「みんなでマスク」の問題点:コロナ感染予防に効果的か、泣いている人はいないか

写真はイメージ:「みんなでマスク」って、本当に正しいの?(写真:アフロ)

<いろいろな場所で広がる「みんなでマスク」。でも、そのために困っている人はいないだろうか。本当に必要な人からマスクを奪ってはいないだろうか。では、どうすれば良いのだろう。>

■WHO、過度のマスク使用を戒め

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長の言葉が昨日4月7日、報道されました。

「マスクを一般の人々が着用することで、医療従事者向けの供給不足が悪化する事態を懸念している」

出典:WHO、医療現場マスク不足懸念 テドロス氏、過度の使用を戒め 4/7(火) 共同通信Y!

報道によると、距離が取れなかったり手が洗えない場合に一般の人がマスクを使うことも検討されるとしながら、マスクだけで感染が予防できるのではなく、手洗いと距離をとることが大切と、マスクの使い過ぎを戒めました。

見出しにある「戒め」は、かなり強い言葉です。

■ネット上の反応

このヤフー記事に対するヤフーコメントです。

「無症状でも周囲を感染させるリスクがあるのだから、一般人だってマスクを使うべき」

「何をもって『過度のマスク着用』なのか明確さに欠けた表現は意味が無い」

「マスク不要と言ったりマスク必要と言ったり、発言が二転三転」

「マスクは感染を広めない為の最低の防御」

「WHOの言う事など信用できぬ」

やっぱりマスクは必要だという意見や、発言がころころ変わっているように感じられての混乱もあります。また、WHOへの不信もあります。

WHOの言葉を信じないのはなぜ?:「新型コロナ感染予防にマスク着用不要」:私たちとヤフコメ民と情報

一方、医療従事者へのマスク不足解消のための行動を勧める意見もあります。

「マスクが不足している国では市民による手作りでのマスク作成を推進したらどうか」

「日本も一般人は布マスクを使えば、病気の人や介護関係者など、使い捨てマスクが必要な人に回りやすくなる」

■専門家や専門機関はマスクについてどう言っているか

様々な専門家や専門機関はどのように言っているでしょうか。

「米疾病対策センター(CDC)が人々に対し何らかの方法で顔を覆うよう要請~医療用マスクについては医療従事者が利用できるように入手を控えるように促した」(4/4時事通信)。

「WHOの緊急事態対応を率いるマイク・ライアン氏はジュネーブでの記者会見で、一般市民のマスク着用に何らかの効果があることを示す具体的な証拠はないと強調。一部にはむしろ、マスクの着け方が正しくない場合、逆効果になるとの報告もあると述べた」(3/31CNN)。

「WHOの感染症疫学専門家、マリア・バン・ケルクホーフェ氏も~『マスクの使用は一番必要としている人々を優先する』~『自分自身に症状があり、周囲に感染を広げない手段とする場合以外は推奨しない』と明言。使用を勧める対象は『在宅の患者本人と、その患者をケアする人』だと述べた」3/31CNN)。

「WHOで緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏は『外科用マスクは第一線で対応する医療関係者のためにとっておく必要があるが、咳やくしゃみ(による飛沫の拡散)を防止するためにマスクを使ったり、口元を覆ったりすることは悪い考えではない』と指摘(4/4ロイター)。

あれ? 何だか微妙ですね。

みなさんが戸惑うのも、もっともです。

日本の厚労省は、以前から言っています。

「現在、予防用にマスクを買われている方が多いですが、感染症の拡大の効果的な予防には、風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要」(厚労省:マスク)。

