Yahoo!ニュース

マラソンで活躍が続く帝京大。名ランナーのおじを持つ元永が【かすみがうらマラソン】で初優勝

和田悟志フリーランスライター
(C)中野孝行

終盤は独走でV

 4月17日、3年ぶりに開催された「かすみがうらマラソン2022」で、初マラソンに挑んだ元永好多朗(帝京大4年)が2時間17分6秒で優勝を飾った。

 レースは、前半は競り合っていた選手がいたが、26kmからは一人旅になった。

 5kmごとのラップは、15kmまでは15分台後半、30kmまでは16分台前半を刻み、30km以降は30〜35kmを16分32秒、35〜40kmを16分41秒に少しペースダウンしたものの、独走となってからも踏ん張り、失速を最小限に収めた。

 100km世界記録保持者の風見尚(駒澤大OB)や箱根駅伝5区区間賞の実績をもつダニエル・ムイバ・キトニー(日大OB)といった選手をも寄せ付けず、2位の風見に1分近い大差を付けての圧勝だった。

「よく一人で頑張った。及第点をあげられる走りです。今季は駅伝を走ってもらわないと困る選手。次に結び付けてほしい」

 中野孝行監督は、元永の快走を称えた。

名ランナーのおじに憧れて陸上の道へ

 元永は、駅伝やマラソンで活躍した、おじの櫛部静二(城西大監督)に憧れて陸上を始め、宇部高専(山口)を3年で中退し、箱根駅伝を走るために帝京大学に進学した。また、「帝京SCOOP!記者」という肩書を持ち、GoProを駆使し動画を作成するなどして、駅伝競走部の広報を担当している。

最後は独走だった(C)中野孝行
最後は独走だった(C)中野孝行

マラソンで帝京大勢の快挙が続く

 帝京大といえば、箱根駅伝では5年連続でシード権を獲得中。2月27日に開催された「第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会」では、帝京大OBで社会人1年目の星岳(コニカミノルタ)が、初マラソン日本最高記録となる2時間7分31秒で初優勝を飾り、3月6日の東京マラソンでは、当時大学4年だった細谷翔馬(天童市役所)が日本学生歴代3位となる2時間9分18秒で走っている。

 2人の先輩に続き、元永がマラソンで快挙を成し遂げた。

 しかも、箱根駅伝で区間賞を獲得しているレジェンド級のOBの2人に対して、元永は長い距離を主戦場としながらも、まだ駅伝で補欠止まりの選手なのだ。今季こそ、この快走を足掛かりに活躍を見せてくれそうだ。

 3月13日の日本学生ハーフマラソン(1時間4分12秒で63位)の後、「40km走も30km走も行なっていません。最長で28kmまでですね」と中野監督が言うように、特別にマラソンに向けたトレーニングを行なって臨んだわけではなかった。もちろん、一段高いタイムを狙うのであれば、そういったトレーニングも必要だろう。それでも、「箱根駅伝を目指すトレーニングは、マラソンを走るベースになる」と中野監督が以前話していた通りに、それを証明してみせた。

「今回は、優勝することと、シドニーマラソン派遣(優勝者への副賞)が目標」(中野監督)だったといい、優勝の経験を味わったことは大きかった。

 そして、駅伝シーズン開幕前の9月18日にはシドニーマラソンに挑む。

 3年前には、先輩の小森稜太(現NTN)が、同マラソンのハーフマラソンで優勝を飾り、駅伝シーズンでの活躍に結び付けた。元永は、出場種目は検討中だが、ハーフならタイトルを狙いに行き、フルならば駅伝シーズンに向けた走り込みの一環として臨む予定だ。

 元永の快挙と同じ頃、神奈川・平塚で行なわれた日本学生陸上競技個人選手権では、3000m障害に出場した1年生の山口翔平が、同種目の帝京大新記録となる8分48秒11で3位に入った(ちなみに、元永も山口も山口県出身)。

 帝京大は、昨年度の主力だった4年生が多数卒業し戦力ダウンが懸念されていたが、新戦力が続々と活躍を見せている。今季も侮れないチームに仕上がってきそうだ。

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

和田悟志の最近の記事