大雨特別警報を聞いた時に必要なこと:命を守る身近な災害心理学
<経験が役立たないこともある。柔軟な発想と、みんなの力で、命を守ろう。>
■特別警報とは
「特別警報」は、2013年からスタートしました。大雨、暴風、高潮、波浪、大雪、暴風雪の6種類があります(地震、津波、噴火については、これまでの警報レベル以上のものを特別警報と言う)。
「これまでに経験したことのないような」「数十年に一度」「50年に一度」と、表現されるような事態です。
今回(7/6)は、長崎県、佐賀県、福岡県に大雨特別警報が発表されました。
■今までの経験が役立たない
何十年に一度の出来事です。だから、ご年配の経験豊富な人にとっても、始めてのこともあります。普段なら役に立つこれまでの経験が、逆に適切な避難行動の邪魔になることすらあります。
年配の人は、災害も経験しているのですが、同時に大丈夫だったことも経験しているからです。時にはその大丈夫だった経験が、適切な避難行動の妨げになることもあるのです。
■柔軟な発想を
自分の経験に頼れば、「ここは大丈夫」とか、「この川は大丈夫」と感じてしまいます。「ここは洪水になったことはない」などとと考えてしまうのです。
避難の際にも、いつもの決まった避難所に向かうといった行動しか思い浮かばないこともあります。
しかし、これまでに経験したことがないことが起きています。これまでの経験に基づく判断だけではなく、命を守るための柔軟な発想が必要です。このような柔軟な考え方を、心理学では「認知的複雑性」と呼んでいます。
柔軟で複雑な見方考え方ができないと、「ここは大丈夫」といった認知(考え方感じ方)が偏った「正常性バイアス」にとらわれてしまうこともあります。
一定の避難場所にすぐに行くことにこだわると、かえって危険性が増すこともあります。
経験があるからこそ、自分の判断は他の人の判断より正しいと感じる「平均以上効果」が起きてしまうこともあります。
とは言え、かなり広い地域に出ている警報や避難勧告避難指示は、不確実性が高い状況です。どのように行動することが正しいのか、判断は難しいものです。
特に水害は、避難が難しく、正しい行動の選択が難しい災害です。雨の中の避難は、「心理的コスト」(抵抗感)が高くなります。地震のように突然のことには、人は強く反応しますが、次第に水かさが増すようなゆっくりとした変化に、対応が遅れることもあります。
<水害はなぜ逃げ遅れるのか。ではどうすれば良いのか:命を守るための災害心理学>
だからこそ、柔軟さが必要であり、みんなの知恵と力を合わせることが大切です。
■みんなの力で
高齢者の心の落ち着きを、避難の遅れではなく、家族の安全のために活用しましょう。また、本人の経験はなくとも、両親や祖父母から災害の話を聞いているかもしれません。大昔の災害の歴史を知っているかもしれません。
若い人の決断力と好奇心を、川を見に行くような「ネガティブな冒険者」としてではなく、自分とみんなを守るために使いましょう。情報を積極的に取りに行き、若い力と、学校で習った最新の防災知識を活かしましょう。
優しい人の不安と恐怖心を、ただ怯えて震えるだけではなく、恐怖を活用して安全を守る行動につなげましょう。あなたの心配性が、みんなの命を救うかもしれません。
せっかくの特別警報、避難勧告避難指示です。この情報を、自分のために、みんなのために、活用しましょう。