まあ、厚労省の言い方も微妙ですが。

最初に紹介したアメリカCDCの発表についてですが、トランプ大統領が新型コロナウイルスについて語るときには、いつも後ろにCDCの偉い人が立っています。

トランプさんの独特な表現はあるものの、CDCも認めている発言内容で信用してほしいとのメッセージを込めた立ち方です。

報道によれば、その会見の場でトランプ大統領は言ってます。

「マスク着用は任意だ(義務でもないし強く勧めるものでもない)。する必要はないし、私はしないことにした。ただ、一部の人々がしたいなら、問題ない」。

■各所に広がる「みんなでマスク」の問題点

専門家、専門機関の言っていることをまとめると、どうなるでしょうか。

できるだけ、「3つの密」を防ぐことは重要です。手洗いや距離をとること、移動の自粛も大切です。

では、咳などの症状のない人にとってのマスクはどうかと言うと、まあ使っても、使わなくても、でしょうか。

使うなら、きちんと使わないとだめなのでしょうし、誤った使い方は逆効果にもなります。

「マスクをしていればいいんでしょ」とか「マスクしていないと辛い」と、とにかくマスクと思って間違ったマスクの使い方をしてしまうと、かえって感染の危険性が増します。

しかし、以前にも増して、「みんなでマスク」は広がっています。

様々な会社、学校、様々な場面で、「みんなでマスク」がお願いされています。

テレビを見ていても、話している人と聞いている人が何メートルも離れているのに、マスクを使っている人も見ます(総理の緊急事態宣言の記者会見では、記者との距離が取れているのでマスクははずすとおっしゃってました)。

マスクをしている偉い人の中には、マスクを平気で触り、とったり、はずしたり。マスクの内側を無頓着に触っている人も、テレビでよく見ます。専門家に怒られそうなマスクの使い方です。

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「みんなでマスク」のお願いがされると、マスクをしていない人は肩身の狭い思いをします。

買えなくて困っている人もいるのに。手作りしようと思ったら、材料が売り切れだった人もいるのに。手作りなんてできない人もいるのに。

専門家らの言葉に従ってマスク着用を控えている人も、何だか責められているような気がしてきます。

人はみんなと同じことをすると安心し、人と違うことをするのは苦しいのです(同調行動の心理)。

そうして、日本中のサラリーマンや学生や外出する人々が、以前にも増してマスクを買いあされば、マスク不足に拍車がかかります。マスク不足はいつまでたっても解消しません。

病院や福祉施設、症状のある人、家庭内で看護する人、コロナ以外でマスクをとても必要としている人々に、ますますマスクが届きません。

気休めのマスクなどではない、本当に泣きたい思いでマスクを大切に使っている人、買えなくて途方に暮れている人を増やしてはいけません。

優先順位の低い人たちが、優先順位の高い人たちから、マスクを奪ってはいけません。

症状のない人がマスクをするのも、通常なら悪いことではないでしょう。もしかしたら無症状で感染していて、突然咳やくしゃみがでることもあるかもしれません。

マスクが十分あるなら、念のためのマスクも、気休めのマスクも、OKです。優先順位が比較的高い国会や報道機関も、良いと思います。

CDCも、WHOも、厚労省も、あまり無下に、「不足しているのだから、普通の人はマスクなんかするな!」とは言いにくいのでしょう。通常なら言う必要もありません。

しかし、本当にマスクを必要としている人たちのために、配慮してほしいということなのだと思います。

「みんなでマスク」は、一見感染予防に良いことであり、その会社やその学校のことだけを考えれば良いことなのかもしれませんが、あちこちで「みんなでマスク」を始めてしまうと、社会全体には害になりかねない「社会的ジレンマ」を引き起こします。

やはり、一般の人々による過度のマスク使用は控えるべきでしょう。

では、「みんなでマスク」と言うことが悪いことかと言うと、なかなか難しいですね。でも各専門機関は、高性能のマスクは医療従事者優先でと勧めています。

そして専門家たちは、無症状の人がするとすれば、「何らかの方法で顔を覆う」「マスクや、その他の方法でく口元を覆う」ということも、悪くはないと言っています。

だから、手作り布マスクで上等です。作りが下手でも結構です。バンダナでも手ぬぐいでも、巻いておけばOKです。昔のギャング映画のような姿になってしまっても、大丈夫。笑うのはやめましょう。

侮辱して笑うのではなく、ユーモアたっぷりの方法で口を覆い、みんなで笑顔になるなら、それもいいですね。心のうるおいは必要です。それに、とてもおしゃれにバンダナなどを使っている人もいます。

「みんなでマスク」が合理的とは限りませんが、もし「みんなでマスク」と言うなら、身内も外の人間も、だれもマスクで泣く人が出ないように、弱者を困らせないようにしたいと思います。

「みんなでマスク」よりも、手洗いなどで「みんなで正しく感染予防」です。

コロナとの戦いは真剣な問題ですが、ギスギスした人間関係ではなく、助け合う人間関係こそが、勝利への道でしょう。

 

 

私は・・・こんなのはどうでしょう(*^^*)

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東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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