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【先取り「どうする家康」】2023年NHK大河ドラマ「どうする家康」の新キャスト発表

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」。どうなるのか楽しみだ。(提供:アフロ)

 11月29日、2023年NHK大河ドラマ「どうする家康」で主演の徳川家康(役:松本潤さん)以外の主要なキャストが発表された。2年後のこととはいえ、非常に楽しみである。以下、紹介しておこう。

■織田信長(役:岡田准一さん)

 岡田准一さんは、もはや時代劇では欠かすことができない俳優である。

 2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」では、黒田官兵衛役を好演した。映画「関ヶ原」、「燃えよ剣」にも出演した。

 織田信長と言えば、気性の激しい武将として知られている。自身の外出中に無断で遊びに出掛けた女房衆を皆殺しにしたり、怪しい術を使う僧・無辺を殺したりもした。

 また、佐久間信盛らの重臣であっても、成果を出すことができなければ、あっさりと追放した。

 一方で、朝廷への奉仕(所領の安堵や御所の修理など)を欠かさず、寺社に所領を寄進するなど、常識人としての側面もあった。

 そうした毀誉褒貶の激しい信長を岡田さんがどう演じるのか楽しみだ。

■瀬名/築山殿(役:有村架純さん)

 有村架純さんは、大河ドラマ初出演。人気女優であるが、時代劇は初めてではないだろうか。私も同じ兵庫県で育ったので、大いに応援したい。

 築山殿といえば、家康によって天正7年(1579)に子の信康ともども手に掛けられた。

 これまでは、家康が信長の命によって泣く泣く殺したといわれきたが、最近では異論が唱えられている。

 築山殿と信康は、甲斐武田氏との連携を望んでいた。家康は信長との関係を重視していたので、それは家中が崩壊する。

 家康は信長に属することを明確にするため、築山殿らを処分した。

 築山殿はかなり芯が強い女性だったようなので、その辺りをどう演じるのか楽しみだ。

■豊臣秀吉(役:ムロツヨシさん)

 ムロツヨシさんはコミカルな演技が特長で、すでに2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」(平忠度役)、2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(瀬戸方久役)で講演した。

 これまで豊臣秀吉を演じた俳優は、明るくひょうきんな秀吉像を演じてきた。天下人でありながら、非常に親しみやすい人物だったのかもしれない。

 しかし、今ではそうした「明るくひょうきん」な秀吉像に修正が迫られている。

 秀吉は信長以上に気難しく、面倒な人物だった。敵対する武将に長文の手紙を送り付けて激しく恫喝したり、佐々成政のように失政を咎められて切腹を命じられる者もいた。

 秀吉が「人たらし」というのは書状から明らかであるが、ムロさんがどうやって「黒秀吉」を演じるのか楽しみにしたい。

■今川義元(役:野村萬斎さん)

 野村萬斎さんは、1994年のNHK大河ドラマ「花の乱」で細川勝元役を演じた。

 映画「陰陽師」、「のぼうの城」などにも出演し、時代劇には欠かすことができない俳優だ。

 今川義元は、永禄3年(1560)の桶狭間の戦いで織田信長に敗れて戦死したが、すこぶる評判が悪い。

 それは、文芸に興じ、鉄漿(おはぐろ)をするなど「公家化した軟弱大名」という評価である。

 しかし、「公家化した軟弱大名」という評価は義元の本質ではない。

 家督の継承後、義元は領土の拡大に努め、検地を行うなど優れた政治手腕を発揮していた。

 野村萬斎さんには、ステレオタイプの情けない義元ではなく、優れた武将としての義元をぜひ演じてほしいものである。

■まとめ

 時代劇はフィクションなので、歴史研究をそのまま反映させるわけにはいかない。

 とはいえ、近年の時代劇は従来の古い説を踏襲したもの、あるいはホームドラマチックなものなど、戦国時代の趣を感じさせないものが増えてきた。

 今回のドラマでは、それぞれの登場人物の新しい像を見せてほしいものである。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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