学校認可に向けた動き
大阪府の小学校認可に向けた動き

この間の松井知事の発言は、過去、自身が許認可権者だった時期に「条件付き認可」をした事実がありながら「教育長が最終判断する」(NHK2.21)と他人ごととして扱ったかと思うと、国会・世論の追及が強まってくると、現在の許認可権者である教育長の頭越しに不認可に言及し(共同2.25)、混乱しているように見えます(※法律上、知事は教育長に指揮命令できません)。裁判所で証人尋問をする場合、こういうのを「供述の変遷」といい、証言の信用性を失わせる要素になります。松井知事の発言ははたして信用できるのでしょうか。

今さら国や森友学園のせいにする松井氏ら維新関係者

2月25日になって森友学園の小学校の不認可に言及した松井知事ですが、その言い分は「財務省が優遇しているなら大問題だし、安定した経営ができないなら認めるわけにいかないというのが(認可を判断する)府教育庁の立場だ」というものです(上記共同通信記事)。

しかし、そういう状態が委員から指摘されても、それを押し切るように「条件付き認可」をしたのが他ならぬ松井知事が許認可権者だったころの府私学審です。今さらこのような理由で不認可とするのはつじつまが合わないのではないでしょうか。

どんどんわき出る不適格情報

一方、森友学園については、この一週間の間に、学校を運営する資格がないのではないかと思われる情報が次々に明らかになっています。

(テレ朝2.22)昭恵夫人ゆかりの幼稚園 「犬臭い」虐待疑惑が浮上

(NHK2.24)補助金申請拒否 保護者の補助金申請手続き拒否

(菅野完氏2.24)森友学園・塚本幼稚園、教育基本法に違反する政治活動を行っている「個別具体的事例」

(日刊ゲンダイ2.25)裁判中の退園ママ激白 疑惑の塚本幼稚園「虐待」の実態

テレ朝の「犬臭い」報道は、森友学園の理事長自身がテレビの前で「本当に犬臭かったの」と強調しています。このような情報は、府私学審の委員に提供されていたのでしょうか。2月22日に開催された臨時の府私学審でも会長は「よほどのことがない限り認可される」と述べています(毎日2.22)。もし、情報提供されてないとすれば、大阪府は、松井府知事が許認可権者だった時代の前のめりな認可の姿勢を総括し、事実関係を確認した上で、府私学審で改めて、森友学園が小学校を運営するにふさわしい団体なのか検討すべきでしょう。

国(近畿財務局)-森友学園の関係(廉価売却の問題)

問題となっている豊中の国有地を廉価で森友学園に売却した問題については、共産党の宮本たけし議員が2月24日の国会質問で、2015年9月4日、森友学園側の業者が近畿財務局と接触し、高額の処理費用を請求していた事実を暴露しました(しんぶん赤旗2.25)。これまで、8億円余の減額査定より前に、資金がないから10年間の借地をしたはずの森友学園が、買い受け申し出(予約完結権の行使)をした経緯が謎に包まれていましたが、これで、パズルのピースが一つ埋まったように思われます。つまり、森友学園に言われたように国が減額をしたから、森友学園は査定が出る前に買い受け申し出をできたのです(以下の表は読み飛ばしても結構です)。

画像

このような8億円余の値引きの不当性については、民進党の玉木雄一郎議員、福島のぶゆき議員を中心に激しい追及がされており、もはや、減額見積に具体的な根拠がないことが明らかになりつつあります。

(テレビ朝日2.23)「森友学園に配慮して雑な見積もり」民進党が追及

国有財産の管理をする財務省の理財局長は、現地で確かめなかった理由について「それをやっていると先方の開校に間に合わない」などと本末転倒な答弁をしており、国が森友学園に便宜を図ったことがますます明白になっています。一方の森友学園の側は、下請業者が、汚染された土壌を、半分、処理せずに埋め戻したと内部告発しています(共同通信2.26森友学園、業者「刺激臭ひどく」)。

財務省は、森友学園との交渉記録を破棄した、などと国会で答弁していますが、国は森友学園の土地に抵当権をつけ、買い戻し特約も登記しています。この状態は今後も10年間は続きます。10年後の後任者が事情が分からなくなるようなことをするとはにわかには信じられません。麻生財務大臣は、理由も言わずに「適正に処理された」とくり返していますが、なぜこのようになったのか財務省が調査をして、森友学園への1億3000万円余の「有益費」の「返還」の根拠や、8億2000万円余の減額の根拠を詳しく説明すべきでしょう。

安倍首相夫婦-森友学園の関係

しかし、松井知事や大阪維新の会は、国政では、一応、野党です。財務省が便宜を図ったり、府私学審とあうんの呼吸で協同するいわれは見当たりません。

この点、先日来、テレビ東京の報道により、安倍首相の妻である安倍昭恵氏が森友学園で講演し、小学校の名誉校長に就任していたことが明らかになっています(2月24日に安倍首相自らが辞任したと答弁)。テレビ東京の報道では具体的な日時がぼかされていたのですが、昭恵氏自身のフェイスブックで2015年9月5日(土)と特定されました。

安倍昭恵氏のフェイスブック
安倍昭恵氏のフェイスブック

さらに、2015年9月4日(金)に、安倍首相自身が大阪入りしていた事実も明らかになりました。目的は読売テレビでの番組収録及び生出演のためでしたが、当時の産経新聞は「首相には新党結成を目指す大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長との友好関係を強調する狙いがあった。自民党総裁選後の中長期の政権運営を見据えれば、政治思想が近い橋下氏の存在は欠かせないからだ。」とあけすけに述べていました。安倍首相の大阪訪問は、安保法制の国会審議が大詰めを迎えた時期のことであり、鴻池祥肇委員長(自民党)も理事懇談会で「一国の首相としてどういったものか」と不快感を示したほどでした。

そして、この日は森友学園の業者が近畿財務局で官僚と面談・処理費用を要求したとされる日です。

大阪府-森友学園ー近畿財務局の三角関係は従前から浮かび上がっていましたが、ここへ来て、それらを統合する頂点としての安倍夫妻がいなかったのか、一層、詳細な説明が求められる事態になったと言えます。安倍首相の森友学園に対する評価も、2月17日の国会答弁では「いわば私の考え方に非常に共鳴している方、その方から小学校を作りたいので『安倍晋三小学校』にしたいという話があったが、私はそこでお断りをしているんですね」「妻からこの森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」旨述べていたのに、2月24日には「(籠池氏が)非常にしつこい、熱心に言ってくる中において、家内が『もしかしたら総理やめたら気が変わるかもしれませんね』と、講演等の中のやりとりにおいて言ったことはある」と、なにやら供述の変遷が見られる上、2月24日の答弁は、テレビ東京が2月21日に報道した昭恵氏の森友学園の講演内容や、自ら進んでフェイスブックに講演のことを記載した事実とも合致しないように思います。

今こそ、安倍首相が常々述べている「国民に対する丁寧な説明」が求められているのではないでしょうか。