なぜ広島県1部のクラブは他県からも愛されるのか? クラファン3日目で500万円を集めた福山シティFC

広島県1部からJリーグへ! 福山シティFCの岡本佳大代表(左)と樋口敦副代表。

 今般のコロナ禍における、サッカー界の「隠れたトレンド」として注目していたのが、各クラブによるクラウドファンディングである。最近ではJ1の鹿島アントラーズや浦和レッズが、いずれも1億円のクラファンを立ち上げ、目標を達成したことが話題になった。こうした動きはJクラブのみならず、Jリーグを目指すクラブの間でも見られた現象である。

 以前紹介した、関東リーグ1部所属の東京23フットボールクラブは、5月23日に500万円を目標金額としてクラファンを立ち上げている。その後はハラハラしながら見守っていたが、最終日となる6月30日にようやく目標金額を達成することができた。支援総額は551万8380円(目標達成率110%)で支援者数は333人。J1から数えて5部のクラブにしては、本当に頑張ったと思う。

 Jリーグを目指すアマチュアクラブにとり、500万円という金額が持つ意味は、とてつもなく重い。ところが同じ金額を、クラファン立ち上げからわずか3日で達成した、アンダーカテゴリーのクラブがあった。地域リーグよりもさらに下、広島県1部から将来のJリーグを目指す、福山シティFCである。

 FC今治の「岡田武史」や、いわきFCの「フィジカル革命」のような、わかりやすいアイコンやテーゼがあるわけではない。にもかかわらず、なぜ福山シティFCはこれほど愛され、たった3日間で500万円を集めることができたのか? この興味深いクラブについては来週、宇都宮徹壱ウェブマガジンでレポートを発表する予定だが、本稿ではクラファンにテーマを絞ってお伝えすることにしたい。

■「広島第2のJクラブ」を目指すもコロナ禍で暗転

「クラファンのスタートが6月9日で、3日目の11日には目標の500万円を達成しました。そこでセカンドゴールとして、今度は800万円という金額を設定したんですが、これも7月15日で達成。そこでさらなる目標として、金額ではなく支援者の数を増やすことにしました。現時点(7月27日)で445人なのですが、残り4日で1000人を目指します」

 そう語るのは、クラブ代表の岡本佳大氏である。平成元年生まれの31歳。広島市の出身で、少年時代からサッカーに打ち込み、広島観音高校時代にはインターハイで日本一も経験している。大学卒業後、いったんは就職するも、25歳で地元の少年サッカークラブのオーナー権を取得して運営。18年12月からは「広島第2のJクラブ」を福山に興す活動をスタートさせる。

 昨年11月に前身の福山SCCから現在のクラブ名に改め、大胆なリブランディングを進めながら地元企業を中心に協賛を120社以上集めていた。まさにこれから、というタイミングでの今回のコロナ禍。決まりかけていたユニフォームスポンサー案件が相次いで白紙となり、今季予定していた予算8500万円のうち、実に5000万円が吹き飛ぶこととなってしまった。加えて今季は、積極的な選手補強を断行したにもかかわらず、県リーグの開幕も不透明。一時はチームの解散も考えたという。

「そんなときに副代表の樋口(敦)から、クラファンのアイデアをもらったんです。その昔、広島カープが経営的に厳しくなったとき、市民に樽募金を募って何とか持ちこたえたという話を聞いたことがありました。福山にも『困っている人がいたら放っておけない』という文化は、確かにあったと思います。けれども、地元だけでの寄付だったら、絶対に3日間で500万円も集まらなかったでしょうね」

前身の福山SCCから、昨年末に現在のクラブ名に改称。大胆なリブランディングを行い、県リーグとは思えないほどグッズの開発にも積極的だ。
前身の福山SCCから、昨年末に現在のクラブ名に改称。大胆なリブランディングを行い、県リーグとは思えないほどグッズの開発にも積極的だ。

■Jクラブにとって「かわいい弟分」というポジション

 クラファンを実施するメリットのひとつに、支援者の年齢や性別、さらには地域などのデータが獲得できることが挙げられる。福山シティFCの場合、広島のほかに、大阪、東京・神奈川と、きれいに三分割されていたという。県外にも支援者が多いのは、クラブの活動や理念を積極的にSNSで発信していることと、決して無縁ではないだろう。支援の理由について、岡本氏はこう分析する。

「まず、われわれの活動を追いかけてくれた人たちが『ここで潰してはいけない』と思ってくれたこと。次に、ウチの選手は関東や関西出身者が多いこと。そして、他クラブのサポーターからもご支援をいただけたことも大きかったですね。具体的には、FC今治やガイナーレ鳥取やファジアーノ岡山、そしてサンフレッチェ広島。本当にありがたく思っています」

 ファンやサポーターばかりではない。岡本氏によれば、上記したクラブに所属する現役選手、あるいは元日本代表の人気解説者からの寄付もあったという。いずれも情報感度が高く、クラブが日々SNSで発信している情報に対し、共感しているのが特徴だという。その上で、若き代表はこう続ける。

「僕らからすれば、サンフレッチェは雲の上の存在ですが、岡山や鳥取や今治から見たら『かわいい弟分』みたいに感じられるんでしょうね。まだまだカテゴリーも下ですし。ちなみに今季の県リーグ開幕戦は、呉での開催だったんですが、今治からもたくさんの方が駆けつけてくれました。僕自身、今治はファミリーだと勝手に思っていますし(笑)、目指しているところはかなり近いと考えています」

■今回のクラファンは「令和型戦略」の実証実験?

 ところで、福山シティFCでは「令和型戦略」が合言葉となっているという。このコロナ禍で、従来のスポンサーシップが通用しなくなった今、新しいビジネスの発想が求められるようになった。今回のクラファンも、当初は資金調達が目的であったが、結果として「僕らが考える『令和型戦略』の実証実験ができました」と岡本氏は総括する。

「地方クラブがJを目指す場合、これまでなら地元の行政や政治家とのコネクションは大事だったと思うんです。でも、今の時代はSNSもあるし、リモートワークで距離も関係なくなりました。そうなると福山だけでなく、全国を市場として捉えることが可能となります。コロナで失われた5000万円も、東京の企業から募って、そこで得られたお金を地元に還元することだってできます。僕たちの試みが、他の地方クラブの参考になればうれしいですね」

 こうした発想こそが、彼らが言うところの「令和型戦略」なのだろう。そして、クラファンを単に「コロナ禍による損失の補てん」と捉えるのではなく、新たなビジネスの可能性に反転させる応用力。これもまた、これまでの「Jリーグを目指す」地方クラブにはない新しさが感じられる。そのクラファンも、本日(31日)23時に終了。最終目標を金額でなく、支援者の数に切り換えた理由について、最後に尋ねてみた。返ってきた答えは、これまた実に令和的であった。

「実は1000万円というのも考えたんです。でもウチの場合、500万円あれば事足ります。だったらお金ではなく、自分ごとと捉えていただける支援者を増やしたほうが、クラブの将来を考える上では絶対にいいだろうと。それと正直、ここまで上手くいきすぎたという反省もあります。今後も『かわいい弟分』でいられるという意味でも(笑)、最後に課題感を残して終えたほうがいいのかなと思っています」

<この稿、了>