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学生ハーフで2年越しの悲願。國學院大・島﨑が日本代表に

和田悟志フリーランスライター
残り1kmで勝負を仕掛ける國學院大の藤木(42)と島﨑(71)「筆者撮影」

 3月14日、日本学生ハーフマラソン選手権が陸上自衛隊立川駐屯地周回コース(東京・立川市)で開催された。

 8月に中国・成都で行われるFISUワールドユニバーシティゲームス(旧名称ユニバーシアード競技大会)のハーフマラソンの日本代表選考を兼ねており、男子は、今年の箱根駅伝で1区区間賞に輝いた鎌田航生(法大3年)が1時間3分0秒で優勝。2位には鈴木芽吹(駒大1年)、3位には島﨑慎愛(國學院大3年)が入り、日本代表に内定した。

2年越しの雪辱戦

 昨年の大会は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となったため、今回が2年ぶりの開催になった。

 2年前のこの大会で、最も悔しい思いを味わったのは國學院大勢だっただろう。

 この時もユニバーシアード(ナポリ大会)の選考を兼ねており、浦野雄平(現・富士通)、土方英和(現・Honda)の2枚看板を擁した國學院大は、代表3枠のうち2枠を狙って臨んだ。しかし、終盤まで優勝争いに加わりながらも、最後は振り切られ、土方が次点の4位、浦野が5位に終わり、代表入りを逃したのだ。

 ちなみに、その時に優勝した相澤晃(東洋大→現・旭化成)、2位の中村大聖(駒大→現・ヤクルト)、3位の伊藤達彦(東京国際大→現・Honda)は、ユニバーシアードでも表彰台を独占し、団体でも金メダルに輝いている。

 國學院大にとって、日本代表に選ばれることは2年越しの悲願。國學院大の選手たちは2年前の雪辱を期していた。

 今年1月の箱根駅伝が終わって、主力選手では、中西大翔(2年)、殿地琢朗(3年)が故障し、2月頭の沖縄での強化合宿では、木付琳(3年)、中西唯翔(2年)が離脱したが、藤木宏太(3年)と島﨑は調子を上げてきていた。

「藤木は調子を取り戻してきてくれましたし、島﨑はパーフェクトに練習ができていて強化できていた。面白い勝負ができると思っていました」

と、前田康弘監督も手応えを得ていた。

 2月3週目に白子・千葉で行った合宿中に藤木が転倒するアクシデントがあったものの、自信をもって臨むことができた。

強風のなか“目立たない”作戦

「100点満点のレース」

21.0975kmを走り終えた島﨑は、自身のレース内容をこう評した。

「先頭を意識しないで、中盤辺りに位置どって、ちょっとずつ前にいければいいかなって考えていて、その通りにいけました」と、思い描いていた通りのレース運びだった。

 藤木も「競り負けたので最後が良くなかったが、余裕をもって良い位置でレースを進めることができた」と振り返るように、二人は先頭集団の中で終盤まで目立たない位置に付けていた。

 強風に見舞われ、前半先頭を引っ張っていた選手が次々に後退していっただけに、二人のレース運びは見事だったといえる。

 しかし、残り1kmの時点で追い風を利用し「勝ちきろうと前に出た」と言う藤木は、最後のホームストレートの向かい風に苦しみ、4位に後退した。

 一方、島﨑は、最後の最後で鈴木にかわされたものの、きっちり粘りきって3位でフィニッシュし、念願の日本代表入りを決めた。

 國學院大勢としては、2003年のユニバーシアードに出場した秦玲以来2人目のワールドユニバーシティゲームス代表となる。

「“やったぞ”って、監督がめちゃくちゃ喜んでいました。あんまり実感が湧かなかったんですけど、監督が喜んでいる姿を見て、自分もめちゃくちゃうれしくなっちゃいました」

 と、島﨑は喜びを噛み締めた。

「最後に負けたのが(駒大時代の恩師である)大八木(弘明)先生の鈴木君だったので、良いのか悪いのか……」と前田監督は前置きしつつも、「前回は代表を逃しているので、この強風のなか、本当に良いレースをしてくれたと思う」と選手の走りを称えた。

3位に入り、ワールドユニバーシティゲームス代表に内定した島﨑「筆者撮影」
3位に入り、ワールドユニバーシティゲームス代表に内定した島﨑「筆者撮影」

さらなる飛躍のシーズンへ

 3位島﨑、4位藤木の他にも、1年生の伊地知賢造が、初ハーフながら1時間4分12秒で21位とまずまずの走りを見せた。

 新シーズン、國學院大は有力な新入生を迎える。5000m13分48秒89の山本歩夢(自由ケ丘高・福岡)をはじめ、14分一桁の平林清澄(美方高・福井)、中川雄太(秋田工高・秋田)といった選手がおり、過去最強の補強といっていいだろう。また、埼玉栄高(埼玉)のエースだった佐藤快成は、3年時に故障していたため記録では他の有力選手に劣るが、ロードでの実績がある。先輩の土方や伊地知も、高3時にケガがあったが、國學院大入学後は1年時から活躍しており、佐藤にも即戦力としての活躍が期待できる。

 主力選手の層も厚みを増し、さらに、新戦力の加入……。

「今年のチーム構想も変わってきそうですね」(前田監督)

 今回の島﨑、藤木の好走を呼び水に、新シーズンはさらなる飛躍を遂げる1年になりそうだ。

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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