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眞子さまの複雑性PTSDは国民のせい? #国民のせい

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
イラストはイメージ:結婚に反対はだめ?(提供:nozomin/イメージマート)

■眞子さまご結婚と複雑性PTSD報道

報道によると、秋篠宮家の長女眞子さまと小室圭さんは10月26日にご結婚されます。同時に、宮内庁は、眞子さまが誹謗中傷により「複雑性PTSD」状態だとも発表しました。

眞子さまは「複雑性PTSD」:心の傷ついた人と私たち

■ネット上の反応:#国民のせい

診断名の公表に関するネット上の反応は様々ですが、一部ネットユーザは、「眞子さまの複雑性PTSDは結婚に反対した国民のせいですか!」と不快感を表しています。

ツイッターでは、ハッシュタグ #国民のせい で多くの投稿がなされ、「国民のせい」はトレンドにも上がりました。

「国民のせい?はっ?」

「せい ぜい責任転嫁してろ」

「#国民のせい でPTSDですか」

「誹謗中傷をしたのは国民ではなくごく一部の心無い者達なので」

「一瞬にして国民全てを敵に回すような発言」

「(PTSDは)国民が批判するからですか」

「病気を利用するな」

辛辣な表現も含め、多くの投稿が見られます。

■眞子さまの複雑性PTSDは、反対した国民のせいなのか

報道によれば、「自分自身と家族、結婚相手と家族に対する、誹謗(ひぼう)中傷と感じられる出来事が長期的に反復され、逃れることができないという体験をされた」とされています(眞子さまが複雑性PTSD状態に 宮内庁公表 医師「結婚巡る誹謗中傷で」:毎日新聞10/1)。

複雑性PTSDの原因としているのは、「誹謗中傷と感じられる出来事の長期的反復」です。世間の噂、ネット上の発言、ワイドショーなどマスコミ報道などを念頭に置いているのでしょうが、「国民の反対」が原因とは言っていません。「国民のせい」とは言っていません。

いや、露骨には言っていなくても、「国民のせい」だと言いたいのだろう、そうとしか読めない、と思った国民も少なからずいるのでしょう。

■「○○のせい」とは

「せい」とは、国語辞典的には、「『所為』の音『しょい』の音変化。上の言葉を受け、それが原因・理由であることを表す」とあります(goo辞書)。

今回の話題では、誹謗中傷した人も国民ですから、その意味では「国民の発言が原因」であり、「国民のせい」なのかもしれません。

原因を表すことばには、「~のせい」の他に「~のおかげ」「~のため」もあります。「おかげ」は良い意味で使いますね。「せい」は悪い意味で使います。「~のため」は両方に使うでしょうか。

「○○のせいで失敗した」というのは、悪い結果を表すとともに、相手を責めるニュアンスも含まれるでしょう。

だから、眞子さまの病は、国民の発言が原因かもしれませんが、「国民のせい」とは宮内庁も公には言えないでしょう。

けれども、報道を見た人々の中に、宮内庁は「国民のせい」だと国民を責めていると感じた人々がいるのでしょう。

コミュニケーションは、相手がどう感じるかが大切です。言い方ひとつで、誹謗中傷と感じたり、お前のせいだと責められているように感じたりするのでしょう。

国民のせいだと責められているように感じたのは、この数年の出来事の中で、宮内庁への信頼を失っている人々がいるからなのかもしれません。

より良いコミュニケションのためには、相互信頼関係が大切です。

■心の病の原因

一般論ですが、心の病の原因は複雑です。心が強くなったり、弱くなったり、良い人になったり、悪い人になったり、その原因は複雑に絡み合います。

家族、親せき、友人、世間、学校、職場。様々な事柄が関連し合って、心に影響を与えます。

おそらく、宮内庁は眞子さまをお守りしたい一心で、診断名を公表したのではないでしょうか。ネット上の反感は予想外だったかもしれません。

眞子さまのご結婚に関しては、「多くの人が納得し喜んでくれる状況」になっていないのは事実です。私たちには、批判も反対も、様々な意見や疑問を表す自由があります(誹謗中傷はだめですが)。

より良い社会に健全な批判精神は欠かせません。日本にとっての重大事ですから、国民間の自由闊達な議論も大切です。同時に、病を抱えた一人の女性の門出を祝福したいとも思います。宮内庁と新しい家族の責任も重いでしょう。

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*皇室関連の話題は微妙な話題です。さらに、予想外の精神科的な診断名がついたという微妙な問題となりました。マスコミも戸惑っているようです。これらの問題も、また取り上げたいと思います。

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眞子さまは「複雑性PTSD」:本音トーク:宮内庁 vs マスコミ、ネット民?」(ヤフーニュース有料)

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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