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私たちはなぜ投票するのか:コミットメントの心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
2017年衆議院選挙 未来の有権者が投票体験(写真:つのだよしお/アフロ)

■一票は軽い?

2017年衆議院選挙です。国の方向を決める総選挙です。私たちは投票すべきであり、一票の重みを考えるべきです。という意見が、たくさん流れます。その一方で、よくわからない、関心がないという人もいます。今回の衆議院選挙は特にそうかもしれません。

とにかく投票に行こう!って言われても〜投票するか、しないかの裏にあるいろんな考え〜いきなり関心を持て、と言われましても〜この時代の国政選挙で、一票差で決まるなんてことはほとんど想定できないし、しかも世論調査も発達しているから結果もだいたいわかる。あえて言い切れば、選挙での一票の価値は、言われるほど重くはない。〜「有権者なんだから!」目覚めろと言われても難しい〜

出典:総選挙2017:投票に行かない人を非難するのはやめましょう、と政治学者が語る理由:BuzzFeed News10/21

建前では投票の大切さを語りつつ、本音では上のように感じることもあるでしょう。

■コミットメントとは:選挙も政治も交通安全も

コミットメントとは、積極的に関わるとか、自分で決めるとか、約束する、参加するといった意味です。心理学の研究によれば、人間はコミットメントした方が、関心を持ち、行動し続け、成功しやすくなることがわかっています。

親に決められた学校や仕事よりも、自分で決めた進路の方が、辛くても頑張れるでしょう。禁煙やダイエット、勉強などは、自分の目標や決意を公にする、みんなに話したり、書いて表すことで、持続しやすく成功しやすくなります。

上からただ命じられるよりも、話し合いに参加した方が、たとえ結論が自分の意見とは異なっていても、納得できるし協力できるという研究もあります。

交通安全週間には、小さな子供たちが参加して旗を振ったり、ドライバーにチラシを渡したりします。その活動で、どれほど交通事故が減るでしょうか。その直接の効果は、ほとんどないかもしれません。

しかし、活動に参加した子供たちの交通安全の意識は高まるでしょう。子供たちに教えた親や地域の人たちも、交通違反をしにくくなります。子供たちの様子が次々報道されれば、影響はさらに大きくなるでしょう。

子供たちも、子供の周囲の人たちも、交通安全運動にコミットメントすることで、交通安全の意識と行動が高まるのです。

高齢者の交通事故を減らすために、高齢者に子供への交通安全指導を頼む方法もあります。こうすると、子供の交通事故が減る効果だけではなく、高齢者が交通安全を考えるようになってくれるのです。高齢者が交通安全運動にコミットしたからです。

選挙、政治も、同じだと思います。

■私たちの一票

ものすごく考えた末の棄権は、選挙にコミットメントしているのでしょう。でもそれは、例外的です。けれども投票すれば、誰もがコミットメントします。投票所に行き、投票用紙に名前を書き、投票する。この行動自体に意味があります。政治にコミットメントしています。

投票するためには、考えます。たとえ投票所に行ってから投票先を決める人でさえ、やはり自分で考えて自分で決めます。選挙にコミットメントするのです。

最初に紹介した記事にもあるのですが、あまりに優等生的にしっかり考えて投票をと言ってしまうと、かえって萎縮させてしまうこともあります。勉強不足だから棄権しようという18歳も出てしまいます。

しかし、たとえよくわからなくても自分で投票すれば、さらに考えます。夜の選挙報道番組への関心も高まるでしょう。

開票結果は、最終的には最後の一桁まで正確に報道されます。何十何万何千何百何十何票。その数字の最後の一票は、自分の投票です。その一票で選挙結果が変わることは、まずないでしょう。けれども、私が投票しなかったら、今テレビの画面や新聞紙上に現れている数字は、別の数字になっています。小さいけれども、私の一票は、たしかに数えられ、発表されたのです。

景気を良くするのも、環境を守るのも、政治家と役人だけではできません。国民全体の協力が必要です。投票したからには、各政党、各候補者の理想の実現に協力しましょう。コミットメントは、そんな気持ちも起こします。

誰に投票するのが絶対に正しいのか。そんなことはわかりません。選挙の結果が出たすぐ後で、あるいは10年先に、自分の投票を誇れるかもしれませんし、また後悔し恥じるかもしれません。それが、コミットメントの結果です。

ダイエットのテレビCMの言葉を借りれば、私たちも選挙の「結果にコミットメント」しましょう。この私も、小さいけれども日本社会を作っていくことに関わっている(コミットメントしている)と思えることが、日本を良い国にし、私の人生を豊かにするでしょう。

だから、小さな私も、やっぱり投票に行くのです。

「参加すること、コミットメントすることが、責任感や喜びや悔しさの感情、そして次の行動を生みます」(コミットメントの心理学:人を動かし、私たちが幸せになるために:Yahoo!ニュース個人有料)。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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