■大学入学共通テスト東大会場で刺傷事件

第一報によれば、大学入試共通テストの東大会場にて、刺傷事件が発生し、受験生と見られる高校生2人と70代の男性が刺されました(その後の報道では東大近くの路上、東大前とも報道されています)。

その場で逮捕されたのは、高校2年生の17歳の少年です。報道によれば、「勉強がうまくいかず、事件を起こして死のうと思った」と供述しています(「勉強うまくいかず」東大前で3人刺傷 高2逮捕:産経新聞1/15、14:16)

現場付近では「鳴りやまないサイレン」とも報道されていますし、上の写真からも緊迫感が伝わってきます。

最寄り駅では爆竹による放火騒ぎも起きていました。

「受験生が本当にかわいそう」東大切りつけ、近くの駅では爆竹?ボヤ:毎日新聞1/15、11:43)>

【続報】共通テスト会場の東大前刺傷事件 逮捕された高校生 地下鉄の駅3カ所で放火か:FNNプライム1/15、13:42>

■怒れる市民のみなさんへ:犯罪連鎖の防止のために

犯罪が起きた時に大切なのことは、犯人逮捕だけでなく、まず被害者の保護であり、新たな被害発生の防止です。すべての犯罪報道は、何らかの形で防犯につながる必要があるでしょう。

入試会場での刺傷事件。

「みんな人生をかけて、この日のためにがんばってきたのに、よりにもよって、この日この場所で事件を起こすなんて、なんてひどいことだろう」。

そんな発言が、ネット上にもあふれています。さらに逮捕された容疑者少年に対する非難、罵詈雑言、揶揄、侮辱的言葉がならびます。

もちろん、ひどい事件です。怒りは当然でしょう。しかし、ただ怒りをストレートに表現するだけでは、防犯にはつながりにくいでしょう。

一般に、無差別刺傷事件などを起こす人は、孤独と絶望感に押しつぶされ、自分の人生を終わりにしたいのですが、最後に自分の力を誇示しようとする人々です。逮捕も処罰も恐れません。

実際に事件を起こす人は少数でも、同じ思いを持つ犯罪予備軍は大勢います。だから、通り魔事件などはしばしば連鎖するのです。

逮捕された男を英雄視などすれば、犯罪連鎖の危険性が増すでしょう。同時に、侮辱や誹謗中傷も危険です。それは、同じ思いを持つ犯罪予備軍の心をさらに追い詰めかねないからです。

悪い人が悪いことをした。そう単純に考えるだけでは私たちは事件から何も学べません。また防犯にもつながりません。むしろ本来は悪い人ではなかったはずなのに、悪いことをしてしまったと考えた方が効果的です(心理学で言う「外在化」)。

事件が起きれば犯人の逮捕も処罰も当然必要なのですが、少年犯罪者の更生のためにも、犯罪予備軍に犯罪実行を思いとどまらせるためにも、孤独感を癒し、希望を持たせることが必要なのです。

■不安がる受験生とご家族のために

今、試験を受けている人は、まだ事件を知らないかもしれません。試験が終わり、スマホのスイッチを入れたとたんに、事件を知るかもしれません。

共通テストはまだ明日も続きます。このあとの大学ごとの試験もあります。

入試において実力を発揮するには、不安を減らし、雑念を取り払うことが必要です。

事件が起きた会場の受験生はもちろん、他の会場の受験生も不安を感じているかもしれません。

本人が望んでもいないのに家族がことさら事件を話題にしたり、本人が見たくもない事件のテレビニュースにチャンネルを合わせることは、控えた方が良いでしょう。

しかし、本人が話したががるかもしれません。その時は、話を聞きましょう。恐怖や不安で興奮した気持ちは、人に話すことによって落ち着くのです。正論や説教の押し付けではなく、話を聞きましょう。

ただし、怖くなるような想像を延々とふくらませ過ぎるのも、良くありません。話題を変えることも大切です。

想像するなら、良い想像をしましょう。元気に試験会場に行き、実力を発揮して気持ちよく帰宅することを想像しましょう(メンタルリハーサル)。

入試は不安と緊張ですが、同時に高揚感も感じるものです。家族からの温かな思いやりが、不安を減らし、やる気を高めます。きっと上手くいくと本人が思えるように、サポートしましょう。

そしてもし仮に勉強が上手くいかなくても、人生は終わりではない、それでも大丈夫だと、みんなが思えるようにしたいと願っています。人生は長く、若者は可能性にあふれているのです。