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ミニストップが創業40周年 実は先進的だったその歩みを振り返る

渡辺広明コンビニジャーナリスト/流通アナリスト
ミニストップ (筆者撮影)

 ミニストップの創業は1980年の5月21日。同年7月には第一号店となる「大倉山店」が神奈川県横浜市にオープンした。ちょうど1カ月前に40周年を迎えたわけだが、コロナの影響もあってか、ひっそりとした形で節目を迎えることとなった。記念キャンペーンとして「冷やし麺40円引き」や「タピオカプリン」などの記念商品が発売されもしたが、それと気づかなかった読者も多いのではないか。ミニストップの革新的な取り組みをいくつか紹介してみたい。

◆コンセプトは「バーガーショップ併設」のイートイン

 ミニストップの最大のウリは、店内に「イートインスペース」がある点だろう。いまでこそイートインスペースを設けたコンビニは珍しくないが、こうした形態の店は2016年頃から盛んに導入されるようになったといわれている。2019年10月の軽減税導入にあたり、イートイン需要の拡大を見越しての動きである。一方、ミニストップでは、1980年の創業時から「コンボストア」という名のイートインスペース併設店舗を展開していた。

 創業時点ですでに「セブン-イレブン」(日本創業は73年)、「ファミリーマート」(73年)「ローソン」(日本創業75年)の3大コンビニはあった。特に「セブン」は1000店規模の展開を見せており、後発としてジャスコ株式会社(現イオン)の出資で創立されたミニストップは、先行3社と同じことをしていては勝ち目がない。そこで差別化のため採用されたのが、ハンバーガー・ショップとコンビニを融合した「コンボストア」の形態である。

ハンバーガーの店内調理終了 チルドバーガーの展開のみ (筆者撮影)
ハンバーガーの店内調理終了 チルドバーガーの展開のみ (筆者撮影)

 第1号店の開店チラシには〈フレッシュな材料とアメリカから直輸入の調理機材で、すばやくクッキング!!〉(2016年3月24日付『月刊コンビニ』)より)との文言があったというから、「イートイン」と同時に「店内調理」にもこだわりを持っていたことがよくわかる。当時の主力はフライドチキン。「ホットスナックを購入し、コンビニの店内で食べる」というおなじみの光景は、80年のミニストップで既に見られていたのだ。ちなみに看板商品であるソフトクリームも創業時から提供していた。

◆店内インターネット、コーヒー、レジ袋……

 お客様が「店内」に留まる形態ゆえ、こんな試みもあった。一気に時代が飛んで恐縮だが、2001年、ミニストップでは他のチェーンに先駆け、店内でのインターネットサービスを提供していたのだ。これは、当時NTTが行なっていた無線LANサービスの対象店舗になる形で実現されたもの。当時の取材に社長室が「他のコンビニチェーンとの差別化になる」とコメントしているから(01年11月26日付『時事通信』より)、先見の明があったといえるだろう。

 店内飲食との関係で言えば、おなじみ「コンビニコーヒー」もミニストップはかなり早かった。その“最初”がいつか、各社ともにコーヒーを導入しては定着せず、再びトライ、の歴史を繰り返しているので何とも申し上げられないのだが、2008年にマクドナルドの100円コーヒー(マックカフェ)がヒットし、これを受けたコンビニ各社が(何度目かの)本腰を入れ始め、そして13年のセブン-イレブンの「セブンカフェ」のヒットによって今日の定着となった……という流れから見るのならば、ミニストップは09年の時点で、本格的ドリップコーヒーのセルフサービス「M’s STYLE COFFEE」を全店に一斉導入していた。セブンカフェ登場前夜である12年、ミニストップの阿部信行社長(当時)が、

「他チェーンも追随し、コンビニが、コーヒーを買う拠点として認知されてきました。われわれは、しっかりドリップしており、味には自信を持っています。先行優位性をしっかり活かし、コーヒーをミニストップを象徴する商品に育てあげていきます」(12年5月24日付『月刊コンビニ』)

 と語っていることからも、ミニストップのコンビニコーヒー導入は先駆けていた、といってもいいのではないだろうか。

 コンビニ初のカーシェアリングを始めたのも、2009年、ミニストップが最初だった(スリーエフと共にスタート)。株式会社日本カーシェアリングと提携した「i-share(アイシェア)」というサービスだったが、さすがに時代に先行しすぎたのか、2011年にサービスは終了している。

 2019年にコンビニ各社が販売をやめた成人誌も、じつはミニストップは2017年から扱いをやめ始め、2018年には全店舗で販売を取り止めていた。「誰もが利用しやすい店舗作りのため」というのが理由だ。今年7月1日からはコンビニでもレジ袋が有料化されるが、こちらも2019年6月に、ミニストップはコンビニ初となる「1枚3円」の有料販売を一部店舗でスタートしていた。

◆ミニストップが迎えている苦境

 このほか表に見えてこないところでは、電子発注システムなどでも、ミニストップはコンビニにおける先駆者だった。以上、簡単にその革新的な歩みを振り返ってきたが、あまり知られていない事実ばかりだったのではないだろうか。それはひとえに、ミニストップの店舗数の少なさゆえかもしれない。

 昨年、ミニストップが3カ月で193店舗を閉店したことは大きなニュースになった。背景には親会社であるイオンと三菱商事の提携解除の流れがあると私は見ているが、現在のミニストップ国内店舗数は1990店と、2000を割っている(2020年5月時点の数字)。セブン-イレブンが約2万1000店、ファミリーマートが約1万6600店、ローソンが約1万4400店であることを考えると、四番手とはいいながら、規模はかなり小さいことがお分りいただけると思う。情報発信を含めた影響力、商品開発力などの点で、コンビニは数がすべてなのだ。2020年2月期の連結決算は57億円の赤字と、苦境に立たされている。

 今年に入ってからは、看板商品であるソフトクリームの専門店「MINISOF」(ミニソフ)の展開がはじまった。現在は全国に7店舗あるが、将来的には100店舗を目指すという。店内加工のソフトクリームは、セブン-イレブンや今はなきエーエムピーエムが参入するも、いずれも扱いを止めた、ミニストップの一強商品である。専門店展開の試みはユニークだが、季節商品であることや利益率を考えると、ソフトクリーム一本で事業の立て直しをはかるのは難しいのではないだろうか。

犬の散歩の途中で購入 先が潰れてしまった持ち帰りソフトクリーム バニラ・クラウンメロン期間限定 (筆者撮影)
犬の散歩の途中で購入 先が潰れてしまった持ち帰りソフトクリーム バニラ・クラウンメロン期間限定 (筆者撮影)

 その独特の立ち位置から、ファンも多いミニストップ。今後も異能のコンビニとして、ぜひ、存在感を発揮し続けていってほしい。

コンビニジャーナリスト/流通アナリスト

渡辺広明 1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング 代表取締役として、顧問、商品開発コンサルとして多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。全国で講演 新著「ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた」「コンビニを見たら日本経済が分かる」等も実施中。

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